結果発表
自然のやさしさを探るAWARD 2020 結果発表
「自然のやさしさを探るAWARD」では、自然の美しさや心地よさを身の回りに取り入れる、
あるいは自然の力を人の世界に取り込んだデザインを募集するアワードを開催致し、72件ものご応募を頂きました。
沢山のご応募ありがとうございました。
グランプリ、準グランプリ、審査員賞、アイデア性を重視したアイデア賞の他に、
アイデアソンイベントに参加したチームから選ばれるワークショップ賞をご用意致しました。
そして、厳正なる審査のもと6点の受賞作品を決定しました。
それぞれの作者からのコメント、審査員からの総評も是非ご覧ください。
グランプリ&アイデア賞
タイトル
波が起こるキャンバス
Creator
Comment
この度は、大変光栄なことにグランプリ賞、アイデア賞と2つの賞に選んで頂き誠にありがとうございます。
私たちKYOUIは「おもちゃなもの」をテーマに制作活動をしています。
その中で、私たちは、自然に潜む何かに感動したり、やさしさを感じたり、何か分からないが確かに存在するものに惹かれてきました。その何かに「おもちゃなもの」へのヒントが隠されていると考えています。
そこで思い出したのが、子供のころ海で砂浜に絵を描いた記憶です。あの波の心地よさを抽出できないかと考えて制作したのが「波が起こるキャンバス」です。
「自然のやさしさ」を見つめ捉え直すことは、私たちが子どもの頃におもちゃに対して感じた純粋な高揚感や好奇心を思い出させてくれた気がします。
そのような心持ちを大切に、私たちはこれからもつくり続けていきます。
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Judge’s comment: 臼井重雄(パナソニック株式会社 デザイン本部 本部長)
波を見ると安らぐという、人間の本能に訴えかける作品。砂に描いた絵や文字が波で消されるという経験は、多くの人が体験したことがあるのではないでしょうか。
波で消されるとわかっているのに描きたくなってしまう。シンプルな発想でありながら、思わず作品に関与したくなる魅力にあふれている。
そして誰しもが懐かしい思い出とともに、やさしい気持ちになれるだろう点を評価しました。
準グランプリ
タイトル
そよ風を感じる風車
Creator
Comment
2020年、突如として新型コロナウイルスは現れ私たちの日常を大きく変化させました。
当時、いちデザイナーとして何かやらなければと強く思ったことを思い出します。そんな中いち早く取り掛かったのが「身の回りにある物でおうち時間を少しでも豊かにできるものをつくろう」という取り組みでした。そよ風を感じる風車は、些細な風の動きを捉え、そよ風を可視化してくれる風車です。
誰でも簡単に作ることができるので、受賞をきっかけに様々な方に作っていただければと思います。
換気をしよう、という第一歩になれば幸いです。窓際に置いて窓を開け、自然の優しさに触れてみてください。
ダウンロードURL:https://seinikaku.com/fu-rinProject
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Judge’s comment: 筧康明(東京大学大学院情報学環准教授)
「そよ風を感じる風車」は、とてもささやかに自然を発見するための作品です。この作品の魅力は、すぐ手に入る素材を使い、誰もがその場で体験を作り出せてしまうことにあると思います。コンセプトにとどまるものが多い中で、これは今すぐにでも私たちの生活の場に取り込める提案です。
つい風を探したくなる、外の空気を取り込みたくなるなど、ステイホームが続くディスタンス時代において楽しく行動変容を促すプロダクトとして、またコミュニケーションを生むための仕掛けとして、多くの人の手に届くことを期待します。
審査員特別賞 臼井賞
タイトル
SHUHARI 〜様々な環境下で現象が起こる体験型絵本〜
Creator
Comment
この度は、審査員賞:臼井賞という光栄な賞をいただき、誠にありがとうございます。
この作品は、オンラインやネット上で様々な情報が簡単に手に入るこの時代に、身近なもの(水や光)を通じ、目の前で起こる現象を自らの五感を通じて体験できる、体験型絵本となっています。
日本の昔からの思想のひとつでもある「守破離」をコンセプトに、日常生活で見落としがちな、当たり前のことへ疑問を持ったり、利用する子供たちが自分で楽しさや新しい気づきを発見し、自ら調べたり創作へつながるきっかけになれればと思いデザインしました。
本AWARDを通し、私たちも様々なことを学ことができました。このような機会を設けていただいた関係者各位へ感謝申し上げます。
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Judge’s comment: 臼井重雄(パナソニック株式会社 デザイン本部 本部長)
普通本をぬらしたり汚したりするというのはなるべく避けたいことですが、この本はそれを敢えて能動的に行わせる、という点が面白いです。
いつもなら怒られそうな行為が、この本の場合はそれが正解、これは子どもにとっても楽しいのではないでしょうか。
また、そんな体験を通して変化や自然を認識でき、子どもたちがより自然の力に興味を持つきっかけとなるというストーリーもよいです。
審査員特別賞 筧賞
タイトル
Warmth of Nature - material design of water hyacinth
Creator
Comment
私たちのこの作品は「ウォーターヒヤシンス」という自然素材を用いて、人々に心地よく暖かさをもたらすことが目標でした。
本アワードを知った際に、テーマに沿っていると感じ、応募させていただきました。
結果として審査員賞にお選びいただき、うれしかったです。誠にありがとうございます。
人は自然に寄り添い生きるものだと思います。急速にデジタル化が進んでいる今、その正反対と言える自然素材の持つ安心感や暖かさ、やさしさをもっと生活に取り入れていきたいです。
「自然のやさしさを探る」をテーマにアワードを開催してくださって、本当にありがたいです。
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Judge’s comment: 筧康明(東京大学大学院情報学環准教授)
自然に対してより多面的な見方を促す取り組みとして評価しました。ウォーターヒヤシンスは美しい花を咲かせる水草ですが、その強すぎる生命力や繁殖力のおかげで人間の暮らしを妨げる「有害」な植物としても知られています。今回の提案は、そのウォーターヒヤシンスの素材としての特性に目を向け、プロダクトとしての新たな用途や魅力を(再)発見するものです。有害とされているものが有益なものに生まれ変わるというデザインの可能性を強く感じると共に、一面的な自然の見方についての警鐘を発してくれます。
審査員特別賞 田中賞
タイトル
新雪玄関マット
Creator
Comment
この度、素晴らしい賞にお選びいただきまして誠にありがとうございます。
私が考えた「新雪玄関マット」は、ほとんどの人が共通している思い出の雪を踏み、音や触感を楽しむ動作を、玄関マットと融合させることで、ただの置物になり使われなくなっている玄関マットに、意識を向かせ、意識的に踏ませ音や触感で楽しませて、靴裏などを綺麗にするというプロダクトです。
これを使うことで全ての人が雪が降った時にワクワクしたこと、初めて雪を踏んだ時に感動したことを思い出し、この玄関マットを踏んだ時に自然の豊かさ優しさに触れ、日常にほんの少しの笑顔をくれるきっかけになれば良いなぁと思います。
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Judge’s comment: 田中美咲(morning after cutting my hair, Inc 代表取締役)
数ある応募作品の中で、最も心をわし掴みにされたのが、この作品でした。
子どものころ、誰よりも先にふっかふかの雪に足を踏み入れたくて仕方なかった、あのときめき。足を踏み入れてザクザク鳴らすあの音は、どこかいたずらっ子になった気持ちにさせてくれる。雪と、あのときのやさしい気持ちを思い出させてくれる、あったらほしい、作品でした。
「面白い」というフィールドに誰でも受け入れてくれる優しさも感じます。
これこそが、真の意味での”インクルーシブ”デザインなのかも。作者と友達になりたいです!
ワークショップ賞(アイデアソンイベント参加チームから選定)
タイトル
FUNCUBATOR
Creator
Comment
この度、ワークショップ賞にお選びいただき誠にありがとうございます。背景の全く違う4名で今日まで活動できたことは大変嬉しく、難しい状況でもアイデアソンを開催していただいたことに感謝しております。
私たちのチームは、自然のやさしさを取り込みながら、環境に、そして何よりも人にやさしいものを目指し、「人の体の中にある、最も身近な自然」である菌に着目し、アイデアを広げていきました。
見えないものながら、私たちの生活に密接に関わる菌のやさしさをうまく取り入れ、心も体もなりたい自分でいられる。そして、家族に、恋人に、子供に健やかさを贈ることができる。そんな未来をこのプロダクトで描きたいと考えます。
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Judge’s comment: 田中美咲(morning after cutting my hair, Inc 代表取締役)
出会ったことのなかった人同士でチームを作り、ワークショップを経て構想を具現化するその工程には立案・具現化力とは別に、「相手へのやさしさ」「作品の受け手へのやさしさ」が必要であったと思います。
チームの皆さんのやさしさの詰まった作品を応募ありがとうございます!
いつでも私たちを身体の内外から支えてくれる存在である「菌」に注目し、それを「やさしさ」と捉える視点こそが、とてもやさしいなとおもいました。
また、食品の廃棄量を減らすことができるという点からも、地球へのやさしさが込められていると感じました。