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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
愛知県弥富市名古屋港の西部木材港には、世界各地から運ばれた原木を水面に浮かべて保管する貯木場が現存する。名古屋圏の都市建設と木材流通を支えてきた港湾インフラであり、現在も水中貯木が続く、国内でも極めて希少な場所である。原木を水に浮かべて保存する技術と、その営みを支える水面、筏、作業船、護岸、作業風景を含む空間全体を「絶滅危惧空間」と捉える。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
弥富の貯木場には、原木を水に浮かべ、長い時間をかけて養生・保存する営みが残っている。水に浸すことで酸素や日光の影響を抑え、乾燥による割れや変形を軽減しながら木を保つ方法であり、私はこれを、水と木の性質を読み取りながら受け継がれてきた「水で木を保存する文化」と捉えている。
貯木場は、森を離れた木が建築や家具となって都市へ向かうまでの時間を受け止める場所でもある。そこには、自然と産業、産地と消費地、地域と世界をつなぐ関係が集積している。原木輸送のコンテナ化や取扱量の減少に伴い、水面貯木場の利用は縮小し、その一部では埋立ても進んでいる。港湾施設であるため、地域の人々が仕事や風景に触れる機会も限られている。
この場所を扱うことで、木を水に浮かべ、筏としてまとめ、動かし、必要な時まで待たせる技術と時間を、現代の体験としてひらきたい。現在も続く営みの価値を可視化し、素材が都市へ届くまでの過程を身体的に考える機会をつくることは、国内で極めて希少になった水中貯木の文化を未来へつなぐことになる。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
変異の核は、水面に水平に浮かぶ原木のスケールを垂直方向へ立ち上げ、木が森に立っていた姿を体験できる風景をつくることである。
貯木場では、多数の原木が水面に浮かび、互いに重なり合っている。水面から見える部分は限られ、一本ごとの長さ方向や径、その木が本来持つ大きさは捉えにくい。そこで、実際に貯木されている原木の長さと径を参照し、軽量な布による筒を制作する。筒は水面から垂直に立ち上がり、内部に空気を送ることで形を保ち、夜間には内側から柔らかく発光する。
布の筒は、水面に浮かぶことで見えにくくなった原木の寸法を空間の中に現す。鑑賞者は筏の上から筒を間近に見上げ、自分の身体と比較することで、足元に浮かぶ一本の原木が、かつて森の中でどれほどの高さと太さを持って立っていたのかを体感する。現在、水によって保存されている木、かつて森に立っていた木、これから建築や家具となって都市へ運ばれる木という複数の時間が、一つの水面に重なる。
筒には軽い布を用い、空気による柔らかな膨らみと、風や水面に応じたわずかな揺れを生み出す。遠景では複数の光が水面に立つ「光の森」となり、近景では布のしわ、透過する光、実際の木に基づく径と高さが感じられる。水面への反射によって筒は上下へ連続して見え、水に浮かぶ木と森に立つ木の姿を結び直す。
布の表面には、貯木されている木の樹皮を写し取った痕跡や、樹種、産地、貯木期間、移動経路などを重ねる。内側の光を通して、一本の木が森を離れ、この場所に運ばれ、水によって保存されてきた履歴が浮かび上がる。鑑賞体験には、管理者による案内や、貯木の技術と歴史を伝えるガイドツアー、地域や教育機関と行う小型の灯りの制作も組み合わせる。
実現に向けては、すでに貯木場の管理者から提案への同意を得ている。管理者と共同で原木の調査、設置位置、係留方法、送風と照明の仕組み、安全動線、通常作業との調整を進める。最初は数本の筒による実証展示を行い、耐候性や水上での安定性、鑑賞方法を検証する。布と光による装置は軽量で撤去・再設置が可能であり、現在の産業活動と重なりながら、貯木場を夜間に体験できる文化的な場へとひらく。
社会実装後は、展示の記録映像、木材の情報、ガイドツアー、教育プログラムを蓄積し、季節ごとに継続できる活動へ発展させる。水面貯木場の風景と仕事を地域内外の人々が共有し、「水で木を保存する文化」を次の世代へ伝える。さらに、各地の運河、漁港、養殖筏など、水と産業の関係が薄れつつある場所において、それぞれの素材と営みを可視化する方法へ展開していく。
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水が留めた森|水中貯木に立ち上がる光
愛知県弥富市の西部木材港には、原木を水に浮かべ、養生・保存する水中貯木の文化が今も残る。本作は、貯木されている原木一本ごとの長さと径をもとに、空気で膨らむ軽量な布の筒を水面から立ち上げ、夜間に内側から柔らかく発光させるインスタレーションである。水面に横たわることで遠くからは捉えにくい木々の大きさと集積量を、光の筒として垂直に現す。鑑賞者は筏の上から見上げることで、一本の木の尺度と、森から都市へ運ばれるまでの時間を身体的に体験する。参加者が制作した小さな灯籠も水面に浮かべ、現在も続く仕事と水辺の風景を地域にひらき、「水で木を保存する文化」を未来へつなぐ。
