COMPETITION

クセがあるアワード:塗

AIと人が共創した作品を募集するAIクリエイティブアワード

結果発表 2025/07/23(水) - 2025/09/15(月)

クセがあるアワード:塗 結果発表

10月19日に、「クセがあるスタジオ」で行われた最終審査会の結果を発表します。
3組のファイナリストによるプレゼンテーションからは審査員賞1点を、全63点の応募作品の中からはマクセル賞1点を選出しました。
本発表では、受賞作品とともに、全ファイナリスト作品への審査員コメントもご紹介します。

審査員賞

no. 31 秘術 『 「物」語り 』 ― モノが語り出す装置
かたちのブティック

作品URL:https://awrd.com/creatives/detail/17198885


審査員コメント:荒牧 悠 氏

Photo: Aya Kawachi

物言わぬ物たちが、自らの物語を語り出す時、もっともらしい物語に感じる(かもしれない)。見る人にとっては、知っていたり、もしくは想起された物語と一致する(かもしれない)。その(かもしれない)コミュニケーションは、言い伝えや伝承の構造と少なからず似ているようで、ひょっとすると、私たちが物語ることの本質的なところに近づいている(かもしれない)。
あたかもそう見えるというのは、秘術、仙人というモチーフ選びや、小道具の装置が作り込まれており、演劇的な枠組みの中で見ることができるためだと思う。枠組みがあることで、我々とAIの解釈が対等なものとして扱われている。どこか謎めいてどう扱っていけば良いか模索するAIとの関係が、あたたかく交錯する作品だった。

審査員コメント:谷口 暁彦 氏

かたちのブティックさんの『秘術 『 「物」語り 』 ― モノが語り出す装置』は、廃校に残された数々の品々をAIに見せることで、その品々にまつわる架空の物語を生成するという作品です。chatGPTを始めとする対話型AIは、多くの知識を持っていて人間よりも優れた他者として感じられる時があります。しかし、この作品では人間もAIも同じ立場で、廃校に残された品々から過去の物語を想像します。あるいは、その廃校の卒業生たちはAIの生成した物語から過去の記憶を思い出すこともあったそうです。かたちのブティックさんのプレゼンの中で、その地域が過疎化し、人がいなくなったとき、AIの想像した語りだけでも記憶の伝承は部分的に担えるかもしれないという、可能性にも言及されていたことが印象的でした。そんな、人とAIの新たな関係性を多層的に生み出した豊かな作品だと感じ、評価しました。


マクセル賞

no.42 空間へのドローイング:大山崎
城下浩伺&みふく

作品URL:https://awrd.com/creatives/detail/17203042


審査コメント:マクセル株式会社

「空間へのドローイング」は、VRとAIを駆使し、過去・現在・未来が交差する絵画空間を創出しました。この体験は、子どもたちに"描く"という行為を空間や時間に広げる発想を促し、創造力と探究心を育みます。まさに、私たちが訴求したかった「ワクワク感」そのものです。また、場所固有のテクスチャや環境音を取り込み、さらに未来素材を構想する試みは、アートを学びの場へと変える教育的価値を秘めていると考えました。デジタルとアナログが融合することで、絵画は没入的な学びの体験となり、表現の可能性を無限に広げます。塗展(NUTTEN)を通じ、未来社会を担う表現者を育てる力を強く感じました。ここに、マクセル賞を贈ります。


ファイナリスト作品について

no.08 時を惑う
渋谷和史

作品URL:https://awrd.com/creatives/detail/17171917

審査員コメント

AIに学習させる元データを「故郷」としている点に、とても情緒を感じた。元々その時計がいた場所、その場で経験した時間、それらの蓄積したデータが外界を見る際の足掛かりとなって、今現在を認識する。目の前のものが、自分の経験モデルの何に当たるのか、そのチューニング過程に故郷の景色が立ち現れるのではないかと、思索を促される作品である。(荒牧 悠 氏)

NTPサーバーへアクセスすれば一瞬で分かってしまうのに、カメラで風景を見て、そこから時間を推定するAIという設計がまずとても詩的に感じられる。人が窓から外を見て漠然と時間経過を感じる、そんな感覚を共有しているように感じられる。また、AIというテクノロジーが人間の機能を拡張するものではなく、より人に近づくような、異質なテクノロジーであるということを教えてくれる。(谷口 暁彦 氏)

no.36 存在しないビデオゲーム (Video Games That Don't Exist)
Kieran NOLAN

作品URL:https://awrd.com/creatives/detail/17201927


審査員コメント

ビジュアルイメージからは、ある街を舞台とした対戦型のビデオゲームやカーレースを思わせる。しかし、そこで描かれる状況は全く戦っているようには見えず、自分の中にある攻防のイメージとのずれが新鮮に感じられた。
格闘ゲームをしていて、思うように操作できず空振りしてしまうときのように、身体のイメージがするりと抜け落ちる。そのような身体感覚の不安定さこそが、この作品の魅力に思えた。(荒牧 悠 氏)

AIで架空のビデオゲームを生成することの面白さに溢れている。一方で、現在の一部のビデオゲームには、解像度でレンダリングした結果をAIで高解像度化するDLSSという技術が用いられていて、私たちは既に部分的にAIで生成された画面を見て、ビデオゲームをプレイしている。架空のビデオゲームをプレイする、架空のYoutuberの実況配信。そしてその動画に自動化されたクリックファームで「いいね」が延々と押されていく。誰も人間のいない空虚な経済活動を想像してしまう。(谷口 暁彦 氏)


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