NEWVIEW AWRDS 2019 結果発表
ファッション/カルチャー/アート分野のVRコンテンツアワード、NEWVIEW AWARDS 2019。受賞作品を発表!
3次元空間の新たな表現と体験を切り拓く次世代のクリエイターの受賞作をご覧ください。
テーマはDESIGN YOUR ULTRA EXPERIENCE "超体験のデザイン"。
作品制作のツールは誰もが簡単にVRコンテンツをクリエイト&発信できる プラットフォーム「STYLY」(https://styly.cc/)です。
2019年7月1日-9月30日まで募集が行われ、世界8ヶ国から合計254作品の応募(関連アワード含む)の応募がありました。
Gold
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Judge’s comment: 夢眠 ねむ(夢眠書店 店主/キャラクタープロデューサー)
未来の家族写真の共有はこうなっていくのかもしれない。XR世界を与えられたコンテンツを体験するだけでなく個人がアレンジして作って楽しめる、という一歩先のフォトアルバムサービスの発想にも繋がって「私もやってみたい!」と思ったという点では唯一無二。 娘の嫁入り前にこれを見返してゴーグルの中で泣くのが恒例になるのが見えるような、そんな日常に溶け込んでいく可能性を思わせてくれる作品。
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Judge’s comment: Keiichi Matsuda(デザイナー / 映像作家)
たっくんミュージアムは、小さな子供の想像力と思い出から作られた世界です。シンプルでありながら非常に力強い作品だと感じました。作品の中で自分の幼少期を旅する前に、たっくんは自分で描いた巨大な絵を劇場のステージで、可愛らしいたっくんの歌声とアニメーションと一緒に披露します。このシーンでは、作品を見ている我々もたっくんの思い出の一部になったかのような、自分が小さくなって違う世界に飛ばされた感覚を強く覚えました。 このプロジェクトは意欲的でもあります。360°動画および2Dビデオ、アニメーションキャラクター、振り付けパフォーマンス、タイポグラフィ、フォトグラメトリー、部屋の3Dモデル、空間オーディオを組み合わせています。これらのほとんどすべてがたっくん自身が生み出しているため、非常に多くの異なるものを組み合わせているにもかかわらず、世界はとてもまとまりがあります。作品の流れと一連のイベントにも多くの注意が払われており、進むペースも良く、ユーザーの体験に注意を払っていると感じました。 このプロジェクトは可愛くて、愛に満ちていて、技術的に完成されているだけでなく、なんといってもパーソナルで具体的であるため、ゴールドに値すると思いました。一見すると、一般の人に向けた学校の演劇のような大衆的な作品ではなく、たっくんの家族にとってのみ本当に面白い作品かもしれません。しかし、この作品は私たちの人生と記憶を深くパーソナルな空間に記録できる新たな手法の兆しを示していると感じました。きっといつか、たっくんの孫が時間をさかのぼってこのたっくんミュージアムを訪れ、そこで体験した思い出を自分自身のミュージアムに追加する日が来るでしょう。
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Judge’s comment: Nick DenBoer(映像作家)
たっくんミュージアムは優れたオリジナリティーがあり、他の作品の中でも一際存在感がありました。作品の内容は非常にパーソナルなものでしたが、ギャラリーとして素晴らしい体験の設計ができていると感じました。たっくんの絵を使用したキャラクターデザインは、作品開始時に本当にクールな世界を作り上げており、たっくんの人生ギャラリーは、たっくんと一緒に歳をとっていくような体験ができるものでした。このような追体験の形式は、自分の好きな有名人の生活を追体験できるウェブサイトの未来として魅力があるように感じます。そういった意味でも、この作品はGOLDに値すると感じました。
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Judge’s comment: Lu Yang(アーティスト)
たっくんミュージアムはとても可愛く素敵な作品で、父親でもある審査員にとっては特別な魅力があったように感じました。それだけでなく、この作品はVRをより日常生活の中で身近なものとして印象付け、多くの人々にメリットをもたらす可能性を秘めていると思いました。その点で、この作品はよりVRについての知識を深め、VR作品を創作する意欲を掻き立ててくれるだけでなく、VRという技術を特定の閉じた分野から解放して民主化させていると感じました。
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Judge’s comment: Keng-Ming Liu(Bito創業者兼クリエイティブディレクター)
すべてのアーティストは子供になりたいと思っていますが、子供からしてみればおそらく我々のクリエイションは目にも留まりません。そんな子供の視点や想像を捉えたいというクリエイターの意図をこの作品を通じて強く理解することができました。子供の想像力は限界を知らず、どこまでも冒険に満ちているものです。さらに重要なのは、共鳴についてです。私たちはかつて子供だったためか、作品を通じて表現される感情のゆらぎが私の中でも強く共鳴しました。その点で、この作品は洗練されていたり、「最も美しい作品」ではなかったかもしれませんが、感情を伝えることにおいて間違いなく一番でした。
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Judge’s comment: 倉本 美津留(放送作家)
フォーマットとしての完成度があり、誰もが利用できるパッケージとして捉えられ、そういう部分が他の作品と一線を画すところがあると感じ高く評価しました。私は普段テレビ番組のしごとをしていますが、その見地から見ても面白く、構成的にも優れていたと思います。
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Judge’s comment: 大月 壮(映像作家 / 映像ディレクター)
私は一見奇抜なものが好みですので今作に関しては、よくありがちな親が子供のために作ったフォトアルバムのVR版かと高を括って視聴し始めましたが「これでもかこれでもか」という具合に様々な手工や技法が凝らされていて、また空間を進んでいくにあたっても「まだ先があるのか」といった具合に過剰に世界観が作り込まれており感服いたしました。他審査員も満場一致の高得点だったのも印象的でした。技術のみに走らず、けど多彩な技術を取り入れて、個人的な想いを作品に昇華して、徹底的に作り込んだ結果、体験者も楽しく飽きずに最後まで体験できる、という好例だと思います。
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Judge’s comment: 豊田 啓介(建築家 / noiz)
子供の成長という年単位の時間軸を一つの空間に落とし込む、もしくはアルバムという通常二次元の世界をインタラクティブな三次元空間に拡張する、いずれの解釈においても、共有した記憶という固定的になりがちな事象にビビッドな質感を与える試みという点で、VRの一つの可能性を明確に示していると思います。記憶の転写というのが二次元の写真や二次元+時間の動画という媒体に閉じていた時代は終わり、空間性や機能性、スケール感や質感までをもインタラクティブに記録し、編集し、再生ではなく体験を都度新しく生成していく時代が来ているのを改めて感じます。
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Judge’s comment: 谷口 暁彦(アーティスト)
「Takkun Museum 」は、作者自身の子どもの成長記録になっている作品です。そこにはこれまで「たっくん」が生み出してきた絵や工作などの制作物が子どもならではの独自の世界観に基づいて配置されています。また、それだけでなく、自宅の部屋が子どもの成長に応じて変化する様子が3D空間で体験できる形で再現されています。それは、写真や映像のように意識的に記録されるメディアからはこぼれ落ちてしまう、何気ない日常の変化を捉えようとするものです。子どもの成長はそうした何気ないわずかな変化の積み重ねと、その周囲の環境との相互関係から生まれてくるものなのだと思えてきます。あっというまに過ぎ去っていってしまう子どもの成長を丁寧に記録に残そうとする姿勢に心を動かされました。
Silver
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Judge’s comment: Lu Yang(アーティスト)
正直なところ、私個人の見解ではこの作品が1番だと感じました。私自身が独立したクリエイターということもあり、細部の完成度は作品の元となるクリエイティビティと同じくらい重要だと思います。その点でこの作品は完成度が高く、視覚効果にプロの技術が用いられていることに非常に感銘を受けました。私は、この作品にかけた献身と努力に対して、このクリエイターを心の底から称賛したいと思います。一人のクリエイターとして、作品に真剣な努力をしたクリエイターへのサポートをここに示したいと思います。
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Judge’s comment: 倉本 美津留(放送作家)
漫画という表現の進化。その一方向を提示した作品。漫画を読むものではなく体験できるものに。 その試みにおいて、ともすればアニメ的なものになりそうなところを、あくまでも漫画として昇華させているところが いい。
Silver
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Judge’s comment: Keng-Ming Liu(Bito創業者兼クリエイティブディレクター)
この作品はブルックリンにある私の小さなアパートを思い起こさせました。細部の亀裂にまで馴染み深さを感じ、それらは1つ1つが私に共鳴するように描かれていました。すべての審査員が隠れた宝物を探し出すためだけに立ち上がった様子を見て、この作品は記憶と実際の身体性に基づいてより多くの空間を作り直したいと思うきっかけを与えてくれました。そしてそれはきっと、クリエイターと視聴者の両方にとって興味深いものであるはずです。
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Judge’s comment: 豊田 啓介(建築家 / noiz)
ごくありふれた部屋が、コードを辿るという何気ない行為の結果、空間的な位置関係やスケール、部屋という環境の存在そのもの、ひいては自己の存在そのものまでをもあらためて問い直すような領域に独特の私的で詩的な空間でいつのまにか導いていくという点で、アーティスティックな可能性として特に優れていると感じました。現実感が虚構性を演出し、虚構性が現実の意味を再構成して問い直す、そうした意味の抽出と編集という行為に、VRというメディアは向いているのだなと改めて感じさせてくれた作品です。
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Judge’s comment: 杉山 央(森ビル株式会社 MORI Building DIGITAL ART MUSEUM室長 一般社団法人MEDIA AMBITION TOKYO理事)
作品は、無機質な空間ではなく、作者の自邸を模した日常の一コマから始まるため、空間の中に自然に入りこむことが出来る。 空間構成とストーリー進行のルールはとてもシンプルで明確だが、空間の抑揚 、ドラスティックな場面転換によって、連続的に驚きを与える作品になっている。 VRが現実と切り離された仮想空間でありながら日常の延長のように感じさせるこの世界は、人間の創造的な表現を拡張しているように感じられた。
Silver
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Judge’s comment: 大月 壮(映像作家 / 映像ディレクター)
作品の制作目的と結果としての着地感としては詰め切れてない点も多く、未完成な作品という印象も受けましたが(特に操作面)、誰に何を与えるわけでもない個人的な妄想世界を奇抜なビジュアルと圧倒的に広い空間としてこれでもかと表現していた様に好感が持てました。空間を進むごとに変化していくビジュアル感は飽きることなく楽しめましたし(が、操作感が悪い、、、)、ビジュアルアートとして「カッコイイな」と思える部分があったのが印象的でした。未完成さが良い意味で次に期待したくなる要因とも感じていますので、次作があったら体験者を意識して、更なる圧倒的奇抜なビジュアル世界にスムーズに没入させてくれることを期待しています。
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Judge’s comment: 谷口 暁彦(アーティスト)
「無意識の中の境界線」をテーマに、広大な空間で構成された熱量の高い作品でした。抽象度の高いテーマでありながら、「境界線」とその内と外での世界の変化を丹念に繰り返し作り出すことで独自の解釈や、それに基づく世界観を生み出すことに成功していたと思います。それはまた、夢うつつのなかで現実と夢のなかを彷徨うな体験でもあります。このVRという表現手法と、その技術が、作者自身の個人的な体験とその身体に分かち難く結びつき、まるで絵の具や粘土といったフィジカルな素材のように身体化し、無意識的に用いられていることが強く感じられました。そこに新しいVR作品のあり方の可能性を感じました。
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