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さかなあたま
五月の晴れた日
傘をさし長靴はいて
逃げ出す人々満載の電車を待っていると
確か中学の同級生のB君が
魚の帽子をかぶって笑いながら話し掛けて来た。
「ねえ君も逃げちゃうのかい?」
って笑いながら聞くから
「君は逃げないの?」
って聞いたら
「僕はもう逃げちゃったんだよ」
と水の中でしゃべるようにガボガボ笑って
人込みの中を泳ぐように消えていった。
次第に大きくなるサイレンを聞きながら
そおいえば去年彼は海で行方不明になったんだった...
と思い出した。
傘をさし長靴はいて
逃げ出す人々満載の電車を待っていると
確か中学の同級生のB君が
魚の帽子をかぶって笑いながら話し掛けて来た。
「ねえ君も逃げちゃうのかい?」
って笑いながら聞くから
「君は逃げないの?」
って聞いたら
「僕はもう逃げちゃったんだよ」
と水の中でしゃべるようにガボガボ笑って
人込みの中を泳ぐように消えていった。
次第に大きくなるサイレンを聞きながら
そおいえば去年彼は海で行方不明になったんだった...
と思い出した。
