次の足場
ダムの倉庫
足場丸太の実証試作
仮設空間の循環システム
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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
「材木屋」を扱う。本提案では材木屋を、木材を販売する店舗ではなく、異なる来歴や性質をもつ木を集め、見立て、保管・加工し、次の使い手へつなぐ空間類型として捉える。京都では担い手の高齢化や引退により、地域を支えてきた材木屋が店を閉じつつある。起点は、亀岡の30代の大工・三浦が営む倉庫兼作業場「ダムの倉庫」である。廃業した材木屋から引き継いだ木材や解体材、端材が集まり、地域住民から加工やDIYの相談も寄せられる。この拠点に足場丸太の回収・保管・加工・再配置を重ね、木材と技術と人をつなぐ「次の材木屋」へ育てる。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
輸入材やプレカットの普及により、木材は規格や価格で選ばれ、加工済みの状態で現場へ届くようになった。便利になる一方で、住まい手と木材の距離は遠のき、自宅であっても使われた木の産地や、それを見立て、加工した人の存在が見えにくい。材を一本ずつ確かめ、職人や使い手との対話から行き先を考え、用途の決まらない木も蓄える。そうした役割を担ってきた材木屋は、高齢化や廃業とともに失われつつある。
足場丸太も、その流れのなかで循環から外れようとしている。かつて建設現場を支えた丸太は、鋼製足場の普及で大半の現場から姿を消し、倉庫や材木屋の片隅に残されている。長年の傷や色艶、番線の跡、一本ごとに異なる太さには、均質な新材にはない時間が刻まれている。場所に合わせて組み、役目を終えれば解体し、別の場所で再び使う足場丸太は、本来きわめて可逆的で循環的な建築部材だった。
材木屋と足場丸太を扱うことは、懐かしい風景を保存することではない。すでにある木材を受け止め、見立てと人の手を介して次の使い方へつなぐ場を、これからの社会にひらき直すことである。一本の木を何度も異なる活動へ循環させる起点として、ダムの倉庫には新たな可能性がある。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
材木屋が担ってきた木材の流通・販売を続けながら、使われなくなった木材や余剰材を回収し、まちの活動へ循環させる「仮設空間の拠点」へと変異させる。
まず、建設現場などで役目を終えた足場丸太を引き取り、ダムの倉庫に集める。一本ごとの長さ、太さ、色艶、傷、劣化の状態、分かる範囲の来歴を記録し、使える材料として可視化する。木材だけでなく、材の見立て方や扱い方、組み方の知恵も蓄積する、建築家と大工が共同で運営するマテリアルストックである。
集めた丸太は、場所と活動に応じた一時的な空間へ組み替える。棚や什器、屋台から、日除け、休憩所、舞台、大型遊具、小屋、仮設建築まで、組み方によって異なるスケールへ展開できる。必要な場所へ運び、その場で組み、使い終えれば解体して倉庫へ戻す。番線やクランプ、バンドなどによる可逆的な接合を基本とし、必要に応じて加工を加えながら、同じ材料を何度も異なる空間へ変えていく。提供するのは完成品ではなく、相談、設計、加工、運搬、組み立て、利用、解体、保管までを一体化した仮設空間のサービスである。
足場丸太は、利用期間や規模に応じた使用料で貸し出す。循環を基本としながらも、使い手に愛着が生まれ、買取を望む場合には、その場所に定着してもよい。得られた収益は、保管場所の維持、丸太の回収と点検、組み立ての知恵や技術の継承、次の試作へ還元する。用途や荷重に応じて材を選別し、組み方や点検方法を蓄積することで、素材の魅力だけに頼らない、安全性と継続性を備えた仕組みに育てていく。
第一の検証として、武庫川で足場丸太による骨組みを試作した。棚を載せれば屋台や什器となり、布を掛ければ日除けや小さな居場所となる。これは用途や大きさの定まった完成品ではなく、部材を足し、架構を連ねることで、小屋や舞台、遊具、より大きな仮設空間へ展開できる最小単位の原型である。運搬性、組み立て時間、必要な部材、接合方法を確かめながら、商い、展示、食事、休息、対話といった活動を支える可能性を検証した。
実装は、ダムの倉庫を起点とした小規模な貸出と試作から始め、使用記録と点検基準を整える。次に近隣の祭りや店舗、地域活動へ展開し、運用実績を蓄積する。その上で、各地の材木屋や大工の倉庫・作業場を循環拠点として結び、それぞれの地域に残る木材を、その土地の祭り、商い、休息、交流の場へ変えていく。材木屋は、木を一方向に販売するだけの場所ではなく、材料と人の手と活動を往復させる分散型の社会インフラとなる。
建物をつくる人のための「足場」を、地域で何かを始める人のための「足場」へ。
