外観パース
ピロティパース
シアターパース
建物断面
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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案では、札幌市中心部において消滅の危機にある「ミニシアター」という空間を扱います。具体的には、札幌市中央区南2条西5丁目20に位置する「旧サツゲキ」の建物をL字に囲う敷地を対象とします。この場所は、狸小路のアーケードと大きな通りの2面に面しており、都市の動線をつなぐ結節点としての特徴を持っています。2026年のサツゲキ閉館により多様な映画作品の受け皿が失われつつある現状を踏まえ、かつて映画館であった歴史を持つこの場所を選定しました。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
第一の理由は、札幌におけるミニシアターの急減と文化的多様性の喪失の危機です。2026年3月のサツゲキ閉館により、札幌市中心部で事実上ミニシアターが一館のみとなり、公開スルーされる作品が増加しています。映画館が都市開発のパーツやグローバル基準のシネコンへと偏重する中で、多くの人が観たいものが優先され、ローカルな文化インフラが失われつつある現状に歯止めをかける必要があると考えます。
第二の理由は、札幌が持つメディアアーツ都市としてのポテンシャルとのギャップです。札幌はアジア初のユネスコ創造都市(メディアアーツ都市)であり、雪国ならではのインドアでのクリエイティブ活動やデジタルコンテンツ産業が盛んです。しかし、CG関連の企業や学生数が多いにもかかわらず、作品の発表の場が限られているという課題があります。
そのため、単に映画を上映するだけでなく、映像やメディアアートの創作・発表・鑑賞が交差する拠点を作り出すことをめざしました。消滅しつつある「ミニシアター」という空間を、過去のアートの文脈を保存しながら新しい作品が生まれる土壌へと再生させることで、札幌の映像文化を継承し、次世代へとつなぐことができるのではないかと考えます。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
本提案では従来の閉鎖的な劇場空間を解体し、都市と連続する新たな鑑賞空間へと変異させます。
具体的な手法として、かつてのミニシアターが持っていた「窓のないブラックボックス」という形態を逆手に取り、映画館の機能が失われた箱の外被を巨大なスクリーンに見立てます。外界の刺激を遮断し作品への没入を目指した従来の空間を裏返し、外部環境や他者の存在を鑑賞体験に積極的に取り込むエコロジカルアプローチを採用します。風や光などの移ろいゆく外部環境を取り込むことで映像のコントロールは破壊され、反復可能な映像に二度と同じ体験がない一回性と場所性をもたらします。動画配信サービスやVRなどの技術の普及が進む現代において映画館が求められる鑑賞形態はけっして没入を求めるものだけではなく、もっと多様な広がりを持つべきだと考えます。
建築空間としては、狸小路に建つアーケードの形状を反復しながら下降し、もう一方の通りまで延ばすことで、野外での鑑賞空間を覆うアーチ状の均質ではないピロティを形成します。これによりもう一つのアーケードとしての役割を持たせ、都市の動線と鑑賞空間を融合させます。ピロティ内をフリーの映画やメディアアートの鑑賞空間としながら、建物内部にはメディアアートの展示空間やピロティの屋根形状がそのままあらわれた自然地形のように下る座席のない大シアターを作ります。また、それぞれの階の旧ミニシアターの建物側に大きな開口を設けることで、外壁を利用した鑑賞を可能にします。これらの機能にカフェなどの交流空間やホリゾントスタジオなどの創作空間を加え、各々の空間をシームレスにつなぎます。また、動線を表に出すことで建物自体に動きを生み出し、アーケードとは逆側の通りには利用者の影が映像的に表出する仕掛けも施します。 これにより、2つの通りにはそれぞれ全く表情の異なるファサードが表出します。
このような空間が社会実装された際の価値は、映像文化が都市の日常へと拡張される点にあります。映像が外部へとしみ出し、ピロティなどのたまり場が開かれた鑑賞空間となることで、目的を持たずに通りかかった人々が映像に出会う偶然性が生まれます。シネコンや動画配信サービスでは得られない見知らぬ他者と一つのものを眺め、空間を共有する体験の価値を現代の都市に取り戻すことができます。クリエイターの営みと都市を行き交う人々の日常が交錯することで、過去の映像文化の記憶を受け継ぎながら、地域に根ざした新たな文化の土壌を育む映画、メディアアートの拠点として価値を発揮します。
