CREATIVES

  • 207

オートバイと女性の美を‥‥3

オートバイと女性の美を‥‥3
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ひつこくてすみません。
相変わらずバイクです。
だんだんと注視力がついてきました。

じつはいうと、この手のデッサンはトレースマシンを使うのが普通です。
今回のバイクシリーズではまずバイクというものがどんな形をしてどんな感情を持っているのかを知るために、デッサンが狂ってもそれでいいと思って描いています。

ぼくの以前の職業はカンプライターという仕事でした。
広告の出来上がりを想定した手描きの完成物見本を描くのです。
時間との競争、写真のような表現力が命でしたから、大いにトレースマシーンを使って、1日何十枚と描くのです。

デッサンをする人にとって、これはやっちゃいけないことのようです。
ところが、ぼくはこれでデッサン力をつけました。
手があるとします。手の甲が見る人にとって横に見て描くときは描くことは容易いです。
ところが、指先をこっちに向けられた手を描くとなると苦労します。

横向きの手という概念を人は捕まえ易いのですが、突き出された手には人々に手という概念がないのです。
古代エジプトの絵は、人々のポーズは横向きに描かれますが、あれは人々がわかり易い概念を示しています。

で、トレースマシーンを使うと、つかみにくい方向をなぞるうちに正面向きの手も理解した概念に変えることができたのです。

人はものを見たからといって、それを写取れるかというと、そうではないのです。
一旦、見た映像を脳のスクリーンに映す作業をして、画像の理解をするのです。脳が納得してやっと描けるのです。
ぼくはトレースマシーンを使うたびに脳に入れ込んだイメージと手に戻す映像イメージとを一致させることができるようになりました。
つまり、ぼく自身がトレースマシーン化してしまったのです。

一般のデッサンのやり方では、まず、対象物の大ザッパな形をとります。
ぼくの場合。この絵ではスピードメーターから描いてそこから、その次のタンクとかシートにかかるという具合に描きます。

逆に、全体像をまず捉えるという方法が全くできないというのにこの頃気がつきました。

バイクの場合、脳の中の長さや方向を測る尺度が狂いだすととんでもないことになります。
白い画面を見て、メーターのある座標軸が何となくわかります。
「うん」と頷いてここにこの大きさから始まるってわかります。
また、それこそがその絵を描く意欲を発生させた瞬間です。

絵を描くというのは様々な要素が総合的に必要です。
デッサンができたからといってそれは絵ではない。
70年くらい、かかってようやくその技術は幾分ついた。

その他には、どんな考えを持つんだとか、その表現のためにどこをめちゃくちゃにするんだとか、色々やんなくっちゃならない。

一応、絵描きだと思っているが、何だか絵描きとは程遠いな〜と思う。
まったく。

前へ