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おもちゃ箱の中の詩人

Fine Art / Graphic / Illustration
おもちゃは誰が発明したのか?
おもちゃは文字が生まれる前から存在している。おもちゃは元々おもちゃではない。宗教や祭祀や仕事の道具などが変化したものだ。例えばブランコは東南アジアの宗教儀礼から生まれたしボールは狩の道具だった。それを子どもが大人の模倣をしておもちゃに変えた。だからおもちゃを発明したのは子どもだ。子どもは世界のあらゆるものをおもちゃに変える事が出来る。地球だろうと月だろうと子どもはおもちゃに変えられる。おもちゃの語源は平安時代の「手に持って遊ぶ」行為である「もて(もち)あそぶもの」からきている。視覚的なものではなく触覚的なものということだ。だから例えば子どもはポケットの中のビー玉に触れてそれを月に変えることだって出来る。想像力で手の中のものをおもちゃに変える。例えば海岸を歩いていると汚れたゴムのアヒルの人形が落ちている。大人にはただのゴミにしか見えないだろう。でも子どもはこのゴムのアヒルを一瞬で価値のあるおもちゃに変えられる。母親はそんなゴミは早く捨てなさいと子どもに言うだろう。でも子どもはこんなに素晴らしいものを何故捨てなければいけないのか?と疑問に思い困惑するだろう。実はその汚いゴムのアヒルは香港からタコマに向かうコンテナ船に積まれた約三万個のゴムのアヒルのうちの一つである。1992年1月29日、船は悪天候によりその三万個のゴムのアヒルたちを太平洋に落としてしまう。ゴムのアヒルたちはそれぞれインドネシアやオーストラリアや南米やアラスカに散らばり3年後には日本に漂着して太平洋を一周した。海岸で拾ったゴムのアヒルの仲間たちは今も世界を旅している。学者たちはこのアヒルたちを世界の潮流や気象などの研究に役立てようとしていることなどはもちろんこの親子は知らない。でもこれも物語の可能性の一部でしかない。ゴムのアヒルの中には無数の物語の可能性を持っている。子どもはその無数の物語の可能性を箱にしまって大人になる。稲垣足穂は本は暗いおもちゃだと書いていた。じゃあそれを入れるおもちゃ箱はなんだろう?俺ならおもちゃ箱は何度観ても記憶できない映画だと言ってみたい。

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