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「うるし」を使ったプロダクトのアイデア募集 – 鯖江うるしアワード

「うるし」を使ったプロダクトのアイデア募集 – 鯖江うるしアワード

募集終了 2015/07/09(木) - 2015/08/23(日)

越前漆器のこと

越前漆器にまつわる6つのことをまとめました。


1. 越前漆器とは

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1500年前から歴史と共に受け継がれる越前漆器

約1500年の昔、第26代継体天皇がまだ皇子のころ、壊れた冠の修理を命じられたのが片山地区(現在の鯖江市片山町)の塗師でした。 塗師は、冠を漆で修理するとともに黒塗りの三ツ椀を献上したところ、皇子はその見事な出来映えにいたく感動し、漆器作りを行うように奨励しました。

これが今日の越前漆器の始まりと伝えられています。また、江戸時代末期には京都から蒔絵師を招き蒔絵の技術を導入し、輪島からは沈金の技法を取り入れることで、越前漆器は堅牢さに加えて華麗な装飾性を兼ね備えた工芸品へとさらなる進化を遂げました。

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「○から□へ」新たなニーズを取込み、発展する漆器

明治半ばには「丸物」と呼ばれるお椀が主体だった漆器の生産に「角物」と呼ばれるお膳やお盆、お重、菓子箱、花瓶などの様々な用途で活用できる製品が加わり、生産は鯖江市の河和田地区全体に広がって行きました。

そこで生産される漆器は「河和田(かわだ)塗り」と呼ばれ、全国に販売される様になります。近年は多様な製品群を背景に量産体制を整備しながら、旅館やレストランなどで使用する業務用の漆器の販路拡大に乗り出し、東京、名古屋、大阪などの大消費地の需要を取込み様々なニーズに対応しながら大成功を収め、全国のシェア80%近くを占めるまでになっています。

そして、河和田塗りはいつしか「越前漆器」として広く愛用されるようになったのです。


2. 漆器の木地

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様々な職人の手を介して作られる漆器

漆器の生産は塗りを行う職人を中心に構成された「塗師屋(ぬしや)」と親方衆の仕事から始まります。

お客様の注文を受けて、協力工房への発注・デザイン・プロデュースから販売まで一手に請け負っている塗師屋は産地のとりまとめ的な存在です。塗師屋を通じて「木地(きじ)」「下地(したじ)」「研ぎ(とぎ)」「上塗り(うわぬり)」「蒔絵(まきえ)」「沈金(ちんきん)」「呂色(ろいろ)」など細かく分業された専門の職人の手を渡り、一つの漆器が作られていきます。

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漆を塗る際にベースとなる「木地」

漆器生産の最初の工程である「木地」はつくるものによって大きく4つに分かれます。

また、「木地」はその名の通り当初は木材を材料にして作られていましたが、近年は金属や樹脂、ガラス、繊維など様々な材質で作られるようになっています。

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「木地」の主な種類

・椀木地: 轆轤(ろくろ)を使っ作る椀皿・盆用の木地(ケヤキ・みずめ桜・トチ・クリなど)

・曲物木地: アテ、ヒバ、檜の柾目(まさめ)※を用い、丸盆やおひつなど側面を曲げて作る木地

・指物木地: アテ、シナ工芸板を用い、重箱や膳、硯箱など板を組み合わせて作る木地

・朴木地: 朴(ほお)アテ、カツラを用いて猫脚、仏具、スプーンなど複雑形を削り出して作る木地

※柾目(まさめ)とは木目がほぼ平行になるように切り出した状態の事。様々な木目が楽しめる板目(いため)とは異なり、ほぼ均等に木目が並ぶため反りづらく割れにくいのが特徴


3. 漆を塗る

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職人技が光る「漆の光沢」

下地の後に続く、塗りは「中塗、中塗り研ぎ」と「上塗り」の2つの工程に分かれています。

中塗、中塗り研ぎ

下地の後は刷毛(はけ)で硯の粉と生漆を用いた「サビ(錆)」と呼ばれるパテ状の漆を用いて、塗り傷などを補修します。 その後、「研ぎ」と呼ばれる表面の研き作業を行い、上塗りの漆が入り込みやすい状態にまで仕上げます。これらは丈夫な漆器を作るためには重要な作業の一つです。

上塗り

お椀などの器の場合は、「ツク」と呼ばれる棒を一時的に底面つける事で直接触れることなく塗りの作業を行います。 黒内朱(外側が黒、内側が赤)など複数の色を使い分ける場合は、外黒、中赤、裏底の順に塗りと乾かしを繰り返しながら仕上げます。

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湿度が高いと「漆がよく乾く」不思議!?

塗った漆器は「回転風呂」と呼ばれる一定時間で回転する機械に入れることで、漆が垂れずに均一になるように数日かけて乾燥します。

越前河和田では回転風呂が一般的ですが、他産地では板に並べて手のひらで返す所もあります)漆は木地との相性や湿度と温度を考えて乾燥させる必要があります。手作業で天然素材を扱うためその日の天候によって作業の進捗が左右される大変デリケートな工程です。

また、漆器は件材料である漆(ウルシオール)が化学反応しながら堅くなっていくため、一般的な「乾燥」とは異なり、湿度が高く適度な室温が必要です。そのため、湿度が高い地域でかつ梅雨の時期が生産には最適な条件になっています。


4. 蒔絵師

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粉を「蒔く」ことで描く

漆器の表面に漆で絵や文様を描き、金などの金属粉を「蒔く」ことで定着させて色づけを行う技法です。

蒔く工程と磨きの有無により、大きく分けて研出蒔絵(とぎだしまきえ)、平蒔絵(ひらまきえ)、高蒔絵(たかまきえ)の3つの技法があります。金粉などをつけたい場所に漆を塗り、乾く前に粉を巻き付けて、十分に乾いた後に余分な粉を払うことで色をつけていきます。

そのまま仕上げる平蒔絵に対し、その上に漆を薄く塗り、金色が現れるまで研いて削り取っていく技法が研出蒔絵となります。また、粉を蒔く場所に漆を何層も塗ることで高くしてから蒔絵を施す高蒔絵はより立体的に表現する際に使用する技法です。

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蒔絵の工程

1.和紙に文様を描き、裏面から図案の輪郭を刷毛でこすって写す

2.筆で文様を描く

3.漆が乾いてきたら、金粉を蒔き、色が異なる場合はそれを繰り返す。

4.研出蒔絵の場合は、専用の金粉を使い、磨き粉で磨く事で丈夫で上品な金色に仕上げます。

5.最後に「毛打ち」と呼ばれる細かい線を描く作業を行い完成です。

5. 新しい色

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「漆黒」と「漆赤」だけではない

漆器というと、特にお椀ものでは黒色や赤(朱)色が思い浮かぶ事が多いはずです。「漆黒の髪」などとたとえられるほど独特で雅びなツヤを放つその色は、世界的にも日本の伝統美を体現する色彩として有名になっています。

しかし、今では生活の用途に合わせて新しい色の製品が生みだされています。毎日の暮らしを彩る工芸品だからこそ、伝統色だけではない様々な色を提供すべく、産地では日々試行錯誤が繰り返されています。

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暮らし合った色作り

漆器だけでなく、家電製品やパソコン、スマートフォンケース、雑貨、グラスなど様々な製品や素材に様々な色の漆を塗ることで、ちょっとした所有の喜びを日常生活の中にプラスできるため、伝統色だけでなく皆さんに感動を与える様な新しい色の研究は欠かせません。


6. 漆の可能性

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漆の素材を生かす

漆は塗料として木材だけでなく、様々な素材に塗ることでき色合いだけでなく補強材としても効果の高い素材です。

また、近年では器としての利用シーンの変化に対応し、IHコンロや食洗機に対応したより漆も登場してその用途を広げており、漆素材そのものの性質を利用した研究も進められています。

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様々な素材で木地を作る

木地自体も縄を漆で固めながら木地を作り仕上げる縄漆技法や、落ち葉や石を利用して素材の風合いを生かしながら漆でその姿を補強しながら工芸品に仕上げる技法も編み出されています。

日常品や日頃目にするすべてが漆の可能性を引き出す「木地」になのかもしれません。

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まったく新しいカタチにする

3Dプリンターや3D切削機を利用して、これまでにない立体物をデザインし、それを出力することで木地に活用することも可能です。 今回のアワードでも皆さんのアイデアを実現するために技術者と職人が工房でスタンバイして待っています。



求む、うるしを使った新しいプロダクトのアイデア

社会が目まぐるしく移り変わる中、これからの生活に寄り添う「うるし」とはどのようなものでしょうか。「鯖江うるしアワード」は、多くの人の生活を豊かに、そして美しくする、あなたの考える「うるし」の姿を募集します。

食器、家具、文具、サービスなど姿・カタチは問いません。うるしの可能性を大いに探ってみてください。



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