CREATIVES

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いられるようにするための設備(カーミングスペース)〜鑑賞者のパフォーマンスと設備のもたらすパフォーマティビティ

その他
キュレーションした展覧会「同伴分動態」(BUG,東京,2025)において、実験的にカーミングスペースを設けた。本展に設けたカーミングスペースは、鑑賞に伴う刺激や緊張から一時的に距離を取り、「そこにいられる状態」を回復するための空間である。感覚過敏のある人、パニック障害や強い不安を抱える人、HSP傾向のある人、また親と一緒に来た作品鑑賞を望まない子どもたちや、その同伴者など、展覧会空間において居心地の不安定さを感じやすい鑑賞者の利用を想定して設計されていた。

この空間は、鑑賞を中断するための隔離場所ではなく、鑑賞体験の一部として位置づけられる。利用者はここで一人になることも、同伴者と共に過ごすこともでき、状態に応じて再び展示空間へ戻る、あるいは距離を保ったまま展覧会に関わり続けることが可能である。
重要なのは、そうした障害を感じる社会の中で生きる人々のうちには、保護者が同伴してくる場合が多いことである。それぞれが安全に鑑賞すること、待つこと、過ごすことを担保することを予期するということはこのアイデアを作る上で最も重要なことであった。
この空間は、当事者だけでなく、その保護者や同伴者も含めて、安全に鑑賞を続けること、あるいは一時的に一人になることができる場として、展覧会体験の中に組み込まれていた。私はこの取り組みに手応えを感じて、もう少し考えてみたいと思った。
なぜなら、「いることができる」という条件をどのように成立させるかは、私の専門であるパフォーマンス・アートの中心的な問いであり、その参照点は常に公共空間にあるからだ。

今回のプレゼンテーションでは、その実践の延長としてカーミングスペースを軸に据え、鑑賞に付随する刺激や緊張を測定・観察する。少数者の鑑賞体験を想像することから出発し、鑑賞者の行為(パフォーマンス)と、それを支える設備が生み出すパフォーマティビティの関係を研究することを目的としている。

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