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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案が扱う絶滅危惧空間は、解体や用途消失によって失われつつある民家・古民家・空き家である。
これらの空間は単なる建築物ではない。人々を迎え入れ、語り合い、食事を共にし、滞在し、地域との関係を育む場として機能してきた。しかし人口減少や都市開発に伴い、多くの民家がその役割ごと消滅している。
本提案は、東京都足立区の北千住で実践された「家劇場」を起点に、失われつつある民家の社会的機能を舞台芸術を介して継承・再生する仕組みを構想する。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
建物が失われるとき、私たちはしばしば建築物そのものの消失に注目する。しかし本当に失われているのは壁や屋根ではない。その場所に蓄積された人々の営みと、空間が果たしてきた社会的機能である。
民家は本来、寝食の場としてだけではなく、人を迎え入れ、語り合い、滞在し、関係性を育むための場でもあった。しかし現代社会では、それらの機能が住宅から切り離され、商業施設や公共施設へと分散している。一方で、空き家の増加によって、多くの民家が役割を終えた空間として扱われている。
家劇場の実践は、その見方を転換するものであった。民家を舞台芸術の場として開くことで、住宅が本来持っていた受容性や共同性を再び社会の中に立ち上げたのである。そこで重要だったのは上演そのものではなく、人々が集まり、滞在し、対話し、新たな関係を生み出す状況だった。
舞台芸術は作品を生み出すだけではない。人と人、人と場所、人と記憶を結び直す技術でもある。だからこそ、消滅しつつある民家は保存すべき対象ではなく、新たな文化基盤へ変異する可能性を持つ空間として捉え直すことができる。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案では、消滅しつつある民家を「記憶を継承する空間インフラ」へ変異させる。その目的は建物を保存することではなく、その空間が担ってきた社会的機能を抽出し、別の場所へ移植可能な文化資産へ転換することである。
【実践の原型 : 家劇場】
この提案の原型となるのが「家劇場」である。
家劇場は2018年、東京都足立区北千住の築約90年の民家から始まった。そこでは演劇やダンスの上演だけでなく、
●食事会
●ワークショップ
●滞在制作
●展示
●地域交流
●日々の生活
などが日常的に行われ、人々が集い、語り、関係を育む場が形成されてきた。
しかし2023年、その建物は解体された。一般的には建物の消滅とともに活動も終了する。しかし活動は継続し、現在は二つ目の拠点や千住地域を舞台に実践が続いている。
そこで明らかになったのは、継承されていたのは建物ではなく、
●人を迎える
●共に食べる
●滞在する
●語り合う
●世代をつなぐ
●創作する
といったことを可能にする空間の機能だったということである。
本提案では、この経験を「家劇場」として体系化する。
【変異の手法は大きく三段階で構成される】
1|空間の機能を読み解く
民家への居住やリサーチを通じて、その空間に蓄積された記憶や地域との関係性を調査する。
●地域住民とのご近所付き合い
●自身の生活の観察
●訪れる利用者の過ごし方
などを通じて、その場所が果たしてきた役割を読み解く。
2|舞台芸術によって再構成する
抽出された機能を舞台芸術の手法によって再構成する。
●演劇
●ダンス
●朗読
●展示
●ワークショップ
●対話プログラム
などを用いて、空間が本来持っていた共同性や受容性を再び立ち上げる。
3|別の空間へ移植する
建物が解体された後も、運営方法やプログラム設計、コミュニティ形成の知見を引き継ぐことで、別の空き家や民家で同様の機能を再生する。
●劇場に家を建て、劇場家を作ったり
●公園に家劇場を建て、イベント実施
●同地域の別の民家にて、家劇場開始
などしていくなかで、機能を引き継ぎ、様々な空間で実践し続けている。
【アウトプット】
アウトプットは建築物や作品の創作及び上演ではない。「家劇場」という実践モデルそのものである。
具体的には、
●空間調査の手法
●地域との関係構築の方法
●プログラム設計
●運営ノウハウ
を共有可能なプロトコルとして整理し、他地域・他空間でも活用できる形で公開したい。
家劇場はどこにでも存在できる。
【社会実装された未来】
社会実装された未来では、空き家は単なる遊休不動産ではなく、地域の関係性を育む文化インフラとして再定義される。建物が失われても、その場所が持っていた社会的機能は次の空間へ受け継がれ、舞台芸術を媒介に再生され続ける。本提案は空き家活用でも建築保存でもない。消滅する空間から社会的機能を抽出し、それを移植可能な文化インフラへ変異させるために、舞台芸術を用いた実践的なモデルの提案である。
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暮らしの機能を継承する空間インフラ
消滅する空間を舞台芸術によって再生可能な文化資産へ変異させる。
