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金魚姫の孤独
金魚鉢の底でいかに己が姿を美しく魅せ続けるか。
それが金魚姫に託された唯一の仕事だった。
いつからか飼い主が部屋に訪れない日が多くなった。
「悲しみを見たくないから目を覆って頂いた。
貴方の気配を追いかけたくないから拘束して頂いた。
自ら望んだ事とはいえ寂しかった。
でも、それ以上に誇りがあるのは確か」
そこには美徳も悪徳も無かった。
疑う事なく従順であり続けること。
一切が過ぎていく時の中で姫は今日も待ち続ける。
それが金魚姫に託された唯一の仕事だった。
いつからか飼い主が部屋に訪れない日が多くなった。
「悲しみを見たくないから目を覆って頂いた。
貴方の気配を追いかけたくないから拘束して頂いた。
自ら望んだ事とはいえ寂しかった。
でも、それ以上に誇りがあるのは確か」
そこには美徳も悪徳も無かった。
疑う事なく従順であり続けること。
一切が過ぎていく時の中で姫は今日も待ち続ける。