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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
私が扱うのは、地方郊外のロードサイドに建つコインランドリーである。コインランドリーは、洗濯機が並ぶ施設ではない。洗濯物という最も私的な営みが、最も自然に公共空間へ現れる特異な建築である。家庭と街、公と私、その境界がゆるやかに重なり合うこの空間を、「地域の生活知」が循環する次世代の生活インフラへ変異させる。「洗濯をする場所」を変えるのではない。「生活と公共の境界」を変える提案である。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
現代社会は、効率化と最適化によって暮らしを豊かにしてきた。一方で、人との関係は「目的」を介してしか生まれなくなった。買い物はネットで済み、会話はSNSへ置き換わり、地域との接点は必要最低限になっている。かつて井戸端で自然に共有されていた暮らしの知恵や、小さな困りごと、人と人とのゆるやかな関係は、社会から少しずつ姿を消し始めている。
近年、防災や脱炭素、再生可能エネルギー、フェーズフリーといった考え方は社会に広く浸透しつつある。建築もまた、水や電気を備えること、環境負荷を減らすことが求められている。しかし、本当に地域を支えるインフラとは何だろうか。
災害時、人が最初に頼るのは設備だけではない。「あの人は大工だった」「あの人は野菜を育てている」「あの人は機械オタクだ」。そんな顔の見える関係が、地域を支える力になる。
私は、その関係性を育む舞台としてコインランドリーに可能性を感じた。ここには偶然生まれる待ち時間があり、生活そのものが集まる。設備を増やすだけではなく、人間関係という見えないインフラを育てること。それこそが、これからのフェーズフリーであり、コインランドリーが次の時代へ変異する理由だと考えた。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
01|「洗濯」を「生活」へ拡張する
本提案は、コインランドリーを「洗濯をする場所」から、「地域の生活知が循環する場所」へ変異させる計画である。
洗濯は生活の一部でしかない。しかし、コインランドリーには毎日のように生活者が集まり、洗濯という行為によって必ず待ち時間が生まれる。この「目的を持って集まり、余白が生まれる」という性質は、他のロードサイド施設にはない。
この余白を、地域に眠る生活知と出会う時間へ読み替える。
02|地域の先生を編集する
地域には、学校の先生ではない「先生」がいる。
野菜の育て方を知る農家。
ズボン補修が得意なおばあちゃん。
味噌や漬物を仕込む人。
DIYが好きな人。
花染めを知る人。
読み聞かせをしたい人。
ランドリー内の掲示板には、その日の「生活知」が並ぶ。
今日はズボン補修。
今日は味噌づくり。
今日は花染め。
今日は子ども食堂。
利用者は洗濯を待つ時間に偶然その掲示板と出会い、興味を持てば自然と参加する。教える人も、別の日には教わる側になる。知識ではなく、「暮らし」が循環する。
03|ロードサイドを地域へ返す
ロードサイドは本来、街に開かれた空間である。しかし現状では、多くの人が車で訪れ、目的だけを終えて立ち去る。そこでランドリーを、地域の掲示板として機能させる。
ガラス越しには活動が街へにじみ出る。
駐車場では小さなマルシェが開かれる。
ランドリーカートは普段は洗濯物を運び、休日は野菜や本、展示物を運ぶ。
洗濯物をたたむ長テーブルは、地域の万能テーブルへ変異する。
建築を大きく変えるのではなく、ランドリーが本来持っている余白を編集する。
04|未来のフェーズフリー
近年、フェーズフリーは設備やエネルギーの視点で語られることが多い。もちろん、水や電気、備蓄は重要である。しかし、本当に地域を支えるのは、それだけではない。
「あのおばあちゃんは裁縫が得意。」「あの農家さんなら野菜を分けてくれる。」「あの大学生は顔が広い。」
普段のランドリーで生まれた顔の見える関係は、災害時には自然と助け合いへ変わる。ランドリーカートは物資を運び、掲示板は地域情報を伝え、人は得意なことを持ち寄る。
私は、未来のフェーズフリーとは、水や電気を備えることだけではなく、人間関係という見えないインフラを育て続けることだと考える。コインランドリーは、服を洗う場所から、地域の生活を編集する場所へ。そして、平時は「地域の掲示板」に、有事は「地域の防災センターのはじまり」へ変異する。
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よりあいランドリー -地域に眠る「生活知」を集め、交換し、編集する-
コインランドリーは、「生活」が街へにじみ出る唯一のインフラである。「洗濯物」という極めて私的な営みが公共空間に現れても、誰も違和感を抱かない。この特異な境界性を、新しい公共性へ変異させる。待ち時間は人と出会う余白となり、ロードサイドは地域の掲示板となる。日常に育まれた顔の見える関係は、災害時には人間関係というインフラとなり、地域を支える。
