COMPETITION

Roooots 瀬戸内の名産品リデザインプロジェクト 2013

「Roooots 名産品リデザインプロジェクト」は、国際芸術祭開催をきっかけに、地方の名産品と世界のクリエイターに目を向け、持続可能な地域振興に結びつける恊働プロジェクトです。1万6千人が登録するクリエイターポートフォリオサイト「awrd.com」を通して名産品のパッケージデザインを募集し、選ばれたクリエイターと各地域のメーカーが対話を重ね、恊働することで新しいマーケットに向けたアイテムを生み出します。

募集終了 2012/11/07(水) - 2013/01/10(木)

12作品が「瀬戸内国際芸術祭2013」で商品化

瀬戸内国際芸術祭2013」に向けて、瀬戸内地域から厳選された名産品のリデザイン・アイデアを募集する「Roooots 瀬戸内の名産品リデザインプロジェクト2013」(以下、Rooootsプロジェクト)では、500点を超える応募作品が寄せられました。審査員による厳正な審査の結果、採用された12作品を発表します。

1月某日、佐藤卓さんの事務所にて、審査会の様子。

Roooots 2013の傾向と選考のポイント

伝統・手づくり・新名物、より地元を象徴する名産品をテーマに
Rooootsプロジェクトが実施されるのは、今回で4度目。リデザイン対象となったのは、伝統的な製法でてつくられる「瓦せんべい」や、手摘みのオリーブオイル、さらに、地元産の素材にこだわった古代米のお酒「リセノワール」や「にんにくいりこ味噌」といった新名物。地域の人々の手によって丁寧に作られた全10品目の名産品がリデザイン対象でした。

ヨーロッパ、中東諸国からの参加も-世界のクリエイターが新しい「瀬戸内らしさ」を提案
今回の特徴として、国内クリエイターのみならず、ポルトガル、ギリシア、エジプト、台湾といった様々な国からも積極的な提案がありました。また、例年に増して製品の背景や生産者への理解・考察が深い作品が多く、魅力的な作品が多かったことから、審査員陣を大いに悩ませる選考となりました。

最終的に、売り場におけるプレゼンテーション力コスト・生産性、なにより、抜きんでた個性を持っているかどうかが選考の決め手となり、多彩な作品12点の採用・商品化が決定しました。また、最後まで採用作品と拮抗し、惜しくも採用を逃した作品には「作品賞」を進呈します。

採用作品

瓦せんべい


Title: Upbeat Geometry Creato: Anna Kovecses (キプロス)

Concept : 瓦せんべいの形状などいくつかのシンボルを使用し、モダ ンかつ親しみやすいパッケージをデザインしました。外箱 の特徴は、瓦せんべいそのものの形を女性の顔に見立て た幾何学的イメージ。さらに、内側に描かれた青色パター ン柄と、クッキー表面に浮き彫りされている手書き調の点 によってブランドイメージを構成しています。手作りの雰囲 気と、明るくエレガントな雰囲気を融合させることで、ユーザーに愛されるデザインを目指しました。 My design is a modern yet friendly packaging that works with multiple symbols including the iconic shape of the cookies. The outer box features geometric shapes, one of which is the actual cookie, while the other is an interpretation of the target audience - the face of a woman. Branding elements also include a sleek blue logo icon that repeats as a pattern for the inside and an emblem made of dots with a hand drawn feel that is embossed into the cookie simultaneously. This design aims to have an upbeat yet elegant atmosphere with a good quality hand crafted feel that helps the product get closer to the consumer.

Judge's comment: 佐藤 卓

昭和のイラストレーションのような懐かしいイメージ。一度見たら忘れられない強さがある。

Judge's comment: 遠山 正道

お土産は、中身の前に渡した時の「かわいい」という印象が大事。とても印象的で、伝統的な瓦せ んべいのイメージ刷新する面白いパッケージだと思った。

Judge's comment: 林千晶

Rooootsの取り組みの中で、はじめての海外デザイナーによるデザイン作品。世界からの視点で 再発見された瓦せんべいの価値が、あらためて日本人にどう伝わっていくのかが楽しみ。

くつわせんべい

審査の結果、今回は採用作品はありません。

紫芋クッキー


Title: 紫いもクッキー Creator: 茂山 登志男(日本)

Concept: 製品を紙で包みました。 パッケージのコストを抑えるためシンプルなつくりとしな がらもインパクトあるデザインで、いものイモっぽさを表現 しています。

Judge's comment: 佐藤 卓

芋の「素材感」がそのまま出ていて、すごくおいしそう。世の中で「丁寧でわかりやすいデザイン」 が多い中、むしろこのくらいぶっきらぼうなパッケージの方が、存在感がある。

Judge's comment: 遠山 正道

3次元で芋を表現したのが新鮮。この「ちょっと変」な感じをそのまま商品パッケージに落とし込ん でほしい。芋同士を束ねて吊るすようなディスプレイをしても良いと思う。

Judge's comment: 林千晶

「どうやっておいしさ伝えるか」を突き詰めた結果、生まれるデザインだと思う。芋の味が、視覚的 にストレートに伝わってくる。

エキストラバージンオリーブオイル


Title: EXTRA VIRGIN OLIVE OIL Creator: 平野 達郎(日本)

Concept : 文字だけのシンプルなデザインにし、素材の良さと素朴さ を端的に表現しました。 商品名の文字間を広めにし、ゆったりと読ませることによっ て丁寧に作られていることを強調しました。 文字が箱の角をまたぐことによって角を前面に配置したり 隣り合う2つの箱をあわせて商品名を見せたりと、売り場 でインパクトのある陳列を出来るようにしました。

Judge's comment: 佐藤 卓

あたかも「デザインしていない」かのようなパッケージが、逆に際立っていた。正方形の角を見せ てディスプレイするという発想もユニーク。高級商品なので、紙や印刷などを工夫していかに 「2,000円の納得感」を出すかにチャレンジしてほしい。

Judge's comment: 遠山 正道

「実際に小豆島の人がつくったパッケージなのかも」と思わせる素朴さが良い。

Judge's comment: 林千晶

シンプルさがとてもいい。さらに、この商品の背景や作り手の思いといったストーリーを加えると、 より良くなると思う。

瀬戸内の玉手箱


Title: 瀬戸内伊吹いりこ Creator: 黒柳 潤(日本)

Concept: とれたての海産珍味を多くの人に知らせるために、袋に大 漁旗をかかげます。 制作にあたっては、土地に残る大漁旗を実測し、寸法・色 彩・書体、そして、漁師の威勢を込め、青い海の広がる瀬戸 内に大量の「祈りの旗印」をはためかせます。

※本作品は「6. 瀬戸内いりこ」へ応募されましたが、審査員 による審議の結果、「5. 瀬戸内の玉手箱」のパッケージに よりふさわしいと判断されました。

Judge's comment: 佐藤 卓

元気のない世の中で、元気の象徴である大漁旗を使ったデザインがすごく良い。3種類くらいのデザインで展開してほしい。

Judge's comment: 遠山 正道

「うっかり買い」してしまいそうなデザイン。店頭で、刺身盛の船の上にディスプレてみても面白 い。フランス人が、思わずこれを大人買いして、パリの人々に配ったとしたら大成功!

Judge's comment: 林千晶

温故知新。一見古そうに見えて、じつは斬新。手に取らずにはいられない強さがを感じた。意気 揚々と大漁端を掲げる漁船や、活きのいい魚たちの姿まで想像できる、躍動感のあるデザイン。

瀬戸内いりこ


Title: 瀬戸内いりこ Creator: 松本 健一(日本)

Concept: 魚の新鮮さや、安心な素材であることを表現する為に、獲 れたての状態をパッケージデザインにそのまま落とし込ん だらどうかと考えました。 予算次第の提案ですが、ラベルの代わりに透明の袋全面 に、漁に使用する網を敷き、海から直接届いたようなデザ インです。 網いっぱいに詰まった魚たちから、瀬戸内海の豊かさ、自 然の恵みを感じてもらえるとうれしいです。 魚の種類によって、網の色を変えて展開することも効果的 なのではないかと考えています。

Judge's comment: 佐藤 卓

透明パッケージを網に見立てるアイデアに、「やられたな」と思った。中身を主役にしているので、 他の商品にもそのまま同じデザインを活用できるのがよい。

Judge's comment: 遠山 正道

「どこか見たことがあるようなデザイン」になりがちな作品が多い中、本作品は今まで見たことが 無いようなユニークなアイデアだった。

Judge's comment: 林千晶

網の中にたくさんの魚が入っていて、見ているだけでうれしくなる。こういう大胆なアイデアに出 会えるのは、公募ならでは。

わさんぼん讃岐の檸檬・讃州大黒


Title: 讃岐育ちお菓子 Creator : 寺井 茉莉子(日本)

Concept : そのままのデザインを活かし、瀬戸内の恵まれた気候を絵 にして配置しました。ガゼット袋には、素材を引き立たせる よう、絵を素材に近い色で配しました。 箱と袋はできれば箔押しで印刷をし、より高級で特別感の ある仕上がりにできればと考えています。

Judge's comment: 佐藤 卓

人を緊張させない良さがある。

Judge's comment: 遠山 正道

現代的なテイストがありつつ、若い人からお年寄りまで、幅広い層の人々に愛されそうな温かい デザイン。

Judge's comment: 林千晶

くつろぎの時間にいただくお菓子なので、やわらかい雰囲気がぴったりだと思った。

にんにくいりこ味噌


Title: 四国のかお Creator : 坂井 朋代(日本)

Concept: ニンニクは匂いをおさえるように工夫されているとのこと なので、あまりにんにく感を感じさせず、若い層も気軽に手 に取りやすいデザインを試みた。 四国の香川産ということなので、それが明確に分かるよう、 四国のシルエットをポイントにシュールなキャラクターを表 に配置した。顔のパーツが商品の素材のにんにくといりこ になっている。 文字どおり、四国の顔のような商品になってほしいという 願いを込めた。表面はおしゃれ感を出したかったので極力 説明を避けアイコン化し、そのぶん裏面では商品の説明を 配置するようにした。

Judge's comment: 佐藤 卓

モノトーンでシンプルに仕上げているが、すごく記憶に残る顔。また、香川だけじゃなく「四国のか お」と言い切ってしまう思い切りの良さもいい。

Judge's comment: 遠山 正道

顔の輪郭がないのに、輪郭が目に浮かぶようなデザインが面白い。

リセノワール

Title: リセノワール Creator: 黒柳 潤(日本)

Concept : 「米の花」をコンセプトに、古・代・米・カ・風・土・人・勇・心・ 美......などのリセノワールというお酒を表す一文字一文 字を集めて「生命力」を象徴する唐草文様として瓶全体に まとっています。植物のように変形した文字の集まりは、 各々新しい結びつきが現れながら、力強く「発酵」していく 模様を呈しています。

Judge's comment: 佐藤 卓

通常のお酒の瓶には商品名が「どかん」と入りがちだが、そうではないデザインが新鮮でおもしろい。

Judge's comment: 遠山 正道

お米というより花を彷彿とさせる、華やかなデザインに惹かれた。

Judge's comment: 林千晶

女性の視点から、ダントツで「これだ!」と思いった。華やかさ、美味しさ、このお酒を飲むときの楽 しさが想像できる。

丸亀うちわ


Title: 瀬戸内ビーナス Creator: カヤヒロヤ(日本)

Concept : 誰もが認識しやすい、ビーナスの誕生の絵画をモチーフに 穏やかな瀬戸内の風と、それを受けるビーナスというテー マにて制作しました。瀬戸内国際芸術祭ということもあり、 これから生まれる芸術=誕生という意味を持たせています。

Judge's comment: 佐藤 卓

表情がかわいらしくて、「すごく変」なところがいいですね。


Title: ハナサカナ Creator: 熊谷 英之(日本)

Concept: 魚たちが瀬戸内の海で、元気に泳ぐ様子を花火のように 表現しました。 芸術祭に華を添える花火が打上ります。 たーまやー。

Judge's comment: 林千晶

瀬戸内海の魚×夏の花火という組み合わせがユニークかつさわやかに描かれている。


Title: 蜜柑 Creator: naginohi

Concept: 瀬戸内のあたたかい日差しの中でいっぱいに実った蜜柑 を表現したデザインです。香り豊かな蜜柑に、小鳥たちも 元気に集まってきます。

Judge's comment: 林千晶

素朴なデザインの中に、瀬戸内の蜜柑の甘酸っぱさが表現されている。


Title: 夕陽とお山 Creator: Gustav Klim

Concept : 『何、これ?』 『日本一綺麗な夕陽(誇り)と 平地からぼこぼこたんこぶみたいに突き出したあの独特 のお山(アイデンティティ)、それに風力やね。」 『え!瀬戸内ってそんなに風強いの?』 『いやいや、この団扇。全然違うで!』

Judge's comment: 遠山 正道

すごくきれいです。自分だったらこれを持って帰りたいなと思いました

作品賞

今回、惜しくも採用を逃しましたが、非常に高く評価された作品。

kaorimix《瓦せんべい》
平野達郎 《にんにくいりこ味噌》
本田 篤司 《riceenoir》
小技(kowaza)《人魚》




審査員からのメッセージ

佐藤 卓さん

今回は特に練られた作品が多く、また、一般的なマーケティングのやりかたではなかなか生ま れないような、ユニークな提案が数多く含まれていた。作品の充実ぶりから、応募者のみなさ んが過去のRooootsプロジェクトで形になった商品を参考にしつつ、きちんと学習しているこ と伝わってきた。採用された作品たちも実にバラエティに富んでいて、そこが瀬戸内らしい。今 から出来上がりが楽しみ。

遠山 正道さん

応募作品のレベルが高く、選考も最終的に落ち着くべきところに落ち着いたと感じている。デ ザインの見た目だけにとらわれることなく、売り場の様子や買われるシーンまでイメージしな がら選考できたのがよかった。

林 千晶

Rooootsプロジェクトの公募には毎回、直感的に「これは行けそう」という提案が必ずあり、実 際にそれらが成果を上げてきた。4度目を迎えた今回の公募でも、やはりワクワクできる新し いアイデアや発見があった。応募者のみなさんがRooootsに対し、いつも新鮮な気持ちで向き 合ってくれているということが、とても嬉しい。

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