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選択の揺れに触れる、香り 一感じて選んでしまう、その在り方についてー

その他
本作は、来場者が「どちらが正しいか」ではなく、
「どちらが今の自分に近いか」を、香りによって選ぶ体験型の作品です。

会場には、次の三つのテーマが設けられています。
• 安心と、ひらかれた感じ
• 懐かしさと、まだ見ぬもの
• 静けさと、動いている感じ

それぞれのテーマには、二つの香りが並びます。
提示される香りはいずれも心地よく、どちらが良い・悪いと判断できるものではありません。

来場者は香りを前に、少し立ち止まり、
迷いながら、理由を言葉にできないまま、
それでもどちらかを選んでしまいます。

選択のあとに、正解や解説は用意されていません。
なぜこちらを選んだのか、その理由を書いても、書かなくてもかまいません。言葉にならなかった沈黙も、ひとつの応答として残されていきます。

会期を通して、来場者それぞれの選択や、残された言葉、あるいは書かれなかった痕跡が、静かに集積されていきます。

香りは、本作において「判断を説明するためのメディア」ではありません。むしろ、判断が起きてしまうその手前の状態、人が理由を持たないまま感じ、迷い、選んでしまう場所に触れさせるための感覚的なメディアとして扱われています。

AIが最適解を提示し、効率的な判断が求められる時代において、こうした「揺れながらの選択」は、非合理なものとして扱われがちです。
しかし人間は本来、感覚や記憶、曖昧な気配に動かされながら、迷い、選び、関係を築いてきた存在でもあります。

人間という存在を手放すでも、肯定しきるでもなく、感じて選んでしまうという在り方を、ひとつの体験として差し出します。
その在り方にそっと触れることで、これからの時代をささやかに更新しようとする試みです。

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