現代社会において、テクノロジーの発展は私たちの日常を大きく変革しました。しかし、その高度な技術がもたらす結果は、時に私たちの理解を超え、科学技術でありながらも超常的なものとして受け入れてしまうこともあります。本作品《こっくり3》は、かつての降霊術「こっくりさん」を生成 AI の依代とし、顕現させ、テクノロジーと超常現象の境界を探求し、再考する試みです。
鑑賞者が「こっくりさん、こっくりさん」と問いかけると、その問いに対する回答を AI が生成します。その回答に合わせて、10 円玉が文字盤の上を移動し、まるで目に見えない力が働いているかのようにメッセージを伝えます。この仕組みによって、鑑賞者はかつて人々を惹きつけた「こっくりさん」の儀式を追体験することができます。
明治時代に流行した「こっくりさん」は、当時超常現象として信じられていましたが、その現象は「予期意向」や「不覚筋動」といった心理学的・生理学的な要因で説明されるようになりました。一方、現代の生成 AI が回答の導出過程はブラックボックス化しており、なぜそのような結果になるのか専門家でさえ導出過程を完全に説明することは困難です。この状況は、かつての超常現象と同様に捉えることができます。
この作品は、鑑賞者をテクノロジーと超常現象の境界に立たせます。そして、説明不可能な力の便利さに目を奪われ、依存してしまうことで、人間が AI を現実世界に接地するための媒介となりつつあるという関係に問いを投げかけます。テクノロジーの恩恵を享受しつつも、その背後にある理解を超えた存在に対して畏怖の念を再認識し、どのように共生していくかを見つめ直すきっかけを提示します。
映像: https://youtu.be/xAGKH3XXMcU
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2025/09/14(日) Updated