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PHANTAZUMA

PHANTAZUMA(ファンタズマ)は、同じ劇場で同時に舞台を観ているにもかかわらず、観客の座席位置に 応じて異なるものを観賞できる演劇作品の実現に先立ち、一般的な劇場の約1/30の縮尺のミニチュア模型
で制作した舞台機構である。本作品では、中央からは女性のみが観賞できるが、右側(上手側)から観賞 すると女性の背後に男性が、左側(下手側)から観賞すると椅子の上に首のない男性が現れる。このよう に見る角度に応じて登場するキャストが異なるといった超常的な観賞体験を可能にし、同じ舞台作品で あっても物語の解釈が変化させられる。本作のシステムは2つの舞台空間の間にハーフミラーを隔て、片方 の舞台上の物体を半透明の反射像としてもう片方の舞台に重畳させるペッパーズ・ゴーストの原理と、視 線方向に応じて透明度が変化するプライバシー保護のための建築素材である視界制御フィルムとの組み合 わせで成り立つ。つまり、視界制御フィルムによって特定の方向からのみ反射像(ゴースト)が観賞でき る。さらに、視界制御フィルムをモータに取り付けて主導的に角度制御することで、所望の観客位置に対 してゴーストの可視・不可視を切り替えられる。以上により、これまでにない観劇体験を実現する意味を 込めて古代ギリシャ語で幽霊を指す”phantasm”と自身の名前をかけ合わせた名をつけた。

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