都心道路の5%が交通としての役割を終える。約100ha、アスファルトを剥がして「大地」へと変異させる。EARTH LINEsは、舗装を剥がし、「生きた土」を育てる計画である。
-
どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
2050年、都心道路の5%が不要になる。自動運転やドローン配送等の技術革新により、道路は交通としての役割を段階的に終えていく。その面積は皇居1つ分、約100ha。本提案は、この「役割を終えていく都心部の道路」を絶滅危惧空間として扱う。実証地は東京・銀座5丁目あづま通り。銀座三越とGINZA SIXの再開発により両端は既に車両不通の廃道状態にあり、転用の障壁が低い。加えて皇居に近接し、生きた土壌を継承しやすい立地である。
-
なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
大地はかつて、インフラだった。農業生産を担い、生態系を維持し、自然との触れ合いを生み、水資源を循環させていた。それを失った都市は、一次生産を非都市圏に依存し、生態系の多様性を手放し、自然体験を嗜好品に変え、雨水処理のキャパシティ不足を抱えている。
道路は、交通のための空間として設計され、その大地をアスファルトで覆い隠してきた。雨を浸透させ、生き物を育み、微生物フローラを蓄えるはずだった大地は蓋をされ、本来のポテンシャルがアスファルトの下で眠っている。
役割を終えていく道路は、この大地を都市に呼び戻す絶好の余白である。道路は線状に連続し、あらゆる街区に接し、誰の所有物でもない。ここに大地が現れれば、それは点在する公園ではなく、都市を貫く生態系のネットワークとなる。
Project: EARTH LINEs は、アスファルトを剥がし(DEPAVEMENT)、露出した地面を耕し、緑肥と微生物によって「生きた土」を育てる計画である。土を育てる営みに終わりはない。その継続こそが、人と生き物を道に呼び戻す。
車から生き物へ、アスファルトから土へ。役割を終えた道路を、地域の手に取り戻し、生物とコミュニティを支える「大地のインフラ」へと作り替える。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
アスファルトを剥がす。DEPAVEMENT——この一つの操作から、すべてが始まる。
ただし、剥がした先に大地が戻るわけではない。舗装の下にあるのは、生き物も水も通わない、締め固められた土層である。大地を育てる営みを、社会の仕組みごと設計する。プロセスは「選定」「権限移譲」「土壌再生」の三段階からなる。
【選定】プロジェクトの対象となる廃道候補は、人・車・生物の行動データをもとにAGIが解析し、地域住民等の合意に基づき選定される。同時に道路の役割を再分担し、都市交通機能を維持したまま歩行者専用道を確保する。管理者ごとのタテ割り(国道・都道・区道)から用途別管理へ移行し、道路の「役割をピボット」する。
【権限移譲】道路の管理権限を、行政から一般社団法人「EARTH LINEs」、さらに地域別管理団体「LINEr」へと段階的に委任する「ROAD-PFI」制度を新設する。行政は道路管理費用の一部を拠出し、法人はガーデナーや樹木医等の専門家を斡旋する。地域住民は活動参加費を払い、土に関わる。接道地権者には、管理面積に応じた固定資産税の減免や延床面積算入をインセンティブとして与える。維持管理を負債から資産へ転換する仕組みである。
【土壌再生】舗装を剥離し、インフラ埋設土層まで異物除去と重金属サンプリングを行う。上下水道・電線・ガス管の点検を同時施工することで、その後のランニングコストを下げる。次に皇居等の周辺緑地から「リビングソイル」を採取し、新規土層として導入、耕起する。緑肥が栄養と微生物フローラを段階的に呼び戻す——炭素はイネ科、窒素は豆科、リンはキク科のヒマワリやマリーゴールドが担う。約2年で土壌は育ち、そこで生まれたリビングソイルは次の敷地へ供給され、EARTH LINEsは延伸していく。
大地に変換された道路はコミュニティーとともに、成長するランドスケープである。土壌が育まれるにつれて、土地は地域の風土に根ざした植生へと移り変わっていく。
地域住民や専門家が継続的に手を入れ、関わり続けることで、この場所ならではの風景が育まれる。
こうしたプロセスを通じて生まれるのは、靴を脱いで歩ける柔らかな土の道である。井戸、暗渠、草むら、岩のベンチ、池、土の山。断面が刻々と変化する道で、子どもがバッタを追い、店の人がヒマワリに水をやり、夜にはたぬきが餌を探す。
雨水の地下浸透による内水氾濫・ヒートアイランドの緩和。線状に連続する生態系ネットワークの形成。耕すという行為を介したコミュニティの再生。インフラ点検との同時施工による長期維持管理コストの低減。EARTH LINEsは新しい時代のインフラとして、複合的な価値を都市にもたらすだろう。
都心道路の5%、100ha。この広大な面積は、都市が地球とつながり直すための大地として生まれ変わるのだ。
