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十五夜

 寒さの足音が迫ってくる秋の日、アパートの廊下で華奢なカマキリが動けなくなっていました。こんな所に居ては、踏まれてしまうと、そっと拾うと、自力で手足を動かす力も無くなっていました。そのまま、草むらに連れて行きました。その晩はカネタタキが鳴く静かな満月でした。
きっと、その晩に、空に、そして土に静かに帰ったのでしょう。

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