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生えるおもちゃ「MYMORI」/#AMGC Vol.17

2026/06/08(月)

企業・自治体・クリエイターが共に多様なテーマに取り組むための公募・共創プラットフォーム「AWRD(アワード)」の連載シリーズ「AWRD meets GLOBAL CREATORS」( #AMGC )。
「新たな感性」をテーマに、デザイン、アート、ビジネスなど、さまざまな分野で活躍する世界の気鋭の挑戦者にスポットをあて、創作や活動、公募の価値、その国ならではのカルチャーに触れていきます。

今回登場いただくのは、菌糸という“生きる素材”を用い遊びの中で自然と向き合う体験を生み出す、生えるおもちゃ「MYMORI(マイモリ)」を手がけた項 雅文さん。そのユニークなアプローチは評価され、2023年は、グッドデザイン・ニューホープ賞 最優秀賞を受賞、2025年は、名古屋大学構内に開設された、東海国立大学機構が運営する共創拠点「ComoNe」で開催された「ComoNe #01 COMMON NEXUS」のプロジェクトへも選出されました。
プロダクトと教育、そして環境意識を横断するこの取り組みは、どのように生まれ、どこへ向かうのでしょうか。

本インタビューでは、立ち上げの背景から、アワード参加によって得た気づきやその後の反響などについて伺いました。

「MYMORI」を立ち上げたきっかけや原体験を教えてください。

MYMORIは大学の給湯室から始まった小さなプロジェクトです。

大学のゼミでメンバーから菌糸体の存在を初めて教えてもらったことがきっかけでした。実際に菌糸体を育ててみると、袋を開けた瞬間に森の香りがして、プロセス自体が料理や家庭農園と近い感覚でした。出来上がったプロダクトのもふもふとした独特の感触が記憶に残りました。

菌糸体はプラスチックの代替素材として注目されることが多いですが、実際に育てた体験から、私にはそれ以上の可能性を感じました。素材そのものに愛着を持ってもらえる形を模索するうちに、「おもちゃ」というアウトプットにたどり着きました。子どもが素手で触れて、育てて、遊ぶ。そのプロセス全体をデザインすることで、素材への愛着が自然に生まれると考えました。

MYMORIを遊ぶ様子

菌糸という“生きる素材”を扱う中で、従来のプロダクトデザインと比べて感じる難しさや面白さは何ですか?

製造や生き物の配送方法など様々な壁がありましたが、一番難しかったのはMYMORI自体の伝え方です。まだ市場で認知されていないプロダクトなので、「キノコが生えてくるの?」「おもちゃは長持ちするの?」「そもそもどういうもの?」といった不安や疑問がユーザーから多く寄せられます。ユーザーに受け入れてもらいやすい伝え方や、ユーザーの手元でもうまく育てられる工夫を色々と試しました。そこはMYMORIを作り始めた当初から一番意識していたことでもあります。

「ComoNe #01 COMMON NEXUS」への参加は、項さんの活動にどのような影響を与えましたか?

MYMORIはより身近な存在として、もっとたくさんの人に触れてもらうことを目指しています。今までは実物で見せる機会が少なかったので、「ComoNe #01 COMMON NEXUS」を通じて大学という教育の場で長期間展示できることには大きな意味を感じました。より多様な方々にMYMORIを知ってもらい、考えてもらえるきっかけになると思っています。

MYMORIにお絵描きしている様子

ComoNeでの発表や展示を経て作品からプロダクトへと展開する中で、最も大きなハードルは何でしたか? 

「ComoNe」で経験したような、長期間の展示は初めてでした。MYMORIのプロダクト自体が展示期間中のさまざまなリスクに耐えられるか、カビが出ないか、変色しないか、最後までもつかどうかなど、最初はとても心配していました。

また、完成したプロダクトだけでなく、どのように作られているかというプロセス自体が最大の価値だと思っているので、その魅力もきちんと伝わるよう、展示では体験動画の形式でも紹介しました。

アワード(ComoNeも含め)に参加することに、どのような意義を感じましたか?また、受賞を経て周囲の反応やプロジェクトにどのような変化がありましたか?

ComoNeプロジェクトの採択員である鈴木宣也先生から「サイエンスの視点と表現の組み合わせがユニーク」、「多様な領域のつながりが期待される」というコメントをいただき、自分でも気づいていなかった作品の可能性を実感しました。異なる領域の作り手と同じ場所に立てることで視野も広がりましたし、実物を見たい方へ展示場所をご案内できるようになったことで、ユーザーとの直接的な接点が生まれたことも嬉しい変化です。

菌糸材で作成した他のプロダクト

「MYMORI」を通じて、ユーザーの価値観や生活にどんな変化が生まれることを期待していますか?

バイオ素材という言葉はまだどこか遠い話のように聞こえると思いますが、MYMORIのキットを通じて菌糸体を自分の手で育ててみると、その距離感がぐっと縮まります。森の香りを嗅いで、白く育っていく様子を毎日観察して、自分で作ったブロックで遊ぶ。そういう体験を経た子どもは、バイオ素材を「知識」ではなく「感覚」として知っている存在になれると思っています。ものづくり体験を通してバイオ素材をもっと身近なものへ 、素材と人間の関係を、現代の文脈で取り戻したいというのが根底にある思いです。

ワークショップ風景

今後チャレンジしたいことなどありましたら教えてください。

ComoNeでの展示は非常に貴重な経験でした。今後もリアルでユーザーに魅力を伝えられる場を増やしていきたいと思います。実際に手に取り、触れてもらえる展示の場は、オンラインでは伝えきれない素材の魅力を届けられると感じています。

おもちゃ以外に、教育機関や地域・企業との連携、菌糸材を使った新しいプロダクトカテゴリーの開拓なども視野に入れています。

ちょうどこのタイミングで独立しました。MYMORIで大切にしてきた「暮らしに遊び心を持ち込む」、「素材や体験への愛着をデザインする」を軸に、菌糸体にとらわれず、新しいプロジェクトを生み出し続けていきたいです。MYMORIはその最初の一作に過ぎないと思っていて、同じ精神を持った取り組みをさまざまな形で展開していくことが、これからの自分のテーマです。

MYMORI

生分解性の材料である菌糸体のさまざまな特性を活かし、デザインの力でより日常生活に寄り添った菌糸体の可能性を探求しています。 「生えるおもちゃMYMORI」を通じて、子どもたちが遊びながら自然の大切さを感じ、環境に対する意識を育むことを大切にしています。素材にこだわり、安心して楽しめる製品を提供することで、持続可能な未来を支える一助となれることを願っています。

Links

Instagram:https://www.instagram.com/mymori_project/

Website:https://my-mori.com/


編集:AWRD編集部

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