砂の形とはどういうものだろうか。
一粒一粒を見ると、それは砂というより縮小した石のように思えた。全体を見ようと、地面に広がっているものや川の底に沈んでいるものを想像すれば、曖昧な形をしていた。砂の形が定まるときといえば、コンクリートの原料になって人工的に四角などに形作られた時であった。
砂のような粉体を上から落下させたとき、自発的に崩れることなく安定する粉体の斜面と水平面との限界角度を「安息角」というらしい。
この作品は、安息角を用いて様々な種類の砂を積み上げ、空間全体に配置したものである。それぞれ砂の粒の大きさや丸さなどによって、積み上がる最大角度は決まる。砂のこんもりとした形には水や凝固剤は使われておらず、砂の粒同士の力の支え合いによって安定している。
ここで私たちは、形の捉えきれなかった砂の自然な輪郭に出会う。砂の安息角を眺め、砂の円周を漂い、砂の砂らしい形の優しさと強さを身体で受け取るのである。
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2020/12/20(日) Updated