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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
扱うのは、まちの卸問屋という空間である。酒屋、米屋、茶屋をはじめ、それぞれの専門の食材を扱いながら、卸を主とし、客席も表向きの窓口も持たない。特定の一施設ではなく、全国のどのまちにも点在する、こうした裏方の問屋そのものを扱う。地域の食を裏側から支えてきたが、大型店やネット流通の拡大、後継者の不在、施設の老朽化から、その数は静かに減り続けている。多くは廃業や再開発とともに、食を支えてきた設備や信頼ごと、空間の個性を失っていく。RED SPACEのリストに未収録のこの空間を、後継者難で減りゆく新たな絶滅危惧空間として捉え、まちに点在する変異の起点とする。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
卸問屋は、まちの暮らしのすぐそばにありながら、人を迎えてこなかった空間である。広い土間や蔵、冷蔵設備や酒販免許といった、食を扱うための場所と設備を備えながら、卸に徹してきたために、客席も窓口も持たない。「暮らしに近い立地」「広く使われていない空間」「食の設備と免許がそろう」この三つの条件を満たす空間は、他にない希少性とポテンシャルを持ち、しかも全国のまちに一様に分布している。
同時に、食を取りまく社会課題に注目した。フードデリバリーとテイクアウトの急拡大は、料理をひとりひとりの元へ運び、食卓をばらばらにした。客席を持たないゴーストキッチンが増え、料理はあふれる一方で、人が座って誰かと囲んで食べる場所は、街から失われつつある。だが人々は、この個食の広がりに気づき始めている。便利さの先で、誰かと同じ食卓を囲む時間の豊かさを、あらためて求める生活者が増えつつある。
この眠りつつある大きな空間を舞台に、まちの中へ「みんなで食べる場所」を取り戻すことは、失われた食卓を埋め直すだけではない。埋もれた問屋に人の集まりと新しい役割を呼び戻し、まちの食の担い手を守りながら、地域に小さなにぎわいを生んでいく。個食から共食へ。同じように全国のまちに広がるこの空間なら、ひとつの試みが、そのまま各地へと波及していく。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
地域に眠る卸問屋の空いた空間を、料理を持ち寄って一緒に食べる「タウンフードコート」へと変異させる。多くの転用が、絶滅して空き箱になった空間に別の用途を入れるのに対し、この提案は、まだ卸として生きている問屋の機能を止めない。その働きを残したまま、空いた隙間に共食の場を挿入する。空間を絶滅させずに、内側から変異させる試みである。
【空間を、つくりかえる】
卸に徹してきた問屋の、広い土間や使われていない時間帯の空間を、座って食べられる共食スペースへ変異させる。客は、デリバリーやテイクアウトで届く地域のさまざまな料理を持ち込み、ひとつの場所で、いろんな店の味を一緒に囲む。あわせて、問屋がもともと持つ設備や免許を活かす。酒屋では酒販免許を生かしてその場で一杯を、米屋では倉庫と炊く設備で炊きたてを、茶屋では焙じ場でいれたての一杯を提供する。問屋の品を味わっても、持ち込んだ料理を広げるだけでもよい。倉庫や蔵の落ち着いた佇まいが、どこにでもある空き店舗にはない、その場所ならではの居心地を生む。これまで一方向に送り出されるだけだった食が、この場所で、人の集まる一つの輪に変わる。
【まちに、立ちあらわれるもの】
表通りに姿を見せなかった問屋が、まちの人が集まる場所として表に出る。オフィス街のランチ難民、ゆっくり食べたい家族連れ、ひとりになりがちな学生、いろんな料理を試したい旅行者。いつもは素通りしていたまちの問屋に座って共に食べられる場所が生まれる。デリバリーやゴーストキッチンは、アプリの外で新しい客層と出会い、埋もれていた問屋は、まちへの新しい顔と収入を得る。その場で問屋の品を買って帰ることもでき、遠ざかっていた生産と消費が、もう一度近づく。ばらばらだった食の担い手がひとつの食卓でつながり、知らない人どうしが同じテーブルを囲むなかに、会話とにぎわいが生まれる。埋もれていた問屋の存在がまちに知られ、地域の食文化そのものが見直されていく。
【どう成り立ち、広がるか】
この提案は、新しい事業をゼロから起こすものではない。デリバリーも問屋も、すでにまちで成り立っている商売を、ひとつの場所に組み合わせたものである。新しい建物や大きな投資は必要なく、問屋がもともと持つ土間や設備をそのまま使える。集客の面でも、伸び続けるデリバリー市場が日々の需要を支える。許認可のハードルも高くない。酒屋は酒販免許のまま角打ちができ、甘味処を営む茶屋は手持ちの飲食店営業許可で始められる。こうした問屋はどのまちにも似た構成で存在するため、一軒で形になった仕組みを、他の問屋や他のまちへ展開していくことができる。
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