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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
給油機能を終えつつあるガソリンスタンドのキャノピー(大屋根)を対象とする。
ガソリンスタンドは1994年度末の60,421カ所から2024年度末には27,009カ所まで減少し、30年連続で縮小を続けている。一方で、給油設備が不要になっても、壁を持たず道路に開かれた大屋根だけは都市に残される。本提案は、このキャノピーを「車のための設備」ではなく、「都市に残された最後の軒下」と捉え直すものである。対象は全国すべてのガソリンスタンドではなく、燃料供給を維持すべき地域を除外したうえで、都市部・郊外で廃業または余剰化するガソリンスタンドを想定する。 -
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
ガソリンスタンドが失われることで消えるのは、給油機能だけではない。そこには、雨や日差しを避けながら、人が立ち止まり、偶然居合わせることのできる大きな屋根が存在していた。しかし私たちは、それを建築として認識することなく、「給油所」という用途だけを見てきた。
一方、現代都市には、目的を持たずに滞在できる場所が少なくなっている。カフェでは注文が必要であり、駅では移動、公園では天候に左右されるなど、多くの場所が消費や所属、利用目的を前提としている。都市から失われつつあるのは施設ではなく、「何もしなくても居られる余白」である。
ガソリンスタンドのキャノピーは、壁を持たず道路に開き、内外をゆるやかにつなぐという点で、日本の軒下や縁側と共通した中間領域の性質を備えている。本提案は、その潜在力を再発見し、用途を置き換えるのではなく、都市に失われた公共的な余白として再生することを目指す。ガソリンスタンドは単なるインフラではなく、都市が見落としてきた新しい公共空間の原型なのである。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案は、ガソリンスタンドを別用途の建築へ改修する計画ではない。既存キャノピーを活かしながら、「車のための屋根」を「人のための軒下」へと変異させる設計の文法を提案する。
その方法は四つの操作から構成される。
第一に、車のスケールである約5mの屋根の下へ、人の身体寸法に合わせた約2.4mの低い木架構を挿入する「下ろす」。巨大な空間を、人が安心して滞在できる軒下へと変換する。
第二に、壁をつくらず、可動ルーバーや暖簾などによって風・光・視線を調整する「開く/閉じる」。境界を固定せず、その日の気候や利用に応じて変化する中間領域をつくる。
第三に、アスファルトを土間や芝、雨庭へ更新する「地面をひらく」。雨水を受け止め、暑熱環境を改善し、都市に自然との接点を取り戻す。
第四に、壁で用途を決めるのではなく、ベンチや大テーブル、棚など最小限の家具だけを据える「囲わず、据える」。休憩、読書、待ち合わせ、子どもの遊び、朝市や地域イベント、防災時の一時利用など、多様な活動を受け止める余白を生み出す。
さらに本提案は、全国すべてのガソリンスタンドを対象とするものではない。燃料供給が不可欠な地域や災害時の重要拠点は維持し、都市部・郊外で廃業または余剰化する敷地のみを対象とする。また、地下タンクや土壌汚染、既存構造の安全性を事前に調査し、安全性や経済性が確認できた場合に限ってキャノピーを再利用する。運営は、無料で利用できる公共的な軒下を核とし、その周辺で朝市や移動販売、ワークショップなど小さな収益活動を行うことで維持管理を支える。
これはガソリンスタンドの保存でも、リノベーションでもない。消費や移動のためにつくられた都市のインフラを、人が目的を持たなくても居られる公共的な余白へと変異させる提案である。全国に点在する大屋根を、新しい都市の軒下として再編集することで、都市に失われた「居る自由」を取り戻したい。
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給油から、給余白へ。
全国で減少を続けるガソリンスタンド。その役割を終えた後にも、壁を持たず道路に開かれた巨大なキャノピーは都市に残る。
本提案は、この大屋根を「車のための設備」ではなく、都市に残された最後の軒下として捉え直す。既存キャノピーの下に人の身体寸法に合わせた低い木架構を挿入し、可動ルーバーで光・風・視線を調整する。アスファルトを土間、芝、雨庭へとひらき、壁で用途を固定せず、ベンチや大テーブルなど最小限の家具だけを据える。
そこでは、休憩、雨宿り、待ち合わせ、子どもの学習、朝市、地域活動、防災時の一時利用など、異なる時間と行為が同じ屋根の下に重なる。
これは全国すべてのガソリンスタンドを一律に転用する提案ではない。燃料供給を維持すべき地域を除外し、都市部・郊外で廃業または余剰化する敷地のうち、地下・土壌・構造の安全性と地域運営の条件を満たす場所を選ぶ。
給油所を別の施設へ置き換えるのではなく、消費や移動のためにつくられた都市のインフラを、何もしなくても居られる公共的な余白へ変異させる。車のための屋根が、ようやく人のための軒下になる。
本提案は、この大屋根を「車のための設備」ではなく、都市に残された最後の軒下として捉え直す。既存キャノピーの下に人の身体寸法に合わせた低い木架構を挿入し、可動ルーバーで光・風・視線を調整する。アスファルトを土間、芝、雨庭へとひらき、壁で用途を固定せず、ベンチや大テーブルなど最小限の家具だけを据える。
そこでは、休憩、雨宿り、待ち合わせ、子どもの学習、朝市、地域活動、防災時の一時利用など、異なる時間と行為が同じ屋根の下に重なる。
これは全国すべてのガソリンスタンドを一律に転用する提案ではない。燃料供給を維持すべき地域を除外し、都市部・郊外で廃業または余剰化する敷地のうち、地下・土壌・構造の安全性と地域運営の条件を満たす場所を選ぶ。
給油所を別の施設へ置き換えるのではなく、消費や移動のためにつくられた都市のインフラを、何もしなくても居られる公共的な余白へ変異させる。車のための屋根が、ようやく人のための軒下になる。
