CREATIVES

  • 36

Wind/Spectrum/Cyborg

 本作は、動植物、機械、そして人間といった異種を結び、能力拡張技術を安価かつ誰でも容易に実現することを可能にすることによって民主化し日本の農村を豊かにする実験。
労働人口が減少した日本の農村の課題解決のため、そこに暮らす人々と未来を担う子供達、飼育される牛たちのために作りました。この技術は生命と非生命が連携し、メディアがループする回路を持つネットワーク環境を通じ人間や動物の能力を拡張します。従来、人間の眼で直接確認しなければならず、見逃されることも多かった繁殖牛の発情行動をセンサーで捉え、遠隔から観察、判断をする、種や時間、空間を超えたコミュニケーションネットワーク環境を構築し農村に実装します。この技術により、人間は牛の繁殖機会の損失と観察する手間によるストレスが軽減されます。また牛は観察されることと、早期に妊娠することにより発情行動の回数が減り、ストレスが軽減されます。センサーやコンピューターは目に見えない風のように環境に溶け込み機能します。こうした仕組みによって拡張された能力は、牛のものか、人間のものか。それともそれらの間に拡がるスペクトラムの中に在るのか。観察する人間とされる牛の関係性は変化し、人間中心主義に偏らない環境が生まれます。牛の発情行動を判別するよう何度も閾値を調整されたセンサーは、古来より多産の縁起のいわれのあるクルミの殻に包まれます。そして、日本書紀にも記述のある、自然界を治めて道具に変える神聖な行為の象徴とされる縄。それらを日本の伝統である水引の、心と心を結ぶといわれるあわじ結びの手法で結びます。結ぶの語源は産霊といわれ、結び目に新しい魂が宿るといいます。神道においては万物は産霊の働きによって生じ、発展するという考えがあります。これらくるみの殻と縄はやがて朽ち、堆肥化し植物の育つ土を豊穣にし、新しい生命を育みます。太古から伝わる日本の伝統と、人間、動植物、そして新旧のテクノロジーの力を結び、生活をより良くする未来を思索します。

Prototypetest

module

Wind/Spectrum/Cyborg

Caption

前へ