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ピンチをチャンスに!アフターコロナ時代の新しいスタートアップの在り方を探る「ニューノーマルを生き抜くヒント」開催レポート(前編)

開催日時2020年9月30日

共創プラットフォーム「AWRD」は、「ニューノーマルを生き抜くヒント」と題して、新しいスタートアップの在り方を深堀りするオンラインセミナーを2020年9月30日に開催しました。

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。それはスタートアップにおいても同様です。今回スタートアップにおけるwithコロナ時代をネガティブにではなく、チャンスにとらえることはできないか?という問いのもと、コロナ禍でもアクティブに活動されている方々のリアルな体験をもとに、スタートアップのためのニューノーマルを生き抜くヒントを探りました。

イベントでは、事業存続の危機に直面したサービスを立て直し、次なるステージへ進むWHILL株式会社の快進撃や急速に拡大を続ける香港からは、スタートアップの動向、メディアから見る取材にもとづく実例を交えたトークを展開しました。当日のイベントレポートをご覧ください!

目次
・プロダクトデザインとテクノロジーの融合
・拡大を続ける、三方よしの香港スタートアップエコシステム
・コロナでスタートアップ業界に起こった変化
・後半、トークセッションの様子

プロダクトデザインとテクノロジーの融合

はじめに「全ての人の移動を楽しくスマートに」をミッションに掲げ、新しい近距離モビリティを展開するWHILL 株式会社 システム開発本部 武井 祐介氏によるキーノートスピーチです。

武井 祐介/ WHILL 株式会社 システム開発本部 システム開発1 部 部長

デザインとテクノロジー
デザインとテクノロジーは遠いようで実は表裏一体、常に一緒に考えなければならない要素と武井さん。ここではデザインとテクノロジーを使った課題解決の3つの事例をご紹介いただきました。

1.誰もが乗りたくなるプロダクトへ

武井氏:100m先のコンビニを諦めしまうという車椅子のユーザーさんの声をいただいた時、2つのバリアがあると気付きました。

1, 人から見られることの「心理的なバリア」
2, 少しの段差で進路が妨げられてしまう「物理的なバリア」

この2つの課題を解決するため、「心理的なバリア」は、誰もが乗りたくなるように車椅子のデザインを一新。「物理的なバリア」は、テクノロジーの力で前輪を独自開発し移動しやすいプロダクトを開発しました。単なる移動手段としての車椅子ではなく、どこにでも行ける頼もしさを備えたモビリティを目指しました。

2.自動運転を研究するためのモビリティ販売
次は、既存のWHILL製品をベースにした新しい領域への展開事例です。

武井氏:昨今自動運転の技術に注目が集まっており、自動車だけではなく小型のモビリティへの応用も期待されていますが、この研究をしようとすると最初にベースとなるモビリティを作るところから始める必要があります。

そうなると、ソフトウェアのエンジニアなどは、十分な性能をもつモビリティが用意できなくて研究が進まない、という課題に直面することが良くあります。そんな課題を解決すべく、WHILLは既存の近距離モビリティModel Cをベースにした研究開発用のモデル「WHILL Modal CR」の販売をスタートしました。すでに大学や研究機関でも採用されて研究が進んでいます。
WHILL Modal CR:https://whill.inc/jp/model-cr 

3.空港のPRMが抱える課題を解決するには
3つ目は、空港などにおける長距離の歩行移動に対して支援を要する方々(PRM:Passenger with Reduced Mobility)に向けたサービスです。

コロナ前だったので、アクセシビリティーがますます重要になる空港のPRMにフォーカスしました。例えば空港での必需品である車椅子、エレベーターや段差の解消などハード面でのバリアフリー化は進んでいます。一方、以下のようなPRMサービス上の課題はまだ解消できずにいました。

サービス需要増によるスタッフ数の確保
・世界的な旅行者数の増加
・高齢化社会によるサービスへの需要増
・労働者不足及び高い離職率

顧客満足度の低下
・言葉の壁によるミスコミュニケーション
・サービス品質のバラツキ

これらを解決するため、移動をひとつのサービスで解決することを指すMaaS(Mobility as a Service)の開発を進めていきました。

<解決すること>
・登場ゲートまで車椅子で押して行った後は、スタッフによる回収の手間が必要になるので、ので自動回収機能を搭載する
・初めて乗る方にも安心して操作いただけるように衝突回避機能をつける
・管理側としてIoTの技術を活用しモビリティの状態を把握できるようにする 

開発を進め、世界数カ国での実証実験を経て遂に2020年から本格的な運用を開始できるところまで進んで行った時にコロナの世界的大流行が起こってしまいました。

コロナへの対応
コロナの影響は空港運営も直撃し、MaaSサービスのスタートを目前に空港利用者が激減、一時は空港ターゲットの事業が危ぶまれるまでになりました。

武井氏:その時、逆にコロナ対策としてのPRMサービスが抱える課題をこのサービスで解決できないかと視点を変えてみました。それは、ソーシャルディスタンスを保ちつつ介助スタッフがいなくても空港内の移動を可能にすることでした。

これまで1台につき、1人のスタッフがついて押す必要があった車椅子を、無人運転にする。さらに搭乗ゲートで降車した後は、自動運転で自ら元の場所に戻ることができる。そうなるとユーザーと介助スタッフ双方の感染拡大のリスクを下げることができ、今後のwithコロナ時代の「新常態」の一部になることができると考えました。

この新たな視点のおかげで、2020年6月に羽田空港国内線第一ターミナルでサービスを開始することができました。空港における人搬送用途での自動運転パーソナルモビリティの実用化は、世界初となります。

拡大を続ける、三方よしの香港スタートアップエコシステム

続いては、Invest香港の橋場 清子氏にコロナ禍でのアジア状況やスタートアップの現状についてお話しいただきました。

香港経済貿易代表部 投資推進室(インベスト香港)室長 橋場 清子

香港のビジネス環境
香港は東京都の半分のエリアに約750万の人口がひしめき合っています。今もイギリスのビジネス習慣や法制度を引き継いでいるので、欧米や日本にとってもビジネスがしやすい環境が整っており、貧富の差はあるもののGDPは日本よりも大きく、開放的で自由な市場としてさまざまな業種の人も進出しやすい国際都市香港としても知られています。

今後は、広東省、香港、マカオをビッグベイエリア(大湾区)として香港寄りに水準を上げ、一体的に発展させようとする計画があるのだとか。このマーケットが実現するとさらに大きなマーケットへアクセスできる取り組みになっていきます。

香港のスタートアップエコシステムについて
橋場氏:香港の土地が小さいこともありますが、インキューベーターとアクセラレーターとの繋がりがとても強くなっているのが特徴です。多種多様なネットワークイベント、セミナーなど交流・連携するイベントを年間通して開催し、強い繋がりを形成しています。

この6年間でスタートアップは、1,000社から6,000社へ急激に拡大しています。業種はさまざまでテクノロジー系を筆頭にバイオ、ロボティクスなどが見受けられます。

<香港のスタートアップエコシムテムの特徴>
・ここ数年で急激に拡大
・インキュベーターとアクセラレーターの強いつながり、ネットワークが構築
・数多くの経験豊かなエンジェル投資家とベンチャーキャピタリストのバックアップ
・さまざまな政府支援プログラムを展開
・新規来訪者を歓迎するフレンドリーなスタートアップコミュニティの存在

・香港で活躍するスタートアップの一例
香港で活躍してる企業は、地元企業のみならず、創業は海外でも拠点を香港をに移しているケースも多く見受けられます。ここで香港で活躍する一部企業をご紹介します。

Lynk(創業:シンガポール)
企業とスタートアップを専門家やメンターに繋げるサービス。約70カ国から35,000人以上のビジネス専門家が20カ国以上の言語でアドバイスを提供。https://lynk.global/

GOGOVAN(創業:香港)
従来の宅配サービスの問題点を解消する物流のプラットフォーム。800万人のドライバーで6カ国、300都市を網羅する。https://www.gogovan.com.hk/

Airwallex(創業:オーストラリア)
国際送金・決済に特化したフィンテック企業。400人以上の従業員で、世界10ヶ所にオフィスを構える。2020年に160百万米ドルのシリーズD資金を調達。https://www.airwallex.com/

・香港で活躍する7つのユニコーン
さらに香港には、7つのユニコーン企業があるのも特筆すべき点です。香港は国際的なビジネスマーケットがあり、世界からも注目を受け、イノベーションが起きやすい場所であることが分かります。
LALAMOVE
/ GOGOVAN / WeLab / BitMEX / KLOOK / Sense time / Airwallex 

・コロナへの対応
拡大を続ける香港スタートアップエコシステム。コロナ禍においては素早くコミュニケーションの場をオンラインに切り替えたといいます。これまで毎年リアルイベントとして開催していた国際的イベントスタートミーアップ香港フェスティバルや「香港フィンテックウィークなどは速やかにオンラインに切り替え開催されています。

・海外展開の第一歩としての香港
以上を踏まえて、スタートアップの海外展開にはなぜ香港が良いのか?三方よしのエコシステムについて橋場さんにまとめていただきました。


コロナ
でスタートアップ業界に起こった変化
橋場氏:香港はイギリス領だった背景もあり、ビジネスでは英語メインで行っています。ビジネス慣行も欧米に近く税金優遇もあることから、国際的貿易や物流や金融都市として発展してきました。またアジアのヘッドクォーターを香港に置く企業も多く、海外企業のアジアとの出会いの場としても機能しています。

スタートアップに関しても、インキュベーターとアクセラレーターとの距離が近く、資金やノウハウなどが得やすいのも特徴です。今はオンラインイベントも活発に開催されていますので、香港のスタートアップシステムを気軽にのぞいていただけると思います。

コロナでスタートアップ業界に起こった変化

DIAMOND SIGNAL 編集長 岩本 有平氏とロフトワーク小檜山によるトークセッションでは、10年以上にわたりスタートアップのコミュニティを俯瞰してきた岩本氏からリアルなお話しをうかがいました。

DIAMOND SIGNAL 編集長 岩本 有平

小檜山:事前に岩本さんから「スタートアップ業界に起こった変化」として4つポイント頂いています。


小檜山:まずはじめに「リモート前提」の会社と「出社前提」の会社の差別化ということなのですが、これはどういうことでしょうか?


岩本氏:コロナという直近の環境でいうと、業種とコミュニケーションの重要性で差別化ができているかなと思います。緊急事態宣言のあった4月前後くらいは一斉にリモートになりました。オフィスを引き払うケースも増えたんです。

一方、出社前提で整えている会社もあるんです。あるスタートアップは、一度オフィスを引き払ったものの、再度契約をして出社をしています。スタートアップって制度的にもまだ完成されているところが少なかったりするので、コミュニケーションの部分がものすごく重要だったりする。特にクリエイティブに近い部門だと、出社を促す方針を打ち出している方々も多く、SlackとZoomだけでは解決できないこともあるんですよね。

小檜山:ロフトワークもリモートと出社日を調整しながら勤務形態を模索しているところです

岩本氏:メディアもリモートだとセレンディピティが生まれなくなってきていています。たとえば取材の後に「あれ知ってます?実は…」と話すような余談が何よりも大切だったりするんです。それがコロナで生まれにくくなったなぁと感じています。

小檜山:リモート前提のサービス、コロナ前提のサービスは増えましたか?

岩本氏:このコロナ禍で求められるサービスがものすごく変わったと思っています。WEB面接システムや脱判子(電子契約)、ウーバーイーツなどのデリバリー系などのサービスが力を持ってきているというのは、実際に取材を通して感じています。もう皆さん普通に使っているかもしれませんが。

小檜山:それに付随してDXという言葉もよく聞きますね

岩本氏:DXはいろんなメディアでみる言葉になりましたよね。今では自分たちのテクノロジーをテコにして企業や社会の課題を解決していこうという、DXスタートアップという企業も増えています。

小檜山:既存のサービスが急激に伸びたり、逆に低迷したり、コロナによっての勝ち組、負け組はあるのでしょうか?

岩本氏:コロナで明確な勝ち組は、Eコマース(EC)だと思います。中小企業がオンラインに一斉に移行する際に、BASEなどのECプラットフォームを利用してぐんと伸びたんです。makuakeのようなクラウドファンディングのプラットフォームも中小企業の利用で伸びています。あとは、産直通販サイトの食べチョクやシェアサイクル、電動キックボードなども密を避ける移動として注目を浴びています。
後編へ続きます。

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