CREATIVES

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Elsewhere

日本画の制作においては、写真を見て描くことは忌避される。実際に題材となる場に赴き、時間をかけてスケッチする中で周囲の環境を身をもって体験する過程があるからこそ、描かれた情景は説得力を持つ。
だが、ここに描いた地平線の彼方まで広がる砂漠の、空気や熱を私は感じたわけではない。というより、地球上のどこを探してもこの場所は存在しない。ゲームエンジンでデモシーンを開き、それを模写しただけだからだ。
しかし、スマートフォンが我々の見る風景を文字通り変えてしまい、人工知能によって生成された画像と現実との見分けがまったく付かなくなっている今、「リアルであること」の定義は揺らいでいるのではないか?この絵に少しでも真に迫ったものを見て取るならば、あなたは「リアルさ」の意味を問い直さねばならない。

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