CREATIVES

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人核―胎動―

 この造形物は私の精神世界を表している。中心となる六角柱から伸びた六つの壁面は具体的な空間を表すものではなく、その占める領域は決して同じ分量ではない。上下左右前後時間空間を超えて高く、果てしなく、超えられない私のバラバラの人生の経験たちを象徴したものである。六角柱本体の上部は51cmのところで終わっているように見えるが、これはどこまでも高いということ示唆している。また壁面は途絶えているように見えるが、これも横方向に永遠に伸びていることを表し、この壁の縦と横によって私の今までの人生経験が融合しないでいたことを示した。さらに同様に六角柱の下部のように見える台座との接続部に3段の階段を設けることで、高さというものを無意識的に認知させることを目指している。4枚の台座は六角柱が配置されたものを中心とし、中心以外の3枚は内側からほとばしる血潮で表面が波打ち、中心の台座では内側からの圧がさらに強くなり、皮がパンと張るように表面が伸びきっている。この分断された全ての領域が、今にも溢れそうな内側から湧き出す血潮によりひとつに統合されようとしている。この私の人生の経験を統合させていく血潮が、私が私のために初めて選択した作陶である。六角柱上部には辰砂釉を施し、私の内部にあった他人に支配されてきた人生を指す青い静脈を表現し、内部の奥の方から自分自身を指す動脈の血のように赤いものが今にも溢れてくるように見せている。やがて全ては赤により融合されていく。間もなくひとつになろうとしている人核の胎動を模した造形は、現在の私の精神世界の象徴である。

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