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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
都市に光と影の両面をもたらしてきた「ラブホテル」を絶滅危惧空間として扱う。対象地は東京都渋谷区道玄坂二丁目に位置するラブホテル街であり、その象徴的な角地に建つ廃業ラブホテル「アラン・ド渋谷」を対象建築とした。角地ならではの視認性や特徴的な開口部、豊かな屋上空間といった建築的特徴を活かし、街に対して「開き」と「閉じ」の関係を持った新しいラブホテルの在り方を提案する。渋谷区再開発によって整理・均質化が進むなか、日本独自に発展し、古くから本能や欲望を受け止め、人間味ある街を育んできたラブホ街の価値を、「在るべき影」として未来へ継承することを目指す。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
ラブホテルは、再開発や社会的価値観の変化、老朽化などによって急速に姿を消しつつある絶滅危惧空間である。しかし私たちは、ラブホテルを日本独自に発展した建築文化であり、鬱屈した現代社会に残された希望の光だと捉えた。都市が均質化していくなかで、ラブホ街は欲望や匿名性、多様な人間関係を受け止め、人々の親密な関係を育む数少ない都市空間である。一方、調査を通して明らかになった特徴的な密集形態や複雑な権利関係、風営法による規制は、一般的な建築計画では課題として扱われることが多い。本提案では、それらを制約ではなく設計の契機として捉え直し、ラブホテル特有の建築形式や制度を再解釈することで、既存建築を活かした新たなラブホテルのあり方と、他ラブホテルへも展開可能なデザイン手法を導き出す。性への欲望は、人と人を結びつけ、新たな命や文化を生み出してきた人間の根源的な営みである。街へ開かれた「愛の建築」と、ふたりだけの「密室の舞台」という両義性を備えた新しいラブホテルは、人々が欲望に従って自由に振る舞い、親密な関係を育む「愛の居場所」となる。そして、都市から失われつつある「影」の価値を未来へ継承し、人と都市の新たな関係を育む建築となり得るのである。
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どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案では、ラブホテルらしさを継承しながら新たな価値へ転換することを目的に、「外観」「可変性」「舞台性」「動線」の4つを、ラブホテルを特徴づける建築的要素として抽出した。これらを設計の軸とし、既存建築を活かしながら風営法による制約を空間デザインへと読み替える。そうすることによって、「街とつながる愛の空間」と「扉を閉じれば二人だけの世界が広がる空間」という両義性を備えた、新しいラブホテルを提案した。具体的には、風営法によって設計できなくなっているラブホテル特有の「煌びやかなネオン」「性的装飾」「客室直通動線」を、法制度の範囲内で現代的に再構成する手法を考えた。建築を規制へ適応させるのではなく、規制そのものを設計の契機として読み替えることで、ラブホテル固有の空間体験を継承する。例えば、風営法に抵触する客室直通動線は、ラブホテル建築特有の1階セットバック空間へフロント機能を滲み出させることで、法的要件を満たしながら客室へ直接つながる動線を可能にしている。また、「煌びやかなネオン」を継承するため、建築の外装には反射性の高い素材を多用し、夜間には都市に広がる車のテールランプや居酒屋の光を映し込み、その煌めきを纏う建築とした。対象建築である「アラン・ド渋谷」が持つ角地の高い視認性、特徴的な開口部、豊かな屋上空間も積極的に活用した。これまで閉ざされていた1階と屋上を都市へ開放し、新たな公共空間を挿入することで、都市に対する「開き」と「閉じ」の関係を再構築する。さらに1階と屋上を開放したラブホテルが密集することで、街の地面と空に新しい風景を作りだす。街に開かれた居場所と、親密性を守る密室が一つの建築の中で共存する構成は、ラブホテルだからこそ実現できる新たな体験を生み出す。さらに、本提案で示した4つの設計手法は、個別建築の意匠ではなく、ラブホテルに共通する建築的特徴の分析から導いたデザイン手法である。そのため、「アラン・ド渋谷」に限らず、全国各地で増加する廃業ラブホテルへも展開可能であり、既存ストックを活かした再生手法として社会実装できる。現在、廃業したラブホテルの多くは宿泊施設や住宅、商業施設へ用途変更され、ラブホテルという建築形式そのものは失われつつある。しかし本提案は、その形式や空間体験を継承しながら、新たな公共性を獲得することを目指す。欲望や匿名性といった都市から失われつつある「影」の価値を排除するのではなく、「愛の居場所」として都市へ組み込むことで、一つの建築からラブホ街全体へと波及する新しい再生モデルを提示する。
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愛と世界とラブホテル
本作品は、日本独自の「愛の建築」ラブホテルを題材に、現代社会における「愛のかたち」を問い直す設計提案である。欲望や親密な関係を素直に表現しながら生きることが難しい現代に、「人々とのつながりから生まれる開かれた愛」と、「愛する二人だけが共有する親密で閉じた愛」という両義性を持った、新たなラブホテルをデザインする。
