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作品タイトル(日本語)
人核―胎動―
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作品タイトル(英語)
Nucleus of me-the human beginning-
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制作物のコンセプトを記載してください。
現在の自分を、世間に認めていただきたく、自分のために作りました。私は両親から自分自身身一つでは存在価値がないという刷り込みを受け、他人のために生きていました。そのため自分の方向性を決定できない自我障害になっていました。ずっと他人のために生き物のために星のために砂漠緑化、環境問題解決などを目指し、国際農業開発学、生物資源学、バイオシステム学を学んでいました。その結果18年前、何の仕事に就けばいいのか分からず、就職活動時代に多大なストレスを抱え込み、精神疾患のひとつである統合失調症を発症しました。幻覚や妄想はなく、代わりに脳内の神経伝達物質のひとつであるドーパミンを作り出すことができず、活力が落ち、生きているのか死んでいるのか分からないような状態になりました。ありのままの自分とは何だろう。ありのままの自分で生きていきたいと思うようになり、自己表現として陶芸を始めました。陶芸は私を私だからという理由で受け入れもするし、拒みもする。それは全くもって自分を見つめる行為です。この作品では、私が抱えていた基礎疾患である統合失調症、親に愛されないことやいじめなどの悲しい過去、自己肯定感の低さなどの自分の問題を壁に分断された人格として表現し、その全てを陶芸が凌駕し、本当の私の価値や私らしさを発見させてくれている今の一歩前の精神世界を表現しました。私は空っぽなんかじゃない。ただ活かされてなかっただけ。過去の全てが現在の私のパワーになり、私を作り出している。自分にやりたいことがあり、それに取り組めている現在は、自分を生きている感覚に満ち、本当に幸せです。ヒトは多種多様であり、千差万別です。だから、それぞれに価値がある。私にとっての陶芸のように、世界が環境問題やコロナ災害を解決するために、責任のなすりつけ合いをするのではなく、全体主義になる価値のある共通課題を認めることが重要であると考えます。
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制作物のコンセプトを記載してください。(英語)
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作品の素材・仕様
陶芸作品である。寸法は縦51cm×横51cm×奥行51cm。重量12.8kg。使用した粘土は益子水ひ土。中心となる六角柱は石膏型の押し型成形、六角柱から伸びる壁面と台座となる4枚の板状の粘土はセラローラーで成形。4枚の台座のうち3枚は、表面に粘土を水で溶いたものを塗布した。残り1枚はセラローラーで板状にした粘土をそのまま使用した。六角柱の下部に位置する3段の階段は、タタラ成形。焼成は還元焼成でゼーゲルコーンのSK9が完倒する温度、最高温度1280℃で行った。釉薬は全体に自分で調合した石灰ジルコン釉をコンプレッサーで吹き付け、六角柱の上部には辰砂釉を施した。
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作品の素材・仕様(英語)
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作品のリファレンスURL
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作品の映像URL
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公式サイト、もしくはSNSのURL
https://www.instagram.com/ajiujinyoulihui/
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特別賞のテーマにどう作品が関連しているか説明文を記載
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人核―胎動―
この造形物は私の精神世界を表している。中心となる六角柱から伸びた六つの壁面は具体的な空間を表すものではなく、その占める領域は決して同じ分量ではない。上下左右前後時間空間を超えて高く、果てしなく、超えられない私のバラバラの人生の経験たちを象徴したものである。六角柱本体の上部は51cmのところで終わっているように見えるが、これはどこまでも高いということ示唆している。また壁面は途絶えているように見えるが、これも横方向に永遠に伸びていることを表し、この壁の縦と横によって私の今までの人生経験が融合しないでいたことを示した。さらに同様に六角柱の下部のように見える台座との接続部に3段の階段を設けることで、高さというものを無意識的に認知させることを目指している。4枚の台座は六角柱が配置されたものを中心とし、中心以外の3枚は内側からほとばしる血潮で表面が波打ち、中心の台座では内側からの圧がさらに強くなり、皮がパンと張るように表面が伸びきっている。この分断された全ての領域が、今にも溢れそうな内側から湧き出す血潮によりひとつに統合されようとしている。この私の人生の経験を統合させていく血潮が、私が私のために初めて選択した作陶である。六角柱上部には辰砂釉を施し、私の内部にあった他人に支配されてきた人生を指す青い静脈を表現し、内部の奥の方から自分自身を指す動脈の血のように赤いものが今にも溢れてくるように見せている。やがて全ては赤により融合されていく。間もなくひとつになろうとしている人核の胎動を模した造形は、現在の私の精神世界の象徴である。