CREATIVES

  • 240

アメリカンカーが物語った頃

アメリカンカーが物語った頃

和紙パネル1m×60cm  墨、アクリル

デカイ車がコークのボトルのように長いラインの途中でくびれている。
どこまで行ってもまっすぐで、乾き切ったハイウェイ。
いかにも男っぽい男が訳あって陰のある女を乗せている。
どうでも良いようなところだけどモーテルが見えてそこに車を寄せる。

1970年代のアメリカの映画に良くあるシーン。
乾いている、ぶっきらぼう、がミソだ。

NYを写した1960年代の写真集を寝る前に眺めて、その中の車のシーンに動かされた。
あのぶっきらぼうのアメリカでもこうした大味の車にさへ物語が湧き出る。

そして、アメリカを語る。が、今アメリカは堕ちた。
アメリカ3大ヒーローを一つの映画に登場させなければならないほど堕ちた。
トムウェイツはオールゾモービルが好きだ。
オールゾモービルって車の位置はさっぱり分からないが、なにか特殊な領域の車だというのが語感からも解る。
ポンティアックともデソートとも違う独自な生き方が見える。
でもそれを裏付ける事はぼくにはない。
丁度アメリカ映画のように、何かある訳でもないけど何か感じるという感覚だ。

別にアメリカだけじゃない。フランスだって、イタリアだって、あるべき何かを失っている。
それで、この絵を描いた。
かすかな匂い。濁った草色か淡い黄土色のコークボトルネックのアメ車が乾き切った平原を走り抜けて行く。
ふと何かが見えたような氣がした。でもなにもない。何にもない。

前へ