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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案では、地域に根差したおもちゃ屋を「絶滅危惧空間」として扱う。
おもちゃ屋の店舗数は減少している一方、玩具市場の売上は伸びているが、その中心はトレーディングカードなど一部の商品に偏る。失われつつあるのは、子供が多様なおもちゃに目を輝かせ、店主や地域の人々と交流しながら未知の遊びに出会う場所である。本提案では、おもちゃを単なる商品ではなく、人の興味や記憶を引き出す媒介として捉え直す。販売に加えて、遊ぶ、語る、教え合う体験を生み出し、子どもから大人までが関われる地域のコミュニケーション拠点として、おもちゃ屋の新たなあり方を提案する。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
おもちゃ屋を扱う理由は、失われつつあるのが単なる小売店舗ではなく、子どもが実物のおもちゃに触れ、他者との関わりのなかで遊び方や自分の興味を発見する空間だからである。減少の背景には、少子化に加え、ECの普及や総合スーパー・家電量販店への販売チャネルの移行がある。価格、品揃え、利便性が重視される環境では、小規模な専門店は競争しにくく、売場もトレーディングカードなど収益性の高い商品に偏りやすい。しかし、遊びは子どもの認知、身体、社会性、感情の発達に関わり、おもちゃは想像力や問題解決力を引き出すだけでなく、子どもと大人、子ども同士の会話を生む媒介でもある。画面上で商品を選んで購入するだけでは、素材の感触や大きさ、音、動きなどを確かめながら選ぶ体験や、目的のなかった商品との偶然の出会いは得にくい。また、店主から遊び方を教わったり、大人が自身の遊びの記憶を子どもに語ったりすることも、地域店ならではの文化の継承である。さらに、国内玩具市場は少子化のなかでも成長を続け、2024年度には過去最高の約1.1兆円に達している。これは、おもちゃへの関心や需要が消えたのではなく、子どもから大人まで価値が広がっていることを示す。おもちゃ屋には、商品と人、人と人、世代と世代を結び直し、遊びを通して地域に新しい関係を育てる可能性がある。だからこそ、今この空間を対象とする意義がある。
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どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案は、地域のおもちゃ屋を、玩具を「買う場所」から「出会う・直す・解く・語る場所」へ変異させる。この四つの行為を地下1階から2階まで連続させ、商品を選んで帰るだけだった売場を、来店者が玩具との関係を深め、自ら考え、表現する「ひらめき屋」へと変える。個々の機能を付け足すのではなく、玩具との出会いが、物を大切にすること、考えること、物語を生み出すことへ発展していく空間をつくる。四つの行為は、受け身の消費者だった来店者を、遊びの担い手へ変える一つの過程でもある。
地下1階の原理は「出会う」である。現代の玩具とヴィンテージ玩具を同じ場所に展示・販売し、子どもには未知の遊びを、大人には遊びの記憶との再会をもたらす。年代の異なる玩具を見比べ、手に取ることから、世代を越えて遊び方を伝え合うきっかけが生まれる。
1階の原理は「直す」である。通りからガラス越しに修理や洗浄の工程を見せる「おもちゃの病院」を設け、玩具に宿る記憶と持ち主との関係を手当てする。壊れたら買い替えるのではなく、手入れしながら長く愛する姿勢を育てる。併設するカフェは、子どもの有無を問わず、大人が玩具やボードゲームを楽しみ、遊びの当事者として童心や好奇心を育て直す場とする。
2階へ進む行為は「解く」体験となる。入口の謎を自分で考え、時には周囲の子どもと協力して解く。難しい場合は、隣の駄菓子屋で飴を買い、店員や包み紙からヒントを得られる。買物を答えの購入ではなく、人に尋ね、手掛かりを選び、もう一度考えるための交換に変える。謎を定期的に更新することで、再訪する動機も生み出す。
2階の原理は「語る」である。ここは子どもが自分で遊び、つくり、学ぶための場所である。寄付玩具や共有玩具から好きなものを選び、組み合わせ、自分なりの遊び方をつくる。紙芝居と子ども向けワークショップでは、物語を聞くだけでなく、玩具を登場人物に見立て、物語を考え、言葉にし、他者へ伝える。玩具で遊ぶことを、想像と表現の学びへつなげる。
アウトプットは建築改修だけでなく、謎解き、修理、紙芝居、ワークショップ、玩具の共有を一体化した運営の仕組みである。販売、飲食、修理、講座などを組み合わせることで継続可能性を高め、既存のおもちゃ屋にも段階的に導入できるモデルとする。
社会実装されたとき、ひらめき屋は、スクリーンだけでは得にくい手触り、身体性、偶然の出会いを地域に提供する。AIやデジタルを排除するのではなく、それらと共存しながら、自分の手で試し、失敗し、他者と考え、言葉で伝える経験を補う。おもちゃ屋を、世代と記憶をつなぎ、子どもの想像力と自立した遊びを支える小さな社会インフラへ変異させる提案である。
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売って終わる店から、関係が育ち続ける店へ
本作品は、失われつつある街のおもちゃ屋を題材に、玩具と人との関係を問い直す空間提案である。「出会う・直す・解く・語る」という体験を地下1階から2階へ連続させ、玩具を売って終わる場所から、子どもと大人、玩具と人、世代と世代の関係が育ち続ける地域の拠点「ひらめき屋」へと変異させる。
