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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案では、都市の建築に付属する避難階段を扱う。避難階段は高層建築の増加とともに都市に無数に存在しているが、その多くは建物の裏側や隙間に配置され、非常時以外ほとんど利用されない。私は避難階段を工場で生産された均一的な「製品」ではなく、都市の裏側に潜む環境の象徴として捉える。具体的な対象として、広島市八丁堀地区に存在する避難階段群を取り扱う。戦後の焼け野原となった環境に建てられた高層ビルが高密度に建ち並ぶこの地域には、多様な形態や環境をもつ避難階段が数多く存在しており、都市に埋もれた空間の可能性を読み解く格好のフィールドとなっている。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
魅力的な都市空間を構成するものは綺麗な高層ビルだけではなく、それらを構成するウラの空間が存在する。例えば避難階段。避難階段は建築の一部でありながらも人間によって魅力的にデザインされたものではなく、法規によってデザインされた、最も意匠からかけ離れた存在である。
避難階段は高層建築の増加とともに都市の至る所に設置されている。つまり物理的には増え続けている空間である。しかしその一方で、避難階段は「避難設備」という単一の役割に回収され、日常的に利用されることはほとんどない。一定の規模を有する建築に取り付けられる避難階段は都心のペンシルビルでさえ数十㎡という絶対的な面積を占めている。
”絶滅危惧空間”を、存在しながらも利用されなくなってしまった空間だと捉えるならば、都市の中に大量に存在しているにもかかわらず、人々から認識されず、空間的価値が忘れられている避難階段は、真の意味での絶滅危惧空間であると言える。これは大きな問題である。個体数は増えているにもかかわらず生態的な役割を失った「意味としての絶滅危惧状態」なのだ。
しかし、避難階段は都市のあらゆる場所に存在しながら、一つとして同じものはない。隣接する建物や用途、光や風、人の流れによって、それぞれ異なる環境を獲得している。都市の裏側に潜む多様な空間の可能性を読み解く上で、避難階段は最も身近でありながら見過ごされてきた存在なのだ。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案は避難階段の用途を変更するものではない。避難階段に付与された「避難設備」という記号を剥がし、都市に潜むひとつの地形として再発見する試みである。
現代都市には無数の避難階段が存在する。しかしそれらは決して均質な存在ではない。建物の隙間に挟まれたもの、交差点に面したもの、屋上へと伸びるものなど、それぞれが周辺環境との関係によって固有の性質を獲得している。私はそれらを工業製品の反復ではなく、都市という生態系の中に棲む個体群として捉える。
そこで本提案では、まず避難階段を機能や用途から切り離し、形態・光・風・視線・高低差といった環境的特徴から読み直す。動物が森の中で棲み処を見つけるように、人間もまた都市の地形から行為の可能性を読み取っている。対象である避難階段は「ある」のではなく既にそこに「いる」のである。避難階段の変異は、この潜在的なアフォーダンスを動物的視点から顕在化させることで始まるのである。
例えば、狭いビルの裏空間に取り付けられた避難階段の踊り場が持つ滞留性・淀み・暗さを増幅して小さな居場所や現代的な茶室だと捉えてみる。わずかなすき間から見えてくるオモテの世界とまぶしい空の煌めきはまさに現代的なさびの空間と言えるだろう。
建物の隙間に挟まれた片持ち直階段はまるで谷のようだ。上から降ってくる光と目の前に迫るのっぺりとした隣のビルの壁に着目しこの場所にライブラリーをいう機能を与えてみる。
大通りの交差点に面したマンションの芸術的な曲線を描く階段で突如始まった演劇。交差点の横に計画した広場はその瞬間、周囲を巻き込んだ、見る/見られる劇場へと変異する。
それぞれの計画は単に新しい用途を与えるのではなく、その場所に既に存在している環境的特性を増幅する操作である。
ビルのウラ空間にあふれる、単体だと使われない避難階段は群れとなって相互を連結する路地を形成する。車がせわしなく走るオモテの空間が動脈であるとすれば、ウラに作られる細い路地空間はバックヤードや関係者のみが日常的に利用する都市の毛細血管である。
路地空間は避難階段を介して屋上まで連鎖反応を起こしていく。31mを基準に作られる都市のビル群は高さのそろった屋上に新たな大地を生み出す。ビルを利用する人が複数のビルをまたいで屋上を闊歩する様子はまるで都市的な回遊式庭園だ。
重要なのは、一つの大きな建築をつくることではない。都市に無数に存在する小さな絶滅危惧空間が、それぞれの環境に応じて異なる変異を獲得し、その変異が都市全体へ波及していくことである。本提案は避難階段を起点として、都市の裏側に眠る空間資源を再編集し、複雑な都市の生態系をより豊かなものへ更新する試みなのである。
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避難階段革命 -アフォーダンスによる都市の「地」の再編集-
避難階段は工業製品ではなく、都市に棲む生き物のような存在だ。彼らはその形態的特徴や周囲の建物や光、風、人の流れといった周囲との関係性によってそれぞれ異なる個性を獲得している。本提案は、その個体ごとの特性を読み取り、都市を形成する生態系の一員として進化させる試みである。これは単なる用途転用ではない。建築的に全く愛されてこなかった避難階段たちによる都市革命だ。
