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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
全国の生活道路の角に残る、まちのたばこ屋、なかでも街角の一般的な対面販売の窓口をもつ小規模な専業店を扱います。3〜10坪の店内と、道行く人と言葉を交わすためだけに設計された「窓」をもつ、日本で唯一の建築形式の空間は戦後の専売制のもとで未亡人や女性の生業を支え、毎日30秒の立ち話がまちの結節点となってきました。しかし店舗数はピーク時の約半分まで減り、角地の小さな空間が全国で遊休化しています。これは推測ですが、たばこ屋が今も残る要因のひとつは、狭さゆえに別の業態へ転換しにくいことだと考えます。その狭小と視認性の良さは、後述する小さな弔いの機能とむしろ適合すると考えたばこ屋を選定しました。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
両親が死んだあと、あるいは私が死んだあと、「火葬をして墓に納められる」。私はずっと、この当たり前の閉じ方が自分の生き方に合わないと感じてきました。もっと軽やかに自らデザインでき、未来の人々に接続できる弔われ方があっていいはずです。孤独死が増え家族観が変容する現在、死に様はもっと自由に描けるのではないでしょうか。しかし伝統的な儀礼を疑うことは、いまだタブー視されかねません。だからこそ、役割を終えつつある絶滅危惧空間でなら、小さく始めながらともに変異できると考えました。なかでもたばこ屋は、傷痍軍人や戦争未亡人が店主となり、街を見守り続けてきた特異点です。時代の結節点になりうると考え選定しました。たばこ屋には三つのポテンシャルがあります。第一に、建築的独自性です。対面窓・角地・接道の「窓口建築」は、受付にも展示にも相談にも転用できます。第二に、地域への根付きです。何十年ぶんの立ち話が堆積した「まちの記憶装置」であり、店がやってきたことの連続として接続できます。第三に、社会課題との交点です。自宅で亡くなる独居者は年間約7.6万人(警察庁2024)、改葬は約15.1万件(厚労省2022年度)。空間・見守り・墓、三つの消失を徒歩圏の窓口ひとつで同時に埋められます。「小ささ×開く窓×角地×遊休×物語」の積集合は、たばこ屋ならではの特徴でありそれ次世代に活かしたいと思いました。
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どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
たばこ屋を、生前の見守りと死後の追悼をひとつの店先でつなぐ「まちの記憶の守り手=ともり(灯・守)」へ変異させます。 【サービス】従来の墓とは違う、透明で親しみやすいデザインによって、本人が軽やかに生前からデザインできる弔いを表現します。ガラスでできた記憶の記録媒体「ともり」は、手をかざせばその一灯だけがともり、NFCで記録が手元に開きます。たばこが並んでいた棚には、この「ともり」が並びます。「初任給で、母に下駄を買ったあの日」といった内容をかいつまんだ題やキービジュアルが添えられ、通りがかりの人が、知らない誰かの人生に足を止めます。血縁に閉じた墓と異なり、友人も隣人も見知らぬ人も弔いに参加できる、まちに開かれた墓誌となります。 【手法】近隣の方から、月額3,000〜5,000円の生前サブスクリプションを募ります。死が近づく前から気軽に頼れる窓口として、見回り・電話連絡・相続相談を提供します。窓口での簡易なドリンク提供と縁台が日常の立ち寄りを生み、数日顔を見ない方だけを訪ねる例外対応型とすることで、省人化と温かさを両立させながら地域を見守ります。亡くなられたあとは、生前にお預かりした写真や小さな形見を「ともり」に封入し、店先の棚に納めて管理します。 【事業デザイン】改修は格子棚・照明・建具の新設に限り、外壁・躯体・丸看板の意匠は保存します。「外は昭和の記憶、内は清潔な現代」という新旧の対比を設計思想とします。初期投資は約400万円(補助金等の併用で実質250万円程度)、会員75名で単店黒字化する、小さく持続可能なコミュニティ作りをめざします。 【社会価値】社会実装されたとき、三つの価値を生み出します。ひとつめは、日常接点の多さによる孤独死の抑制です。ふたつめは、承継者を必要としない弔いです。家族が選ぶ遺影ではなく、自分で選んだ「残したい自分」を残せる、死後の新たな社会とのつながり方をつくります。三つめは、遊休不動産を活用し、まちに自助的なコミュニティを育てる第三の道です。さらに公開された記録は「聴いた人が、残す人になる」という連鎖を生み、アーカイブが自ら次の預け手を連れてくる事業となることを願っています。また、ともりに納めた記録は国立国会図書館へ納本し、原則永久保存とします。記録の本体はデータのため、特定のハードや場所にとらわれず、移転を可能にします。 【スタート】まずは店舗を持たない間借り出店で需要を検証します。内容は生死を問わず、過去の想い出を集める「まちの記録図書館」として進めます。舞台となるたばこ屋自身の記録から始め、ワークショップを重ねてその街になじんでいくところからはじめます。店が、自分の記憶から図書館になっていく計画です。
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