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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
扱うのは、ゴルフ練習場(打ちっぱなし)である。特定の一施設ではなく、全国に同じ規格で分布する施設群そのものを扱う。20世紀後半、自動車社会の余暇インフラとして各地に大量建設され、郊外の幹線沿いに広がった。しかし利用者の高齢化や後継者の不在、老朽化した施設の大規模改修が採算に合わないことから、ピーク時の約5400施設(1992年)は約2900施設(2024年)へとほぼ半減し、屋外の大型施設はいまも減り続けている。多くは撤去や再開発、メガソーラーや物流倉庫の用地として、空間の個性ごと消えていく。都市の中にこれだけ大面積で均質に分布する空間は、ほかにない。この大きさこそが、変異の起点だと考えた。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
ゴルフ練習場は、建物が密集した都市の中に突如出現する巨大な平場空間である。特徴的なのは、その大空間が防球ネットで囲われていることにあり、地面から高さ60m近くまで、視線も光も抜けるのに物理的には囲われた巨大な半透明の膜で構成されている。「都市との接続性」「広い平場」「外であるが囲われている」この3つの条件がそろった空間は、他にない希少性とポテンシャルを持ち、しかも全国に一様に分布している。
同時に、食を取りまく社会課題に注目した。加速する都市生活は、食を生産現場から遠ざけ、生活者と生産者を分断した。この分断は、価格でしか選ばれない生産者の疲弊と後継者不足、フードロス、見えないがゆえに放置される動物福祉、そして食料自給率が4割を切る輸入依存といった課題と、地続きにつながっている。だが人々は、この状況に気づき始めている。安さよりも、どう育てられたかを問い、暮らしにウェルネスを見出す生活者が増えつつある。
この空き地となりつつある大空間を舞台に、都市の内側に生産を取り戻すことは、生産と消費を結び直すだけではない。都市の中に栄養の循環を呼び戻し、ただ消費するのではなく、関わるほどに土も暮らしも豊かになっていく。そんな再生の営みへとつなげたい。芽生えた意識が、見て、触れ、関われる場所へ。同じ規格で全国に広がるこの空間なら、ひとつの試みが、そのまま全国へと波及していく。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
都市の中に囲われた巨大な平場という希少な空間を持つゴルフ練習場を、放牧畜産の農場へと変異させる。生産の現場が遠ざかった都市の暮らしのなかで畜産を営むことは、見えなくなった食のつくられ方を、人々のすぐそばに取り戻していく。工場畜産の対極で、家畜の力を借りて土を育て、食を循環させる。これは、まちの暮らし・畜産業・自然環境を、まとめてより豊かな方向へアップデートさせる「リジェネラティブ畜産」の提案である。
①手法:空間をどう変えるか
畜産の中でも、都市で臭気が少なく、狭い敷地でも成り立つ、養鶏とヤギの酪農を選ぶ。ヤギと鶏は人になつき、子どもでも触れやすい。芝生フィールドは、家畜をストレスなく育てる放牧フィールドへ変異させる。フィールドには歩行デッキを設け、動物を近くに感じられる地域の公園としても機能させる。防球ネットは放牧のための柵となり、同時に家畜をトンビやカラスといった外敵から守る。ネットを活かしてツタ系植物の都市型菜園もおこなう。フィールドに面して開放された打席棟は、直売所・カフェ・グランピング施設へと変異させる。ゴルフ練習場に必ずといっていいほど付属する駐車場は、朝市やキッチンカーが集うマルシェなどのイベント広場として機能させる。あわせて、地域の生ごみを受け入れるコンポストも設置する。
②価値:どんな空間になるか
ヤギが伸びた草を食べ、その後を鶏が歩いて虫を食べ、糞を撒く。地域の生ごみは飼料と堆肥に変わり、土へ還る。ヤギ乳や卵は直売所で販売される。網越しに家畜が歩く姿が誰にでも見える「見える畜産」だからこそ、生活者は動物たちが育つ姿を眺めながら商品を買い、その場で味わうこともできる。動物たちは家畜としてだけでなく、除草に悩む近隣の法面や企業緑地へも派遣され、薬剤や機械に頼らない環境にやさしい除草を実現する。また、子どもたちの食育の一環として、ふれあい体験を提供する。観光客は、地域のストーリーを共有する当事者として、まちの産業を体験できる。自然の循環が可視化され、わたしたちは循環の担い手の一人になる。さまざまな目的でこの場所に集まる人々のあいだに関係が生まれ、都市そのものが循環するアーバンメタボリズムが実現する。
③波及と実現性:どう成り立ち、広がるか
飼育環境を価値とした商品の直売、ふれあい体験、レンタルヤギによる除草、都市の生ごみ受け入れは、いずれもすでに各地で成立している生業の組み合わせである。実装に向けた担い手は、すでに地域に存在している。駐車場、打席棟、芝生フィールドは全国のどのゴルフ練習場も共通の空間構成を持つため、どの場所でも展開できるサービスとして計画できる。
消費するだけだった都市に循環が生まれる。打ちっぱなしを、はなし飼いに。
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