YouFab Global Creative Awards 2020 結果発表
YouFab Global Creative Awards 2020 全受賞作品を発表いたします。
185点の方簿作品の中から、今年のテーマ「Contactless(by default)」を体現する12作品を選出、グランプリ他、各賞を発表します。
ファイナリストや詳細はYouFab Global Creative Awards 2020 結果発表サイトへ
グランプリには名和晃平氏デザインのトロフィーも授与
Grand Prize
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Judge’s comment: Kampire Bahana(DJ)
私がこの作品を選んだ理由は、ファッションは私たちがまだ取り組み始めたばかりの持続可能な未来への到達を探求できる領域だからです。これからの未来で可能になるかもしれないことを、スカーレット・ヤン氏のような新しいデザイナーやアーティスト達が、作品や研究を通して見せてくれることを私を含めた社会全体が期待しています。
ファッションのサスティナビリティは、世界で最大の中古織物市場を持つ地域に住む東アフリカ人としての私の心と密接な問題でもあります。企業が持続可能性や環境について考えることがまだまだ十分でない状況で、ヤン氏のようなデザイナーは、未来がより良い方向に、美しく、実現可能であることを私たちに示してくれています。
First Prize
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Judge’s comment: Steve Tidball(Vollebak CEO / 共同創業者)
クレマンス・アルタベゴティ氏の「静寂の地図」にはとても神秘的な魅力があります。
パンデミックの最中に都市に住んでいる人なら誰でも、通常は騒音で満たされた場所に沈黙が降り注ぐことに気付くでしょう。しかし作家はそれをマッピングすることによって、その観察を本当に美しいものに変えてしまいました。
作品の視覚的なクオリティだけでも賞賛に値します。
作品の場所によっては古い石版画のようにも見え、また別の場所は水銀や火に見えます。しかしその本質は作品の見た目の美しさのみならず、目に見えないものを目に見える形にし、テクノロジーを使って美学を見出すというアイディアにあります。またこのアイディアは、一連の静止画よりも動画に大きな可能性を秘めています。
パンデミックによってもたらされた静寂は、立ち止まり、耳を傾け、考えるための時間を生み出しました。
このアイディアがパリ、ニューヨーク、ロンドン、東京やその他でライブの映像に変換され、人々が世界の静かな場所を見つける手助けとなることが容易に想像できました。
Special Prize
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Judge’s comment: 佐藤 勲(東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部データストラテジー部門 部長)
私たちの日常的な移動手段として「歩行」がありますが、今日の人々の健康志向の高まりにより「歩行」に対する価値観は大きく変化しました。本作品は、単なるフットウェアという概念を超え、内蔵された空気圧機械システムにより歩行にかかる力を最大12%軽減できることから、鉄道駅から目的地までの二次的移動の概念を変えるツールになると考えました。さらに、このフットウェア活用により駅周辺のコミュニティを形成するツールにもなり得ると考えています。さあ、皆さんで本作品により新たなモビリティの世界へと一歩踏み出していきましょう。
Special Prize
タイトル
S.O.S-Solution Of School-urban plug-in!!
Creator
Jhih Shuan, Wu / Jun-Hao, Hsiao / Han-Lin / Kai-Ting, Wang / Yu-Chiuan, Chen
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Judge’s comment: 影山 裕樹(編集者、文筆家、メディアコンサルタント)
都市における移動を考える際、人の移動、モノの移動(ロジスティクス)のほかに見落とされがちなのが、「情報の流通」という視点だ。大都市のターミナル駅は人種や階層の異なる多様な人が行き交うが、彼らが互いに対話し理解しあう機会を提供できていない。地域住人が大人も子供も一箇所に集まり交流し知己になることではじめて「目に見えない人と人のつながりのマップ」が互いの脳内に刻まれる。地域課題に向き合うグループが、高齢化し形骸化した自治会などの既存の地域団体しかない現状において、言わば「脳内の路線図」のような、課題解決のいとぐちとなる新しい「情報網」を育むことが重要だ。
コロナ禍において地域から隔絶された屋内の空きスペース等で教室等が開きにくい今、屋外に仮設の教室を作り出すことのできるこのプランは、ソーシャルディスタンスを保つといった利点以外にも、地域住人が互いに知らなかった人と人の関係性を可視化する絶好の「ディスプレイ」としても機能するはずだ。
Student Prize
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Judge’s comment: 小川さやか(立命館大学先端総合学術研究科教授 文化人類学者)
Sherry Shao氏のWindowsは、ごくふつうの窓を使った物理的/マルチモーダルなコミュニケーションの可能性を追求することにより、COVID19禍中の/後の世界を展望している点で独創的なものとなっています。
この作品では、屋内と屋外とを隔てるガラスにすぎない窓が、COVID19渦中で隔離された人々の希望の象徴へと転換されています。恋愛小説やマンガ、映画などで描かれる窓越しのコミュニケーションのように、文化史において窓は、ロマンスや情熱と深くかかわってきました。本作品は、そのような窓の文化的な価値を、パンデミックの状況下に対応する、マルチモーダルな仕掛けへとアップデートしたものだとも言えるでしょう。
ただし、この作品のテーマは、パンデミックという限られた状況をはるかに超えています。都市化や仮想現実化の進展にともない、リアルな連帯の欠如が世界的な問題となってきました。都市社会では、隣人の顔を知らないことも不思議ではありません。仮想空間では、数多くのアバターと共在しているにもかかわらず、孤独を感じることがあります。現代社会では、リアルな社会的絆を再構成する必要性を認識しながらも、社会に踏み出すことができない「引きこもり」も数多くいます。
Windowsは、「ひとりでいながら、ともにいる」ことを可能にする、そのシンプルで創造性にあふれ、楽しい仕掛けにより、これらの現代的な課題に対する解決策を提案しています。まさに個人に安心感を与え、具体的な社会的絆を強化しうる作品です。
このような理由により、審査委員会は、COVID19の状況に立ち向かう、シンプルでありながら力強い作品である、Sherry Shao氏のWindowsにStudent Awardsを授与します。