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過去と未来をつなぐ道しるべ

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 これは、表参道交差点に建てられている石灯篭である。表参道といえば、日々多くの人が行き交う日本屈指の繁華街である。だが、かつてこの場所が大きな戦禍に見舞われたことを何人の人が知っているだろうか。
 1945年5月25日、アメリカ軍の焼夷弾による爆撃によって、3600人余りが犠牲になった。これが、いわゆる山の手大空襲である。表参道は火の海となり、空襲後、石灯篭のすぐ側には多くの犠牲者の遺体が積まれたという(新20世紀遺跡:/36 東京・表参道 山の手大空襲, 『毎日新聞』2016年, 5月30日夕刊)。灯篭に残る黒ずみは、当時の被害の様子を物語る。そして現在、この灯篭は、喫煙所となっている。
 2019年7月19日、京都のアニメーション会社「京都アニメーション」の第一スタジオで放火事件が発生し、34人の尊い命が犠牲となった(京都アニメ会社放火で34人死亡――国内外で高評価、アニメ界に打撃。,『日本経済新聞』2019年7月20日朝刊)。事件後、多くの人々が被害者の死を悼み、SNSなどで書き込みをしている。だが、280字の言葉だけでは、自分の気持ちを伝えることはできても、社会を変えることはできない。この事件を過去の遠い出来事にしないためには、今を生きる私たちが、より良い未来を築くために実際に行動する必要があるだろう。この石灯篭は、私たちの進むべき道を示す道しるべなのである。

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