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侘び寂びの感性をたどる —— 古典のまなざしと現代を生きる心から、アートとして立ち上がるもの

その他
「侘び寂び」とは、古来より日本人に受け継がれてきた美意識です。
散りゆく花、うつろう季節、離れゆく人。
生きるということは、やがて朽ちていくこと——。
「失われゆくもの」「戻らないもの」「完全ではないもの」の中に、深い美しさが宿ると感じる感性です。
私は、この美意識そのものがとても尊く、人が人として生きる上で本質的なものだと感じています。

「生きることは、必ず終わりへと向かっていく。」その避けられない流れの中にある「儚さ」「哀しみ」「静けさ」を、古来の人々は嘆くのではなく、美として抱きしめてきました。
その心のあり方に、私は強く惹かれています。

今回の3ヶ月間の探求では、「調べること」と「表現すること」の二つの軸を往復します。

一つは、文学・和歌における侘び寂びの心情をたどり、人はどの瞬間に「侘しさ・寂しさ」を美として感じてきたのかを読み取る探究です。また、現代に生きる人々が「侘しさ・寂しさ」をどのように捉えているのか、その価値観・感性の観察も行います。

もう一つは、私自身の侘び寂びという感性を、アートや言葉として表現することです。

侘び寂びを広めたいということではなく、この美意識=本来の人間らしさというのを、外に出すすることで、見る人の内にある響きや感覚と重なり合うことを願っています。

「完璧であること」や「増やしていくこと」を求めたり、常に何か得ようとする現代の社会全体の雰囲気に、”うつろいの中に美しさがある”ということ、また、そこからくる、「かけがえのなさ、大切さ、愛」という心の感受に届けられたらと思います。

そのような場を作ることができるのか−−−それ自体を確かめる試みでもあり、探求テーマとしています。

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