CREATIVES

  • 57

RECONSTRUCT

建築や都市は私たちにとって不透明である。道路に壁、床、天井の奥には私たちの知らない世界が広がっている。日々、目に映る景色に潜む身近で遠い存在を可視化することはできないだろうか?そんな疑問から当たり前の生活を疑い、新たな問いを生み、物語を紡ぐことに決めた。断熱や防音機能を担う素材としてグラスウールがある。ガラス繊維の綿であるグラスウールはFRPで使用されるグラスファイバーとは厚みが異なる為、少し変わった樹脂の染み込み方をすることが実験を重ね分かった。さらに樹脂の浸透度や綿の厚みを変えることで大理石のようなテクスチャーを作り出すことに成功した。また、綿としての特性を活かし、型に凹凸を与えてできた3次曲面は革のようにも見える。「RECONSTRUCT」は新素材を再定義する。ここで使用したグラスウールは実際に解体現場の廃材や工務店に眠っていた在庫となったものだった。古材として扱われずに廃棄の一途を辿るグラスウールが新時代の古材として再利用されることは私たちが未来に必要な行為であると私は提起する。何気ないゴミが新素材としての可能性をグラスウールと同様に秘めていることを示唆すると共に、消費社会を生み出した資本主義を否定する一つのアイコンとしてもこの椅子は存在する。都市の中で分解されたマテリアルを再構築し、共に生きる。生活の中で目に触れることのない素材が私たちに関わることなく廃棄されてゆく。この椅子は不透明であった建築と私たちを繋ぐ一つのきっかけになるだろう。私はこの椅子に「RECONSTRUCT」という「再建」という意味の名前を付け、ある願いを込めた。ものづくりは今、窮屈な社会のシステムの中で大きな変化を求められている。この椅子はマクロな都市の視点を持ちながら生活に寄り添うミクロな側面を併せ持つ。モノの寿命は私たちよりはるかに長い。更新され続ける都市やモノのポテンシャルは廃棄や分解以上に残り続けていってしまうことを知る必要がある。現状の意識を再認識し固着した考えを破壊し、今までのシステムに疑問を持ち再構築させるだけの力があるだろう。「RE:CONSTRUCT」は私たちが見落としている認識の隙間に存在し、問いを今も投げかけている。

前へ