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どの絶滅危惧空間を扱うのか(300文字以内)
本提案では「ローカル線」を対象とする。具体的には福岡県の平成筑豊鉄道である。平成筑豊鉄道には、油須原駅・崎山駅・勾金駅など、明治期から残る木造駅舎やホーム上屋が現存している。しかし人口減少や利用者減少により、維持が困難となり、将来的な消滅が危惧されている。これらは単なる交通施設ではなく、地域の歴史や生活を支えてきた公共空間でもある。本提案では駅舎だけでなく、ホーム上屋やレールを含めた鉄道空間全体を一つの絶滅危惧空間として扱う。
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なぜその絶滅危惧空間を扱うのか(600文字以内)
ローカル線は単なる交通インフラではない。人々が待ち、出会い、別れ、地域の時間を共有してきた生活の舞台である。しかし人口減少や自動車社会への移行によって、その役割は急速に失われつつある。駅舎やホーム上屋は文化財として保存されることもあるが、多くは維持費や管理者不足により活用されず、解体されてしまう。
一方、都市では、人々が自由に滞在し地域とつながる居場所が不足している。公共施設は減少し、商業施設は消費を目的とした空間へ偏っている。
この二つの課題は別々に存在しているようで、実は補完関係にある。地方では空間が余り、都市では居場所が不足しているのである。
私は駅舎を「保存対象」として扱うのではなく、「移植可能な建築」と捉え直したい。建築を地域から切り離すことではなく、その建築が持つ時間や記憶を次の社会へ受け継ぐことが目的である。ローカル線は失われる運命だからこそ、新しい都市インフラへ変異する可能性を最も秘めた絶滅危惧空間だと考える。 -
どのようにその絶滅危惧空間を変異させるのか(1200文字以内)
提案するのは、駅舎を保存するプロジェクトではなく、「駅舎を移植する仕組み」である。
まず廃止予定のローカル線から木造駅舎、ホーム上屋、レールなどを解体し、部材単位で記録・保存する。これらを都市へ運搬し、新たな公共建築として再構築する。
木造駅舎は図書館や地域食堂、コミュニティスペース、小規模店舗へと用途を変異させる。駅舎が持つ待合室という性質は、人が滞在する場所へ自然に転換できる。
ホーム上屋は半屋外空間として再利用する。バルコニー、歩廊、テラスなどへ転用し、人が偶然出会う余白を都市に生み出す。
レールは家具、ベンチ、構造材、サイン、曳家用レールなどへ再利用する。建築だけでなく素材にも鉄道の記憶を継承させる。
さらに重要なのは、この仕組みを一つの駅だけに限定しないことである。全国には同じ規格で建てられたローカル線の駅舎やホーム上屋が数多く存在する。移植方法を標準化することで、全国の鉄道会社や自治体が活用できるシステムへ発展できる。
建築家だけでは実現できない。鉄道会社、自治体、物流事業者、施工会社、運営団体、地域住民が関わることで初めて成立する新しい公共事業となる。
この提案が目指すのは、建築を保存することではない。建築が持つ時間や記憶を社会の中で循環させ続けることである。
ローカル線は消滅するインフラではなく、新しい都市インフラへ変異する。
建築は保存されるものではない。移植され、生き続けるものである。
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TRANSPLANTING TIME
日本各地で失われつつあるローカル線の駅舎やホーム上屋を、都市へ移植し、新たな地域インフラとして再生する提案である。対象は平成筑豊鉄道の木造駅舎やホーム上屋、レールなどの鉄道建築群。これらを解体・保存・運搬・再構築する循環システムを整備し、図書館、飲食店、コミュニティスペースなどへと用途を変異させる。建築を保存するのではなく、「建築の時間」を移植することで、失われる地域の記憶を都市へ継承する。ローカル線の消滅を終わりではなく、新たな都市インフラの始まりへ転換する計画である。
