FabCafe Tokyo Creative Residency Vol.4 採択作品発表
FabCafe Tokyoが運営するアーティストインレジデンスプログラム、FabCafe Tokyo Creative Residency の第4回募集結果を発表します。
表現ジャンルの境界線を超え、デジタルとアナログを横断する次世代によるイノベーション創出を支援する本プログラム。
2025-2026年通年の活動テーマを「AI-ダダ」として、東京・渋谷を拠点とするFabCafe Tokyoのグローバルコミュニティや設備を介して、
参加アーティストの新たな挑戦や表現方法を探究する場を設けます。
第4回となる今回、15の作品・プロジェクトがエントリーされました。
今回の審査では、急速に進化するAI技術(速度、効率、合理性)に対して、人間側の「知覚」「感情」「速度」をどのように接続・批評できるかという点が深く議論されました3つの作品とアーティストを採択しました。
採択された作品は、2026年9月初旬にFabCafe Tokyoにて展示されます。
採択作品
Shimpei Miura 《空景装置》
《空景装置》は、19世紀の光学玩具フィナキストスコープと音響生成AIを組み合わせたアンビエント装置である。作家が渋谷のフィールドワークを元に発見した自然を題材としたアニメーションを装置に設置されたカメラがリアルタイムに解析し、その視覚的な特徴から音響を生成する。視覚情報から音が立ち上がることで、見ることと聴くことの境界を揺さぶり、人間と機械の知覚の接続と、渋谷に潜む魅力の再発見を試みる。
Shimpei Miura
福島県いわき市生まれ。東京を拠点に活動をする Multimedia Artist。映像、音響、プログラミング、電子回路を表現技法として、技術が変容させる人間の知覚や身体性を探求する。近年では、視聴覚における調和−連合理論や虚構の上に生まれる現実感を主な関心としてインスタレーションやオーディオビジュアル作品を制作している。https://www.instagram.com/_shimpeimiura/
村田実莉 《SNAILCAN IN STRESS》
「SNAILCAN IN STRESS」は、ストレス社会を生きる人々に向けた、架空のカード会社をテーマにしたシリーズ作品です。感情のインフラに着目し、豊かさが実現された社会においても働き続けてしまう現代人の「贅沢な疲れ」を扱い、その可視化と癒しを試みます。アメリカン・エキスプレスを引用したブラックカードには、脱成長を象徴するカタツムリが汗をかいています。働き者のアリとのんびり屋のカタツムリを対比させ、資本主義社会における人間の感情を風刺的に描き出します。
村田実莉

ロンドンと東京を拠点に活動するビジュアルアーティスト。蟻を人間のメタファーとして登場させ、蟻の集団行動と人間の社会構造の類似性の視点から、生命活動・消費社会・価値経済をめぐる人間の営みを寓話的に描き出す。
作品はCGを主体に、映像・インスタレーション・パフォーマンス・社会実験など多様なメディアを横断。2020年よりコムアイと主宰する気候変動にまつわるアートコレクティブHype Free Waterとしても活動している。
YUKI MORITA 《What We See》
FabCafe Tokyoの窓の外に見える渋谷は、2034年まで続く再開発の只中にある。いま見えているビル群も首都高速も、やがて消え、別のものへと置き換わっていく。消えていったものはどこへ行ったのか。そして「消す」という行為とは何か。着目するのは、都市と生成AIに共通する「潜在する多様体から何かが選び取られる構造」である。都市には、土地の履歴、過去の計画、人々の記憶、まだ現れていない将来像が潜在し
ている。再開発とは、その複数の可能性の中から一つの姿が選ばれ、現実として固定されていくプロセスだ。生成AIも同じく、内部に潜在空間を持ち、人間はそこから出力を選び取り続ける。選ぶことと消すことは表裏一体であり、都市もAIも、潜在していた可能性の中から一つを選び取り、残りを不可視にするプロセスである。
AIの画像編集技術は、画像の不要な部分を自然な背景へ置き換え、最初からそこに存在しなかったかのように見せる。これは便利な編集機能であると同時に、写真の記録性を内部から書き換える破壊の道具でもある。本展はこの道具を反転させる。整った像をつくるために消すのではなく、消されてきたもの、選ばれなかったものを再び出現させるために。
森田祐輝

ラグビーの怪我を機に脳神経科学を経てメディアアートへ転換。テクノロジーによる社会の 急速な再編成のなかで、何が「当たり前」かを問い直す制作を、芸術と科学の交差点から行 っている。スポーツがもたらす規範と関係性を主題に映像・インスタレーションを制作する ほか、近年はDIG SHIBUYA 2026への参加など渋谷の都市変容をテーマとした作品も展開。 第29回岡本太郎現代芸術賞入選。東京藝術大学大学院在籍。
門田健嗣 《human as landscape》
本作は、生活環境における人間の立ち位置を「環境の一部」として再定義する試みです。家具内に設置されたカメラが捉える室内風景を、AIを用いてリアルタイムに「外部の風景」へと変換、出力します。
これまで人間は、家具や建築を使う「主体」でした。しかし、本作は家具に設けた窓越しにAIによって再構成された風景を眺めるという体験を作り、その主従関係を解体します。これにより、見慣れた生活の断片やそこに介在する人間の存在は、街のビル肌や大自然の地層と同じく、環境を構成する物質あるいは現象へと還元されます。窓というフレームを通すことで室内で起きている動きや人影、その他住環境の状況は対象化され、外部環境のテクスチャへと翻訳されるのです。
この変換プロセスを経て、鑑賞者は自らが環境を構成する要素(component)であることを再認識し、人間が環境へ溶け込んでいくような視座を体験することになります。
門田健嗣
今後のスケジュール
採択された4つのプロジェクトは、FabCafe Tokyoの設備やコミュニティを活用した滞在制作を経て、2026年9月初旬に同会場にて展示・発表されます。
効率や正解を求めるAIの潮流に対し、彼らがどのような「ダダ」的実践で応えるのか。
渋谷の風景がどう書き換えられるのか。どうぞご期待ください。