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作品タイトル(日本語)
Transpective -越景-
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作品タイトル(英語)
Transpective
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制作物のコンセプトを記載してください。
Transpectiveは、モルフォ蝶が空を舞うように、みる角度によって移ろう色の壁面。
この作品ないしこれをつくるための創作手法は「装飾の解放」という命題から生まれた。
大量生産・大量消費社会における製造現場では効率化を図って製品の規格化が行われ、工数を増やさないための装飾の排除がなされてきた。ミニマルデザインはこのような背景から台頭してきたが、3Dプリンティングはここに別解を出す可能性をもつのではないだろうか。
私たちが本作において提案するのは、3Dプリント技術を活用して造形と着彩の二つの工程を統合する"積彩製法"。3Dプリンタに読み込ませる設計図データの中に形状のみならず色彩の情報も組み込むことで、調色しながら形を積み上げていくことができる。これにより工数を1つにすることで生産効率を担保しつつ、人の手では塗り分けられないような細やかな配色を可能とし、みる角度によって色が変化するという過剰ともいうべき装飾を作り出したのである。
積彩製法においてはどれだけ細やかな模様や色の設計が増えようがデジタルデータのバイト数が増えるだけで工数にはほとんど影響がないため、生産工程のミニマイズとマキシマムな装飾が両立し得る。Transpectiveはこの(デジタル)マキシマムデザインとでも呼ぶべき新しいものづくりへの移行を示す挑戦でもある。
また、生産工程がいかにミニマイズされているかに関しては、コロナ禍において工房に集まれない私たちが各自宅の机の上に置いた3Dプリンタでパーツを分散的に作り、最後は持ち寄って合わせることでこの作品が完成していることが一つの根拠にならないだろうか。 -
制作物のコンセプトを記載してください。(英語)
Transpective is a 3D printed wall that color shifts depending on the angle of view, like a morpho butterfly fluttering in the sky.
This work and the creation method was born from the proposition of "liberation of decoration”.
In a society of mass production and mass consumption, products are standardized in order to improve efficiency, and decorations are eliminated in order to avoid increasing man-hours. "Minimal design" has emerged from such a background, but 3D printing may have the potential to provide alternative solutions.
In this work, we propose "sekisai (積彩)”, a method that integrates the two processes of forming and coloring by using 3D printing technology.
By incorporating not only the shape but also the color information in the blueprint to be loaded into the 3D printer, the shape can be built while coloring and ensures production simplicity.
At the same time, it allows detailed, intricate coloring that cannot be applied by hand, resulting in the exuberant decoration where the color changes depending on the angle of view.
In this process, no matter how many detailed patterns and colors are designed, the number of bytes of digital data only increases and the production efficiency is almost unaffected. Transpective is a challenge to show the transition to a new type of manufacturing, which can be called "(digital) maximum design”.
As for the minimization of the production process, the fact that this work was created even during the pandemic of COVID-19 when workshops were not functioning should demonstrate this. Pieces were homemade on individuals’ desktop printers and assembled for completion at the end. -
作品の素材・仕様
1300mm(W)*800mm(H)*200mm(D) / 16kg / material:PLA / 3D Printing
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作品の素材・仕様(英語)
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作品のリファレンスURL
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作品の映像URL
https://vimeo.com/597080899
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公式サイト、もしくはSNSのURL
https://sekisai.com/
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特別賞のテーマにどう作品が関連しているか説明文を記載
歴史の中で装飾は権力の象徴として扱われてきた。
それは、豪華な装飾を施すためには相応の技術と手間が求められ、美しい装飾の裏にはそれを支えるだけの莫大な資本力が必要だったためである。
しかし積彩製法によるマキシマムデザインは装飾を大衆化・民主化し、誰もがくらしと共に豊かな色彩や模様を手に取ることができるようになる未来を描く。もっと自由に、もっと豊かに、もっとカラフルに。私たちはもっと色と遊んで、対話して、暮らしていくことができるはずだ。
平安時代の宮中では、四季の移ろいによって風景が色づいていく様子に合わせて、女性たちは自らの着物の配色を変化させていた。色を選ぶという行為は彼女らにとって世界との対話・親和を図ることだったのである。
Transpective。越景。これは「色との対話」をくらしに取り戻すための一つの投げかけである。
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Transpective -越景-
Transpectiveは、モルフォ蝶が空を舞うように、みる角度によって移ろう色の壁面。
彼方では誰かが青だといい、此方では誰かが赤だという。
思うに世界は、正面の存在しない、無数の側面のみで構成される複雑な立体形なのではないだろうか。
彼方此方(あべこべ)だと思われた世界は、越境してみることによって、なんてことのないひとつなぎの起伏であったことに気づく。
彼方では誰かが青だといい、此方では誰かが赤だという。
思うに世界は、正面の存在しない、無数の側面のみで構成される複雑な立体形なのではないだろうか。
彼方此方(あべこべ)だと思われた世界は、越境してみることによって、なんてことのないひとつなぎの起伏であったことに気づく。