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速攻JAPAN【没】

グラフィック
作者:Veryさん

■解説
【この画は、根本的な問題があります。】

(速攻で世界進出 ⇒ 速攻JAPAN!)
この画は、「①特許庁が審査の待ち時間短縮に努めている」 ⇒ 「②特許審査の順番待ちが減少している」 ⇒ 「③これが、国際特許出願の増加、迅速な海外進出に貢献している」 というストーリーをイメージした図になっています。

ただこの図は以下の点より、このストーリーは正しくありません。
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● 課題のセッション資料7ページ目の図より、上記ストーリーの①と③に因果関係はない (国内の特許審査と、国際特許出願は独立している)
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● 上記①と②の関係について、データ上は、待ち時間短縮が順番待ち減少に貢献しているようにも見えるが、もうすこしキチンとみると、実は待ち時間短縮より先に順番待ちが減少しているように見える。このことは、「順番待ちが減少した(国内の特許出願が減少した)から、結果待ち時間が減っただけ」ということを示唆しているのではないかと思われる
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● 課題のセッション資料7ページ目の図を踏まえながら、上記のようなストーリーを描くとするなら」、
「①国際特許出願が増加している」 ⇒ 「②日本特許庁の審査の待ち時間が短縮している」 ⇒ 「③結果、日本の国際進出が早まり、日本の技術輸出額増加に貢献している」とするのが正攻法と思われる。
が、上記③に相当するデータが、今回の課題データでは2010年までしかなく、しかも、2005年からの5年程度の推移に絞ってみると、③の観点となる技術輸出額は、むしろ減少トレンドを示している。⇒データを見ると上記ストーリーと逆。
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この画は、表面上の数字だけをとらまえて、都合よくストーリーを組み立てただけの、よくありがちな「危険な資料」の典型ですね。

こんな画を投稿してしまい、申し訳ございません・・・。

【雑感A】各国技術貿易グラフ(本課題のグラフ①)についてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

このグラフは、各国とも年を追うごとに技術貿易が盛んになっている様を確認できて、非常に興味深いグラフでした。

またその中で、日本の技術貿易は意外と低いように感じたのも、もう一つの興味深いポイントでした。

試しに、2009年の実績のある5か国(日本/米国/ドイツ/イギリス/韓国)について、「単位GDPあたりの」技術輸出額(2009年)を概算してみました。

すると
【1位】イギリス (日本の5.6倍)
【2位】ドイツ(日本の4.3倍)
【3位】韓国(日本の2.0倍)
【4位】米国(日本の1.8倍)
【5位】日本
と、国の経済規模を加味して輸出額を評価すると、日本が圧倒的下位でした。
さらに、技術輸入額を見ると、単位GDPなどという観点を持ち出すまでもなく、日本は非常に低いレベルに留まっています。

つまり、「日本の技術は他国にあまり売れていないし、それ以上に、日本は他国の技術を買おうとしていない」という風にみえました。

ところで、顧客目線でイイ商品を作ろうと思うと、いろんな技術を開発しなければならないし、場合によっては必要な技術は他社・他国から調達してこないと、本当にイイ商品は作れないのではないかと思うのですが、上記の貿易収支データを見ると、日本は、「自前の技術に固執して、他社・他国の価値ある技術を使わない」⇒「自前の技術に固執するあまり、顧客価値が置き去りになる」⇒「自前の技術が、他社・他国からみても魅力に感じてもらえない」(たくさん国際特許出願しているにもかかわらず)みたいな流れになっていやしないか、という気がしました。「世界に羽ばたくニッポンの知財」というより「自前技術に固執して殻に閉じこもるニッポン」みたいな・・・。

「ナントカは天下のまわりもの」ではありませんが、技術貿易黒字を手放しで喜んで良いものなのか、ちょっと気になった次第です。

(素人が課題データをみてなんとなく感じただけの内容です。恐らく、これらのデータだけでは見えていない様々な事象があると思うのですが、無邪気に感想まで。解釈に対するアドバイスなどいただければ非常に嬉しいです)

【雑感B】今回の課題について

上記コメントにも書かせていただいたように、私は今回「世界に羽ばたくニッポンの知財」というお題にふさわしいポジティヴなデータ・情報・ストーリーを見出すことができませんでした。
(今回のお題にストレートに取り組むとしたら、「日本の国際特許出願件数の時系列推移の折れ線グラフ1本をどう表現するか」の1本勝負かな、という気がしました)

今回のお題も、もうすこし課題の要件が明確になったり練られていたり、もう少し事象を深堀したデータがあったり、あるいは「国際特許出願」の持つ意味・社会背景などの情報などがリリースされたりしていれば、もう少しいろいろ検討できる余地があったのではないかと思います。

以上、失礼ながら個人的感想でした。

■利用したデータ
課題データのみ

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