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ひみつの場所

誰にでも「とっておきの場所」って奴があるのではないか。
私の場合、それは高知県。宿毛が好きで、四万十が好きで、海が好きで、人が好きだ。関西にいるときは、それは足繁く通ったものだ。
初めて野宿をしたのも高知県だった。初めてヒッチハイクしたのも高知県だった。
色々な人にとても親切にしてもらった。
色々あるんだろうが、皆暖かい。

もちろんダイバーとしても見逃せない。
高知県 大月市 柏島。人口が600人にも満たない、この小さな漁業の島には、世界にも他に類を見ない珊瑚や魚が数多く生息する、ダイバー垂涎のスポット。珊瑚の種類も、魚の種類も日本で1.2を争うほどに多く、柏島にしか生息しない生物も数多い。
この島に魅せられて、毎年のように通ってくるダイバーが後をたたず、ここではダイビング本数300本などというのはザラで、500本、700本クラスの熟練ダイバーがごろごろとその辺を歩いている。私が100本以下は初心者であるという思いこみに囚われたのも、ここが原因かも知れないとさえ思う。

漁村は夏になるとダイビングサービスに様変わりする。島のほぼすべてが民宿で、ダイビングサービスなのではないかと思うくらいだ。それ故、この日の宿は取れても翌日はダメ、という事になっても特に慌てる必要はない。
あらかじめサービス一覧をプリントアウトさえしておけば、その場で電話をしてその日の宿を決められる。私のような風来坊にはこの上もなく居心地の良い土地だ。

島とはいえ、本土とは一本の橋で繋がっている。もっとも、最寄り駅の宿毛からの交通の便はすこぶる悪く、一日に数本しかないバスを待って島に渡るためには下調べが欠かせない。
バスを待って手持ちぶさたにしている大きな荷物の若者が居たら、声をかけてみればいい。
まず間違いなく柏島に行くダイバーだ。

柏島へと続く道は数年前に綺麗な舗装道路に整備され、その時の糀の土砂が海に流れ込んで湾内があれたとして、便利になったにもかかわらず、ここを至宝とするダイバー達には評判が悪い。

私がかの島に行ったのは3回。もうなかなか行けないくらいに離れてしまったが、いつまでもそこにあって、鄙びて恐ろしく綺麗なまま残って欲しいと思う、私のひみつの場所

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