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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
扱うのは、ガソリンスタンド(給油所)である。特定の一施設ではなく、全国にある施設群そのものを扱う。20世紀の自動車社会を支え、同じ規格で幹線道路沿いに数多くつくられた。しかしEV化や後継者難、2010年改正消防法による地下タンク更新の負担が重なり、ピーク時の約6万店(1994年度末)から約2万7千店(2024年度末)へと半減し、なお減り続けている。大きな屋根、地下の巨大タンク、車が出入りできる広い空地をどの店も同じ規格で備えている。その同じ形の店が、全国の幹線沿いに数多く残っている。今は撤去の対象だが、この「全国どこにでも同じ形で点在している」ことこそが、転用の鍵になる。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
物流の最後の一区間、ラストワンマイルが限界に近づいている。荷物は増え続ける一方で運び手は減り、とくに過疎地は一軒あたりの距離が長く、採算が合わない。店舗や路線バスの撤退で、買い物に困る高齢者も増えている。届ける側と受け取る側の両方で、いちばん条件の厳しい過疎地にしわ寄せが集まっている。
この最後の区間をドローンに任せる取り組みは、離島や中山間ですでに実用化が始まっている。人のいる場所の上空を飛べるレベル4の飛行が解禁され、機体も制度も整ってきた。足りないのは、陸のトラックと空のドローンが荷物を積み替える発着拠点が、過疎地に、全国そろって用意されていないことだ。
ガソリンスタンドは、その条件によく合う。車が出入りする広い屋根の下は荷さばきの場所になり、広い空地は、ドローンが万一落ちても人に当たらない余地になる。地下の巨大タンクは物資の保管に使える。そして同じ規格の施設が、過疎地の幹線沿いに全国で数多く残っている。新しく建てなくても、今あるものをそのまま拠点にできる。
可能性はそれだけではない。荷物を届けるだけでなく、過疎地の産直などを都市へ送り出す出口にもなる。平時は配送に、災害時には道路が断たれても空から物資を届ける拠点になり、一つの場所が暮らしと安全の両方を支える。ここにこの空間の可能性がある。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
ガソリンスタンドを、配送ドローンの発着拠点「PASS STATION」に変える。大きく建て替えるのではなく、今ある造りをそのまま生かす。物流倉庫から集荷所までの幹線輸送はこれまで通りトラックが担い、集荷所の役割をこの拠点が引き受ける。ここで荷物をトラックからドローンに積み替え、最後の一区間だけをドローンが運ぶ。
空間は、屋上・地上・地下の三層を役割で分ける。屋上はドローンの発着エリアで、離着陸デッキと機体の保管・充電場所を置く。地上は二つに分け、大屋根の下はトラックが出入りする荷役の場所、その奥の屋内は荷さばきと一時保管を行う荷捌き場とする。地下の巨大タンクは、防災備蓄の倉庫にする。これらの層を、荷物を上下に運ぶ環状のコンベアがつなぐ。
運用の流れは、幹線便のトラックが荷物を運び込み、屋内で行き先ごとに仕分ける。ドローンで運ぶ荷物はコンベアで屋上へ上がり、点検と充電を終えた機体に積まれて、山を越えて集落へ向かう。受け取りは各家庭ではなく、地域の公民館に集める。公民館もまた使われなくなりつつある施設で、これを受け取り拠点として同時に生かす。遠くまで買いに行けない人も、歩いて行ける公民館で薬や食料を受け取れる。届かなくなっていた暮らしの品が、また手元に戻る。産直や検体を都市へ送る上りの荷物も、同じ経路で運べる。
この仕組みは、実現の見通しが立てやすい。過疎地はもともと人手が足りないが、拠点の中の荷物運びは自律走行ロボットに任せる余地が大きく、省人化と相性がよい。同じ発想で陸と空をつなぐ配送は、一部の中山間地域ですでに事業として動き始めている。平時は配送の拠点として使い、災害で道路が断たれたときには、蓄えた物資を空から集落へ届けられる。
全国に数多く残る同じ規格の施設だからこそ、一つの設計をそのまま各地へ広げられる。一つの拠点の成功が、過疎地をつなぐ配送の仕組みとして全国へ広がっていく。危険物を扱っていた跡地の土壌整理や用途変更といった手続きは残るが、順に整えていける。人の住む場所の上空を飛ぶための「レベル4」の飛行も国の制度としてすでに解禁され、各地で実証が積み上がっている。
クルマを満たしてきた給油所が、地域の暮らしを満たす拠点になる。消えていく施設が、過疎地を支える最後の砦になる。
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PASS STATION
全国に約2万7千店残るガソリンスタンドを、ドローン配送の発着拠点「PASS STATION」へ転用する提案。EV化などで減り続ける給油所は、大屋根・広い空地・地下タンクという同一規格の空間を幹線沿いに持ち、荷さばき・離着陸・防災備蓄に適する。物流のラストワンマイルが限界に近づく過疎地で、幹線輸送はトラックが担い、最後の一区間だけをドローンが運ぶ。受け取りは地域の公民館に集約し、届かなくなった暮らしの品を再び手元に戻す。平時は配送、災害時は物資供給の拠点となり、同一規格ゆえ一つの設計を全国へ展開できる。消えゆく給油所を、過疎地の暮らしと安全を支える最後の砦へ変異させる。
