新しい領域を社会に広げていくためには、研究成果を発表するだけでなく、多様な人々を巻き込みながら価値を言語化し、共有していくプロセスが欠かせません。まだ十分に知られていない分野を可視化し、社会的認知や肩書きを得ることで、新しいムーブメントとして広がっていきます。
今回は、「触覚」をテーマに研究とデザインの視点を融合させ、新しい分野の可能性を社会へ開いていったアワード「HAPTIC DESIGN PROJECT」をご紹介します。
※本記事は、株式会社ロフトワークで公開された事例「HAPTIC DESIGN PROJECT」をもとに、再編集しています。
Spotlight
触覚を通じて自己と世界をつなぐ新たなデザイン分野「HAPTIC DESIGN」をテーマにした「HAPTIC DESIGN AWARD 2017」。
2017年は、20カ国から116作品の応募が集まりました。ここでは、グランプリや優秀作品など身体感覚に訴える独創的なアウトプットの数々をご紹介します。https://hapticdesign.org/award/
Outline
触覚を新たなデザイン分野のムーブメントに
国立研究開発法人 科学技術新興機構(JST)におけるイノベーション志向型の研究開発支援プログラム「ACCEL」の一環として実施されている「JST ACCEL 身体性メディアプロジェクト」(研究代表者:舘 暲 東京大学名誉教授)は、「HAPTIC(触覚)」分野の産業活用を推進する「HAPTIC DESIGN PROJECT」をスタートしました。ロフトワークはこの取組みを立ち上げから支援。既存の産・学・エンジニア層に加え、デザイナーやクリエイターなど新しいプレイヤーを巻き込みながら、「HAPTIC DESIGN」をムーブメントとして盛り上げ、社会実装するための施策を行いました。
プロジェクト概要
支援内容
リサーチ:新たな気付きからのプロジェクトゴールの定義
プランニング:具体施策の立案と3年先までのシナリオの作成
実行:各施策を組みあわせたムーブメント作りへの挑戦(シナリオの実行)
アプローチ
リフレーミング:HAPTICの価値の再発見
これまでの研究内容やアウトプットを元に、新たな分野の可能性やまだ発見されていない「HAPTIC」を洗い直し、HAPTICの新たな価値を再発見しました。
コミュニケーションデザイン:Webメディアを起点としたコミュニケーションを設計
HAPTIC DESIGNのコンセプトを整え、VIを定義。Webサイトへと展開しています。メディア型のWebサイトでは、食やファッション、エンターテインメントなど身近な題材からHAPTICを語り直しています。
アワード:ムーブメントを生み出すアワードのしかけ
HAPTIC DESIGNを題材としたアワードを通じて、まだ見ぬHAPTICデザイナーを発掘し、多くの人に注目してもらう仕組み。イベントなどのアワードのプロモーションと併せて、HAPTIC領域への参加人口の飛躍的成長を目指しました。
エキシビジョン:展示による成果発表とタッチ・ポイントづくり
FabCafe Tokyo、FabCafe MTRL におけるアワードの受賞作品展で、プロジェクトの成果をお披露目。一般の人々へのタッチポイントを創出しています。
体制
- 主催:JST ACCEL 身体性メディアプロジェクト
- 協力:新学術領域研究「多元質感知」、NTTコミュニケーション科学基礎研究所、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
- 運営協力:株式会社ロフトワーク
- プロデューサー:白江 崇志
- プロジェクトマネージャー:渡邉 多恵子
- メンバー:原 亮介 / 関口 智子 / 北島 識子 / 小原 和也 / 小野村 香里
Outputs
Webメディア
「触覚体験を設計するクリエイター」へのインタビューやレポートを発信するWebメディアHapticdesign.orgの立ち上げとコンテンツ制作
研究、デザインの両面から、HAPTIC DESIGNのフロントランナーを取材しインタビュー記事を掲載しています。

HAPTIC DESIGN Webサイト
HAPTIC DESIGN AWARDを開催
活動を社会実装につなげる、エントリーの仕掛けとして、HAPTIC DESIGN AWARDを開催


新たなHAPTIC DESIGNERを発見し、作品を発表する場を提供する日本初の触覚をテーマにしたアワードです。短期間の応募にも関わらず、70点ものアイデアが寄せられました。
Process

リサーチ:新たな気付きからのプロジェクトゴールの定義
プロジェクトのキックオフとして、全員で本プロジェクトで実現したい世界、目指すべき未来像、活動の全体像を可視化しました。また、2日間のワークを実施し、各自がもつ「触覚」に対する原体験を改めて整理、共有するなどメンバー間の「触覚像」を探求していきました。


さらに様々な分野の外部有識者にヒアリングし、今後の「触覚」の可能性をリサーチ。「企業」「開発者」「クリエイター」という重要なステークホルダーごとの課題を整理しました。

プランニング:具体施策の立案と3年先までのシナリオ作成
課題に対するアプローチの第一歩として、ステークホルダーごとのゴールを明らかにしました。それぞれ取りうるアクションを3年先までシナリオに落としています。

実行:共感を集めるコンテンツを作成し、ムーブメント作りへの挑戦
HAPTIC DESIGNとは何かを徹底的に深掘り、言語化。世界観を表現するVIと、言葉を定義。




「触覚体験を設計するクリエイター」から学び、新しい「ハプティック・デザイナー」を育むコミュニティ作りを目的としたイベント「HAPTIC DESIGN CAMP」の企画・開催。


フロントランナーから最新の触覚のデザインを学び、参加者も身近にある様々な触覚をもつ素材を使い、新しいアイデアをプロトタイプしました。
各実行施策は連携し効果を最大化
具体施策の実行を短期間で行う必要があったため、効果的・効率的に目的を達成する戦術も立案し、各施策を連携・一体化させてシナジー効果狙っています。

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