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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案が扱うのは、駅、オフィス街、商業施設、繁華街などに点在する喫煙所である。喫煙所は、独立した換気設備、数分間の滞在、立ったまま過ごす小空間、名前も肩書きも知らない人同士の居合わせという固有の特徴を持つ。受動喫煙防止と喫煙率の低下によって縮小・廃止が進んでいるが、絶滅しつつあるのは喫煙設備ではなく、仕事や移動を中断して数分だけ休める都市の余白である。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
情報化社会によって人と人の接続は増えた一方、他者は発言や属性、反応の集合として捉えられやすくなった。遠くの誰かとはつながれても、身近な他者の体温や存在を感じる機会は少ない。都市空間もまた、再開発によって機能や景観が均質化し、その土地で人々が何を感じているのかが見えにくくなっている。
喫煙所は、喫煙という理由によって仕事や移動を中断し、数分だけ立ち止まることを許してきた。そこでは、名前も肩書きも知らない者同士が、話しても話さなくてもよいまま同じ時間を共有していた。さらに、煙が人の痕跡を残し、やがて消えるという固有の時間性を持つ。
この休息、匿名の居合わせ、痕跡の時間を香りへ継承することで、見知らぬ他者を情報ではなく存在として感じる接点を都市に取り戻す。喫煙者だけに認められてきた休息をすべての人へ開き、人々の感情の集積から、均質化した都市に新たな個性を生み出すために、この空間を扱う。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
喫香所は、今の感情を言葉にして外へ出し、次の目的に必要な感情を香りとして受け取るための、一人用の中継地点である。喫煙者だけに認められてきた「仕事や移動を中断して数分だけ休むこと」をすべての人へ開き、煙による気分転換を、対話と香りによる感情の切り替えへ変異させる。
既存の喫煙所の内部は、外部からやや隔てられた暗い空間へ改修する。中央には、細い光を放つ黒いモノリス型の装置「SCENT STELE」を設置する。これは利用者との対話を行うAIであると同時に、複数の香料を調合し、空間へ噴霧する装置でもある。
利用者は、その日に起きた出来事や今の気持ち、このあと何をするのか、どのような感情で向かいたいのかをAIに話す。AIは対話から感情や情景を読み取り、苛立ちには落ち着き、緊張には集中、疲れには活力、高揚には穏やかな余韻など、次へ向かうための香りを生成する。現在の感情を消すのではなく、次の行動へ持っていける形へ整える。
生成された香りはモノリスから静かに噴霧され、煙のような霧に包まれた空間をつくる。香りの濃度や残留時間は、対話内容や次に求める感情に応じて変化する。短く立ち上がってすぐ消える香りもあれば、次の利用者まで穏やかに残る香りもある。排気には、喫煙所に既設された換気・排気設備を活用し、香りが残り、薄まり、消えていく時間そのものを体験として制御する。
次に訪れた人は、前の利用者の名前も言葉も知らない。ただ残された香りから、誰かもここで立ち止まり、感情を整えて再び歩き出したことを感じ取る。返事や評価を求めない、見知らぬ他者との緩やかなつながりが生まれる。
生成された香り、時間、場所、そのときの感情と次に求められた感情は、個人のアプリと都市の記録として蓄積される。その集積から、地域や時間帯ごとに人々が何を感じ、どのような状態への切り替えを必要としているのかが見えてくる。
喫香所は、既存の閉鎖性、短時間滞在、換気設備、煙が残って消える時間を継承しながら、煙を隔離する設備から、個人には感情の切り替えを、他者との間には弱いつながりを、都市には生活者の実感を読み取る視点をもたらす休憩インフラへ変異する。
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喫香所 都市と人の感情を香りで記録する休息インフラ
喫香所は、今の感情を言葉にして外へ出し、次の目的に必要な感情を香りとして受け取るための中継地点である。役目を終えつつある喫煙所を、誰もが仕事や移動の途中で数分だけ立ち止まり、感情を整えてから再び都市へ戻る空間へ変異させる。
利用者が、その日の出来事や今の気持ち、このあとどう過ごしたいかをAIに話すと、次へ向かうための香りが生成される。空間には前の利用者の香りが一時的に残り、見知らぬ誰かもここで立ち止まり、再び歩き出したことを感じられる。
香りはやがて消えるが、生成された香り、時間、場所の情報は記録として蓄積される。その集積から、地域や時間帯ごとに人々が抱えている感情や、次に求めている感情の傾向が見えてくる。人流や消費額だけでは分からない、生活者の実感を可視化する記録である。
喫香所は、個人には感情の切り替えを、他者との間には緩やかなつながりを、都市には人々の実感から街を捉える視点をもたらす、新しい休憩インフラである。
利用者が、その日の出来事や今の気持ち、このあとどう過ごしたいかをAIに話すと、次へ向かうための香りが生成される。空間には前の利用者の香りが一時的に残り、見知らぬ誰かもここで立ち止まり、再び歩き出したことを感じられる。
香りはやがて消えるが、生成された香り、時間、場所の情報は記録として蓄積される。その集積から、地域や時間帯ごとに人々が抱えている感情や、次に求めている感情の傾向が見えてくる。人流や消費額だけでは分からない、生活者の実感を可視化する記録である。
喫香所は、個人には感情の切り替えを、他者との間には緩やかなつながりを、都市には人々の実感から街を捉える視点をもたらす、新しい休憩インフラである。
