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響きのゆくえ

発泡スチロールやビニール、ダンボールの音、少し遠くに聴こえる鳥の声、BGMに流れる歌謡曲。朝市に響き合うこれらの環境音の中から、私には馴染み深い長崎弁で交わされる男女の会話が浮かび上がります。内容はおそらく女性側のご夫婦について。

女性の伴侶のご家族の話から始まり、馴れ初めまでを語ったあと、それを聞いた男性が「若い時には大分苦労しとるねぇ」と締めくくります。

私は『会話』について考えました。この朝、この場所の何かひとつでも欠けていたら、この会話は生まれなかったかもしれません。そこで私は、会話の音を無加工のまま配置し、偶発的に響く前述の環境音に呼応するようにシンセサイザーの音を置いていく方法で作曲に取り組みました。さらに、米海軍基地の音など、距離が近い場所の音も混ぜました。

この方法での作曲は初めてでしたが、環境音に似た音を作ったり、それに応えるように音を重ねていくうちに、自分でもどこからが環境音でどこからが自作音なのかわからなくなり、まるで自分が会話や空気に溶け込んでしまったような、なんとも不思議なセッションが生まれたと感じています。

https://on.soundcloud.com/N78XBexwHhcMzS9xoT

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