CREATIVES

  • 57

握手の手すり~誰かと握手しているような触感、心を支える手すり

その他
<作品概要>「握手の手すりは、誰かと握手をしているような感覚になれる手すりである。触れた瞬間、導かれるような、励まされるような感覚を得られる。ふと触れたモノから気づきを得る、触覚アフォーダンスという概念に基づいて制作した。手すりは身体を支えるものだが、人とのつながりを想起させ心を支えることを目指し制作した。
<形状探究>この手すりは触覚のみで造形した。思わず手をおき触れ続けたくなる、想像力をかきたてられるような造形を追求した。素材は軽量粘土を採用。粘土は触れた時に温かく、柔らかい。握手の手すりに触れたユーザーが、人との繋がりを感じられるように設計した。握手を誘発する角度や太さ、手のひらの納まり方などを試行錯誤し改良を重ねた。視覚や聴覚に頼らずとも「出会い」や「安心感」が生まれる、新しい手すりのかたちを実現していった。
<制作の背景>
私には生まれつき盲ろう障害があり、触覚で世界を拓き言葉を獲得した。触手話でコミュニケーションし、白杖を使って歩行している。身体全体で感じる触覚から情報を得ている。公共インフラにあるサインは視聴覚に頼るものが多く、触覚から考えられたサインデザインは殆どない。触覚を用いたサインの研究を進める中、人々に伝えたいことは何か、深く考えるようになった。ヨーロッパを訪れた際に文化として根付いた挨拶のスタイルに強く感動した。互いに頭を下げる挨拶では、視聴覚の両方に障害のある私は、相手がどのような人か全くわからない。ハグや握手で自然にふれ合う挨拶は、相手の体温を感じることからコミュニケーションが始まり、喜びと安心感が大きかった。握手には言葉には出来ない想いを共有できる感覚があった。触れることで生まれる「つながり」は大切であり深い意味をもつ。「握手」はただの挨拶ではなく、信頼を築く入り口であると感じた。触覚を通して人と人とのつながりを形にしたいという想いが、この作品の出発点である。機能性・利便性・美しさを追求しがちなデザインに、情緒的な要素を含むプロダクト制作へのチャレンジでもある。
<展開>
駅など大勢の人々が行きかう場所、高齢者施設・障害者施設・病院・学校等への設置を考えた。大学院ゼミで発表したところ、精神病院に設置して欲しいとの意見があった。人とのつながりに手ごたえを感じられないことが心の病気の原因であることが多く、この作品に触れる経験が癒しになるだろうとのことだった。また、「わたしの握手の手すり」をつくるワークショップを開きたい。障害がない人はもとより、視覚障害者・盲ろう者・車いすユーザーなどあらゆる障害種の人々の参加も可能だ。身体感覚・言語・文化などが異なっても一緒に作ることが出来る。創ったものを大切な人にプレゼントすれば、寄り添う人の想いを痕跡として手元に届けることができる。多様な人々が自分の大切な人を想いながら一緒にモノ創りをする時間そのものが豊かだ.。

前へ