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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
都市の外部空間を対象とする。
これらは電話ボックス等のように技術革新で役割を失ったのではなく、気候変動によって使用不能になりつつある空間である。2100年の地球では平均気温が現在よりも4℃上昇すると予測され、屋外に留まれる時間は急速に縮小する。同時に、空調された商業施設が快適を独占し、屋外の余白は非効率として都市開発から排除されると考えられる。
提案は山手線沿線を起点に、放射状に伸びる各路線へ線路沿いに拡張していく。日本の都市は鉄道を中心に形成されてきたため、鉄道網は都心から郊外まで連続する線状インフラであり、高架下や線路際の余地を辿ることで、点在する外部空間をネットワークとして再編できる。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
都市を「機能の集積」ではなく、異なる存在同士が出会い、混ざり合うための場として捉え直すことから出発する。人と人、人と自然、人とモノ、異なる文化や生活様式、異なる時間感覚や価値観──都市は本来、こうした異質なものが一箇所に集まり、新しい関係や意味を生み出していく「混ざり合いの場」であった。
一方で、近代以降の都市は、衛生・安全・効率・管理の観点から整えられ、近年では気候変動の進行により、そもそも外部空間が人間にとって快適な場であること自体が揺らぎつつある。猛暑や豪雨のもと、私たちは空調された内部に退避し、屋外で季節を感じる機会は着実に減っている。かつては広場や街路、公園が担っていた「偶然の出会いの場」としての機能は、環境条件そのものの変化によって弱まりつつあり、都市は「混ざり合いの装置」としての力を失いつつある。
この状況のもとで、単に「どうやって暑さをしのぐか」「どうやってエネルギー効率を上げるか」といった技術的課題だけをテーマにすることには限界がある。むしろ問うべきなのは、気候が厳しくなっていくこれからの都市において、誰と、何と、どのように暮らすことが幸福と言えるのか。という問いである。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
【既往研究】
バックミンスター・フラーは、外部環境が人間にとって快適でなくなったとき、都市全体を巨大なドームで覆い、完全空調された内部世界をつくるというビジョンを示した。マンハッタンを包むドームは、外気を遮断し技術で環境を制御しきる、環境制御の極点にある提案である。
【新規性】
本案は、都市を密閉しない。屋根・影・風・緑といった開放型の環境装置によって気候を調整しながら、都市と自然の関係を保ち続ける。完全な室内化ではなく、気候変動の現実を受け止めたうえで、なお人が外に出て季節を感じ、他者や生態系と混ざり合う余地を残す。閉じることで快適を得るのではなく、覆いながら開くための大屋根である。
【手法】
気候変動は個別の建築や敷地単位の対策では対処できない。暑さは敷地境界を越えて都市全体に作用するため、建築もまた都市スケールで環境を扱う必要がある。そこで幅1kmの連続する大屋根を、山手線沿線を起点に架ける。屋根の下には日陰・気流・水・緑による環境勾配が生まれ、外部空間は再び滞在可能な場になる。鉄道沿いに架けるのは、日本の都市が鉄道を中心に形成されてきたためであり、屋根は放射状の各路線へ線路を辿って拡張していく。点在する広場・路地・庭・河川敷が、一続きの外部空間として再編される。
【価値】
第一に、これはスクラップ&ビルドではなく、既存の外部空間という母体を丸ごと変異させる手法である。建物も街路も人々の記憶も残したまま、その上に屋根を重ねる。既存の都市組織を保存したまま環境性能を更新できる。
第二に、これはスペキュラティブデザインである。地球温暖化が止まらなかったとき都市はどうなるのか。起こりうる未来を具体的な空間として提示することで、遠い数値でしかない気候変動を、身体で理解できる問題に変える。2100年から現在を振り返る視点は、今どのような都市を選ぶべきかという判断を、現代の私たちに突きつける。この提案そのものを実現することは難しいかもしれない。しかし本案は、議論を生むことを目的の一つに据えている。多くの人が未来の暮らしを具体的に想像し、これをきっかけに語り合うことで、そこから別のプロジェクトや提案が派生していく。気候変動下で人間が幸福に暮らせる都市をつくるという最終的な目的から見れば、一つの大屋根が建つことよりも、無数の思考と提案が起動することのほうが実装に近い。その意味で本案は、社会実装の可能性が高い提案だといえる。
