九相図は、仏教的価値観に基づき死体に起こる変化を特徴的な段階ごとに描き出した絵画である。
死をフェーズ化して捉える九相図は、状態から状態へのジャンプを基本的な単位とする「デジタル」と接合される。現在とこれまでを規定してきた仏教的価値観と、現在をこれからへ牽引するデジタル的思考。ふたつの思考の「クセ」を混ぜた映像こそがデジタル技術を用いて九相図を再解釈した本作である。
九相図はひとびとに無常感を与えていた。では、死にかかわる問題を遠ざけようとしていると言われる現代人に対して「あだしののモルフェウス」がもたらすものとはなんだろうか。
3D映像での表現は死体を匿名の存在として表象することでより広範な死についてのコミュニケーションを可能にする。
例えば本作は、私たちが考えないようにしている死のダイナミズムを示す。この強い進行のイメージは、周囲がそれと知らぬまま九相図と同様の段階をたどる孤独死を連想させる。
[説明動画]
https://drive.google.com/file/d/1jN10pPtC0-1YrX6sD92ZSXuMCaLwKdYF/view?usp=sharing
4つのメイン画像: 動画「あだしののモルフェウス」より
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2024/05/24(金) Updated